1960年代、1970年代は、高度成長期の最中に多くの名車が生まれ、その後の高性能化、低価格モデル登場へとつながってゆく、日本の自動車産業にとっても、それを享受する人々の生活にとっても非常に重要な転換期だったと言える。
非常に多くの名車たちが生まれたなかで、あえて10台を選ぶとしたらどれか。モーター・ ジャーナリスト 片岡英明氏に、人々とともに混迷と“がむしゃら”の時代を駆け抜けた国産車10台を選出してもらった。
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【画像ギャラリー】多くの名車たちから厳選! 時代の礎を築いた60年代・70年代の傑作車たち10台+αをギャラリーでチェック!!!
※本稿は2020年5月のものです
選出・本文:片岡英明/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2020年6月26日号
■スポーツモデルから軽自動車まで名車続々!!! 1960年代登場の国産車たち
多くのクルマに乗り、凄いと感じた旧車の筆頭はスバル360だ。1958年誕生で厳密には1960年代ではないが、メカニズムの先見性は高く、パッケージングも優れていた。とくに前席は広く、快適だ。愛らしいデザインも好印象。紹介しないわけにはいかない。
スバル360(1958年)…大人4人が乗るために数々の斬新なアイディアが投入された名車。駆動方式はRR
360ccエンジンを積む1960年代の軽自動車で感銘を受けたのはホンダN360だ。パワフルでよく回るエンジンに感動したし、FF特有のハンドリングも新鮮だった。キャビンが広く、4人乗っても荷物を積めたのは大きな驚き。ライバルより高性能なのに安かったことにも驚嘆した。
ホンダ N360(1967年)…ホンダ初の本格量産乗用車で31ps/3.0kgm発生の354ccエンジンをフロントに横置きする。当時の軽としては圧倒的に広い室内空間を誇っていた
1960年代の日本車はヨーロッパ車に負けていたが、頑張りがわかるスポーツモデルには感動する。1964年春に限定発売され、日本グランプリでポルシェ904と互角に渡り合ったスカイラインGT、後のGT-Bは凄いクルマだった。飛び抜けて高性能だったし、エンジン音にも感動する。
日産 スカイラインGT(S50系・1964年)…本来4気筒用として作られた車体の前部を、日本GP出場のため20cm延長し、グロリア用の直6を搭載して誕生したのがスカイラインGTだ
同時期に登場したトヨタスポーツ800は、ライトウェイトFRスポーツのおもしろさを教えてくれた名作だ。非力だが、超軽量だから運転するのが楽しい。
トヨタ スポーツ800(1965年)…45ps/6.8kgmを発生する水平対向2気筒OHVを搭載。徹底した軽量化の結果、車両重量は580kgに抑えられ、非力ながら侮れない走りを披露した
1967年春に鮮烈なデビューを飾ったマツダのコスモスポーツも感動した1台である。苦労の末に世界初の2ローターロータリーを実用化し、送り出したことに感動したものだ。独特のパワーフィーリングと美しいデザインにも魅せられた。
マツダ コスモスポーツ(1967年)…世界初の量産ロータリーエンジン搭載車。搭載する10A型エンジンは110ps/13.3kgmの出力を発生した(前期型)。未来的なルックスも魅力
いすゞのベレットも感動したファミリーカーだ。フロアシフトの4速MTや4輪独立懸架のサスペンションなど、セダンでもスポーティ感覚が飛び抜けて高かった。クーペボディの1600GTの冴えたコーナリングには乗るたびに感動したものだ。
いすゞ ベレット(1963年)…写真は1964年登場のベレットGT。日本初のディスクブレーキ採用車にして、日本で初めて「GT=グランツーリスモ」を名乗ったことでも有名
【番外コラム/1960年代編】編集部が選ぶもう1台 ホンダ S600(1964年)
606ccの直4、DOHCエンジンは、9500回転からがレッドゾーンという超高回転型(出力は57ps/5.2kgm)。最高速は145km/h。
ホンダ S600(1964年)
■美しいクーペに革新的なベーシックカーが登場!!! 1970年代の国産車たち
1970年代になると高性能エンジンを積み、スタイリッシュなクーペボディをまとった「GT」が一気に増えた。その代表が、1970年秋に登場したトヨタのセリカと三菱のギャランGTOである。両車ともスペシャルティカーという新しいジャンルを確立した記念すべき作品で、東京モーターショーで見上げた時に思わず感嘆の声をあげた。
トヨタ 初代セリカ(1970年)…エンジンやミッション、内装などを自由に選べるフルチョイスシステムで販売された(1600GTは除外)。1973年にリフトバックが導入され、クーペには2Lエンジンが設定された
三菱 ギャランGTO(1970年)…なんといっても、とても全幅=1580mmとは思えない精悍なルックスが魅力。10月の発売開始時は全車SOHCエンジンだったが、12月に登場したイメージリーダーのMRはDOHCを搭載していた
セリカは美しさがわかりやすい端正なノッチバックの2ドアクーペでスタートし、1973年にファストバックの流麗なリフトバックを加えている。デビュー時のフラッグシップは1600GTだ。OHVが一般的な時代に、レーシングエンジンと同じDOHC方式を採用し、高回転まで気持ちよく回ることに感動した。
ギャランGTOはセダンやハードトップと違う専用のクーペボディをまとっている。ファストバックにダックテールのリアはとくに美しい。最強モデルのMRは、1.6LのDOHCエンジンに5速MTの組み合わせだ。驚くほどパンチがあり、リジッドアクスルのサスペンションでありながらコントローラブルだったことにも感激した。
1978年に登場したサバンナRX-7にも感動させられた。長いノーズの先端にリトラクタブルヘッドライトを配したのは衝撃だった。3眼メーターの中央にタコメーターを装備したのもマニアック。12A型2ローターエンジンも軽やかに高回転まで回る。レギュラーガソリン仕様だったのにも驚かされた。
マツダ サバンナRX-7(1978年)…573cc×2の12A型ロータリーエンジンは130ps/16.5kgmの出力を発生(NA)。1983年のマイナーチェンジ時に165psを発生するターボモデルが追加された
ファミリーカーではやはり初代シビックだろう。VWゴルフより早くFFの2ボックスデザインを採用し、CVCCによって難関と言われた北米の排ガス規制を悠々とクリアしている。時代を先取りした傑作ファミリーカーだ。
ホンダ 初代シビック(1972年)…デビュー時は1.2Lエンジンのみだったが、1973年に排ガス浄化技術「CVCC」を採用した1.5Lモデルを追加。第一次オイルショックの影響もあり、このCVCCを搭載したシビックは大ヒットモデルとなる
47万円の衝撃価格で売り出された軽自動車、初代アルトも忘れてはならない。税制の抜け道を突いた商用ボンネットバンのジャンルを切り開いたことも高く評価できる。日本の景色を変えたベーシックカーと言えるだろう。
スズキ 初代アルト(1979年)…当時のほかの軽乗用車が60万円超の価格設定がされるなか、驚きの47万円の価格で登場。当然、大ヒットし、軽ボンネットバンブームの火付け役となった
【番外コラム/1960年代編】編集部が選ぶもう1台トヨタ 2代目スターレット(1978年)
1978年登場。ライバル勢がFF化していくなかFRを堅持。1980年代には多くのモータースポーツシーンで大活躍した。
トヨタ 2代目スターレット(1978年)
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みんなのコメント
旧車は心を和ませてくれますね。
どのクラスでもありましたね!
バブル崩壊で平成からは車の考え方に
変化がきましたね。