現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > ハンバー・セプターとライレー 4/72 1960年代の英国乗用車 6台を比較 後編

ここから本文です

ハンバー・セプターとライレー 4/72 1960年代の英国乗用車 6台を比較 後編

掲載 2
ハンバー・セプターとライレー 4/72 1960年代の英国乗用車 6台を比較 後編

3兄弟の最上位 ハンバー・セプター

英国のクライスラーが、ハンバーというブランド名を掲げ販売していた、4ドアサルーンのセプター。人気司会者のような笑顔が自慢の営業マンにとっては、理想的なカンパニーカーの1台だった。

【画像】1960年代の英国乗用車 コルセアにヴィクター、ミンクス、ヴォーグ、セプター、4/72 全48枚

第二次大戦後初のハンバー製コンパクトモデルとして、1963年に登場したセプターMk I。中編でご紹介したスーパー・ミンクスとシンガー・ヴォーグという3兄弟の、最上位に当たる。

この謙虚なスポーツサルーンは、実際はルーツ・グループのヒルマン・スーパー・ミンクスへ手を加えただけの、バッジ・エンジニアリング・モデル。位置調整が可能なステアリングコラムに4灯ヘッドライト、オーバードライブなど、上級装備が自慢といえた。

眉毛のようなラインの入ったコミカルなフロントマスクや、フィンの付いたテールなど、見た目は個性的。クロームメッキの華やかな雰囲気が、魅力度を高めていた。

低めのルーフラインにパワフルな4気筒エンジン、サンビーム・レイピア風のフロントグリルが与えられていた点も特長。当初、セプターはサンビームのモデルとして売られる計画があったようだ。

発売から2年後、セプターはMk IIへ進化。フロントマスクがお化粧直しされ、5ベアリングの1725ccエンジンを獲得している。

手頃なアメリカン・スタイルのモデル

ニコラス・ハリーズ氏がオーナーの1965年式セプターは、Mk Iの最終モデル。ベルベット・グリーンと呼ばれる深い緑が美しい。

「祖父が新車で買ったものです。自分に物心がついた頃には、このクルマのことも知っていました。ハンバーで運転を学び、祖父が85歳でこの世を去った時に、わたしがオーナーとして引き継いだんです」

その経緯を説明するハリーズは、ハンバーの路上でのマナーが素晴らしいことに感心している。「この子はフィット感のある手袋のように、わたしの手に馴染むんです。トランスミッションはスムーズに動きますし、オーバードライブは高速道路に最適」

「一度外されたオリジナル部品も、再び装備させています。30年以上ウェーバーのキャブレターが載っていましたが、ソレックスにしました。エアフィルターも元通り。パフォーマンスに悪影響を与えず、静かで洗練された走りになりましたよ」

セプターが登場する頃、ハンバーというブランドは確実に縮小傾向にあった。1967年にMk IIからアローシリーズと呼ばれたMk IIIへ交代するが、それを最後にハンバー・ブランドは消滅。クライスラーも北米へ引き上げてしまう。

とはいえ、ハンバー・セプターは今でもエネルギッシュで魅力的なクルマだ。高速道路を走る車内は、1960年代の上質そのもの。当時のミドルクラスから、手頃なアメリカン・スタイルのサルーンとして愛されたことも理解できる。

古い英国パブ的なライレー 4/72

ヒルマン・スーパー・ミンクスの3兄弟や、フォード、ヴォグゾールといった主張の強い現代的なモデルに対し、少し古い英国パブ的な雰囲気を残していたのが、ライレー 4/72。それらとは別の英国人層をターゲットとしたモデルだった。

4/72のドライバーが好んで聞いていたBBCラジオも、地域ニュースやラジオドラマ、国際情勢など、真面目なものだったはず。とはいえ、1964年式のライレーは間違いなくチャーミングに見える。

ポーセリン・グレーとアーモンド・グリーンというツートーンのボディに、クロームメッキがふんだんに用いられ、アメリカンなスタイリングが引き立てられている。オーナーはアラン・マーシャル氏だ。

BMCグループに属していたライレーが、ピニンファリーナ(ファリーナ)・デザインのMGマグネットのバッジエンジニアリングとして1959年に発売したモデルが、4/68。1961年にフェイスリフトを受け、車名が4/72へ改められた。

サスペンションにアンチロールバーが与えられ、シャシーはホイールベースを延長。4気筒エンジンの排気量は1622ccへ増やされている。

遠くへ速く移動したい人のためのクルマ

マーシャルがこのライレーとともに暮らすようになったのは、1982年から。「2代目のファリーナです。これまでに何度も、SUキャブレターをオーバーホールしています。走りが見違えますからね」

操縦性を改善するため、古いクロスプライ・タイヤは現代的なラジアルに交換したという。「それでも、コーナーを攻め込めるわけではありません。当時のBMCが、4/72にオーバードライブや1.8Lエンジンを与えなかったのは残念ですね」

ライレー 4/72は1969年に製造を終えてしまうが、悲しいことにブランド自体もその年に消滅してしまった。しかしマーシャルのクルマは、今はなきブランドの魅力を教えてくれる。現代的なパッケージングと、伝統的なルックスで。

4/72は、遠くへ速く移動したい人のためのクルマだ。当時のBMCが主張したように。広告を振り返ると、自ら運転をしたい上役をターゲットにしていた。確かにブランド力に拘る人を除いて、悪い選択ではなかったと思う。

筆者が6台から選ぶならハンバー・セプター

3編を通じてご紹介した英国製コンパクトサルーンは、いずれも特に自動車技術を飛躍的に高めたわけではない。従来的な信頼のおける技術が、不足ない洗練度で組み合わされているが、それそこのクルマに求められた内容だった。

筆者がこの6台のサルーンから1台を選ぶなら、ハンバー・セプター Mk Iとなるだろう。走りに活気があるという理由で。積極的に運転したいドライバーだけでなく、ロック歌手が乗り回すようなスタイルにも向いていると思う。

そして、ドアを開いても一興。メーターがずらりと並ぶ造形豊かなダッシュボードに、強く惹かれてしまうのだった。

ハンバー・セプターとライレー 4/72のスペック

ハンバー・セプター Mk I(1963~1965年/英国仕様)

英国価格:997ポンド(新車時)/8000ポンド(約121万円)以下(現在)
生産台数:1万7011台
全長:4204mm
全幅:1607mm
全高:1448mm
最高速度:144km/h
0-97km/h加速:17.1秒
燃費:8.1km/L
CO2排出量:−
車両重量:1124kg
パワートレイン:直列4気筒1592cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:80ps/5200rpm
最大トルク:12.5kg-m/3500rpm
ギアボックス:4速マニュアル

ライレー 4/72(1961~1969年/英国仕様)

英国価格:1097ポンド(新車時)/1万ポンド(約152万円)以下(現在)
生産台数:1万5151台
全長:4534mm
全幅:1600mm
全高:1518mm
最高速度:139km/h
0-97km/h加速:19.5秒
燃費:8.5km/L
CO2排出量:−
車両重量:1148kg
パワートレイン:直列4気筒1622cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:69ps/5000rpm
最大トルク:12.2kg-m/2500rpm
ギアボックス:4速マニュアル

こんな記事も読まれています

新車価格は衝撃の63万円!!! 気分は[日本一速い男] 日産チェリーの正体とは?
新車価格は衝撃の63万円!!! 気分は[日本一速い男] 日産チェリーの正体とは?
ベストカーWeb
イタリアのSAはコーヒーが美味しい! ただしガソリンは日本以上に高いのでセルフサービスを活用しましょう【みどり独乙通信】
イタリアのSAはコーヒーが美味しい! ただしガソリンは日本以上に高いのでセルフサービスを活用しましょう【みどり独乙通信】
Auto Messe Web
新型トラックや多彩な架装など約150台が集結!ジャパントラックショー2024
新型トラックや多彩な架装など約150台が集結!ジャパントラックショー2024
グーネット
MotoGP:2027年に1000ccから850ccへマシン規則変更。空力パーツは50mm削減、車高調整デバイスは禁止
MotoGP:2027年に1000ccから850ccへマシン規則変更。空力パーツは50mm削減、車高調整デバイスは禁止
AUTOSPORT web
世界に1台!フェラーリ「812GTS」ベースのフルカーボン仕様車を披露 ノビテック
世界に1台!フェラーリ「812GTS」ベースのフルカーボン仕様車を披露 ノビテック
グーネット
時速6キロのお台場めぐり!トヨタの3輪BEV使った観光サービス「おさんぽ」スタート
時速6キロのお台場めぐり!トヨタの3輪BEV使った観光サービス「おさんぽ」スタート
グーネット
アウディの美点を「ギュッと凝縮」 更新版S3へ試乗 333馬力にトルクスプリッター 少し真面目すぎ?
アウディの美点を「ギュッと凝縮」 更新版S3へ試乗 333馬力にトルクスプリッター 少し真面目すぎ?
AUTOCAR JAPAN
日産「マーチ」ベースの「フェアレディ」!? 大人が驚く学生ならではの感性で仕上げたカスタムポイントとは
日産「マーチ」ベースの「フェアレディ」!? 大人が驚く学生ならではの感性で仕上げたカスタムポイントとは
Auto Messe Web
ルノーの名物イベント、今年は10月27日に決定! 「ルノー カングー ジャンボリー2024」開催概要を発表
ルノーの名物イベント、今年は10月27日に決定! 「ルノー カングー ジャンボリー2024」開催概要を発表
月刊自家用車WEB
宮田莉朋、無念のトラブルで勝利逃すも「全然ネガティブには思っていません」。原因はギヤボックス/ELMS第2戦
宮田莉朋、無念のトラブルで勝利逃すも「全然ネガティブには思っていません」。原因はギヤボックス/ELMS第2戦
AUTOSPORT web
ルクレール3位「マクラーレンの強さは予想以上。僕たちにはアップグレードが必要」フェラーリ/F1第6戦
ルクレール3位「マクラーレンの強さは予想以上。僕たちにはアップグレードが必要」フェラーリ/F1第6戦
AUTOSPORT web
800馬力のランボルギーニ「ウルスSE」は10種のドライビングモードで楽しめる! EVだけでも60km以上走れるクラス最速SUVです
800馬力のランボルギーニ「ウルスSE」は10種のドライビングモードで楽しめる! EVだけでも60km以上走れるクラス最速SUVです
Auto Messe Web
レッドブル&HRC密着:敗因はフロアのダメージとハードタイヤでの苦戦。勝つことの難しさを痛感したフェルスタッペン
レッドブル&HRC密着:敗因はフロアのダメージとハードタイヤでの苦戦。勝つことの難しさを痛感したフェルスタッペン
AUTOSPORT web
高速道路を走りながら「EV充電」現実に! 本線で「走行中給電」実証やります NEXCO東日本
高速道路を走りながら「EV充電」現実に! 本線で「走行中給電」実証やります NEXCO東日本
乗りものニュース
合法カスタムでも「デコトラ」では仕事ができない現代! デコトラ野郎たちは「マイトラック」で楽しんでいる
合法カスタムでも「デコトラ」では仕事ができない現代! デコトラ野郎たちは「マイトラック」で楽しんでいる
WEB CARTOP
盗難車犯罪の温床「違法ヤード」 解体された自動車が海外輸出される残酷現実、規制強化で本当に防げるのか
盗難車犯罪の温床「違法ヤード」 解体された自動車が海外輸出される残酷現実、規制強化で本当に防げるのか
Merkmal
知的なアスリート──新型マセラティ グラントゥーリズモ試乗記
知的なアスリート──新型マセラティ グラントゥーリズモ試乗記
GQ JAPAN
2年目は女子クラスも新設! 大学自動車部が大手メーカーのサポートで闘う「フォーミュラジムカーナ2024」が開幕!!
2年目は女子クラスも新設! 大学自動車部が大手メーカーのサポートで闘う「フォーミュラジムカーナ2024」が開幕!!
WEB CARTOP

みんなのコメント

2件
  • このファリナ・スタイルのライレーは、ブランド違いのMGマグネット共々、あまり評判がよくなかった。凡庸なファミリーカーのエンジン出力を上げて「ブランド」を乗っけただけだと。実際その通りだったわけだが、ライレーの広告は自信満々だった。「この車には特別な何かがある……これがライレー!」「私達はこの車をショーファー向けに売ろうとしているのではありません。ライレーはドライバーズカーです」……ブラックジョーク好きのイギリス人なら笑ったかもしれない。そしてライレーは潰えた。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

222.5312.6万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

-万円

中古車を検索
セプターの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

222.5312.6万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

-万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村