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【アウディRS3セダン試乗記】「いいなぁコレ」と思わず漏れるひと言

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【アウディRS3セダン試乗記】「いいなぁコレ」と思わず漏れるひと言

「もっと早くに乗っておきたかった」というのがファーストインプレッション。2017年3月に国内発表され、納車はその年の夏から始まっていたので、すでに1年以上前。「なぜ、これまで乗らなかったのか」と少し後悔をしたトップアスリートなモデルだった。

仕事柄、いろんな方から「どんなクルマがいい?」という質問をされることが多い。中には複数台所有している人、新車を3年ごとに乗り換え、車検は取ったことがない、燃費が一番いいクルマは?など雑多だが、ハイパフォーマンスでありながら、普通に乗れるクルマとしてお勧めできる、見落としていた一台だ。

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アウディのラインアップはAシリーズの標準に対し、スポーティなモデルが「S」。さらにハイパフォーマンスになると「RS」となり、最後は「R」まで上り詰める。最近のBMWであれば「M Performance」とか、メルセデス・ベンツの「AMG53シリーズ」あたりが「RS」のライバルになるだろうが、A3のコンパクトサイズというのがいいところのサイズを突いたモデルだ。

ベースのA3よりもトレッドを広げ、全体にパサイズを少し上げたRS3のボディは、全長4480mm、全幅1800mm、全高1380mm、ホイールベース2630mmというCセグメントサイズのセダン。標準A3は全長が4465mm、全幅1795mmなので、わずかに大きくなったボディだ。そしてS3セダンよりまた、少し大きいというところもヒエラルキーがきちんとある。車両本体価格は780万円、試乗車はオプションを装備して852万円というプライスだ。

レース用エンジンを搭載

エンジンは横置きの2.5L・5気筒TFSIガソリンターボ。5気筒エンジンはもはや希少な存在になるが、アウディの5気筒エンジンの系譜はレースエンジンなのだ。既存の市販エンジンをチューニングしたのではなく、このエンジンはアウディ・スポーツ社(旧名:クワトロ社)が開発、チューニングを行なうエンジン。量産エンジンとは一線を画するスペシャル版で、レース用エンジンをディチューンして市販車に搭載したというルーツを持っているエンジンなのだ。軽量、高出力で、燃費、排ガスも最新の仕様を備えている。ちなみに0-100km/h加速は4.1秒!というダッシュ力だ。

組み合わされるミッションは7速DCTでSトロニックと呼ばれるツインクラッチ2ペダル。もちろんセダンなので5名乗車できる。だから、クルマに詳しくなければ「ちょっとカッコいいセダン」くらいにしか映らない。そこもまた狙いとしているセダンでもあるのだ。

2.5TFSIのスペックを見ると、400ps/5850-7000rpm、480Nm/1700rpm-5850rpmというパワフルさに加えて、最近では目にしなくなった7000rpmの文字までスペックにある。先代の5気筒エンジンは、鋳鉄ブロックだったが、今はアルミブロックへと変わり、軽量化もされている。燃料噴射はポート噴射と直噴の両方を行なう噴射方式を採用している。

そしてクワトロは、電子制御多板クラッチによって前後トルク配分を瞬時にコントロールするトルクベクタリングを備え、最新のテクノロジーを持ったクワトロになっている。

わかる人には伝わる控えめな意匠

エクステリアデザインでは専用のシングルフレームグリルやバンパー、19インチサイズのホイール、赤く塗られたブレーキキャリパーには「RS」のロゴ。シルバーに塗られ、大胆に押し込まれたディフューザーなど、実はひと目で「フツーじゃない」と分かるデザインになっている。

室内をのぞき込むと、ブラックの上質なナッパレザーシートに赤のステッチ、RSのロゴがある。フラットボトムのステアリングにグリップ部はバックスキンを配し、インスツルメントパネルはフルデジタルになっている。アクセルとブレーキの2ペダルは、アルミ加飾もされ、左足でブレーキが踏みやすいようにBペダルは大きめのサイズになっている。そして、わずかにドライバー側へ傾くように見せるセンターコンソールなどエクシクルーシブな雰囲気満載なのだ。

嬉しいのはApple Car Play、Android Autoへの対応ができ、手持ちのスマートフォンがつなげられる「アウディスマートフォンインターフェイス」が標準装備されていること。アウディRS3セダンは2016年のパリサロンでワールドプレミアされたが、こうしたデジタル機器への先取り意識は高く、いまだ一部しか対応しない国産メーカーとは大きく意識の違いを感じるのだ。

NEXT:試乗レポート


試乗レポート

さてさて、試乗は御殿場周辺と箱根のワインディングだが、クルマ好きなら誰もがたまらなく気に入ってしまうこと間違いないだろう。ドライブモードはコンフォート、オート、ダイナミック、インディビデュアルとあるが、コンフォートでもエンジンの「ゴロゴロゴローッ」という音が聞こえている。「ダイナミック」にすればまさにレーシングエンジンの音がするわけで、気分の高揚は間違いない。

こうした音の作り込みは、ハイスペックなトップアスリートモデルには欠くことのできない性能のひとつだと改めて気づかされる。日本にもトップアスリートと呼べるモデルは、これまでもあるが、800万円弱のコンパクトセダンでこれほどサウンドに魅力を感じてしまうモデルはなかった。

乗り心地は少なくとも普通ではない。19インチのピレリP -zero 235/35-19というタイヤサイズが物語るように、硬めのサスペンションと超扁平タイヤの乗り心地は決してゴージャスではなく、アスリートなのだ。その割り切りがいい。

また、試乗車にはマグネティックライドという流動磁性体を使った連続可変ダンパーを装備しているが、言うまでもなくスポーツ走行で役に立つ装備として備えているのだ。フィーリングとしては高級でまろやかに、いなしながら引き締まった乗り心地という感じだ。

操舵フィールは、近年制御系で回頭性を上げるモデルが増えてきているが、RS3はナチュラルに感じる。前後のトルク配分もあり、コーナリングブレーキも備わっているのだが、一切制御による回頭だとは感じない。それはロール剛性や、ヨーモーメントの始まり方がステア操舵と車速とが連動しているからだろう。ドライバーは気持ちよくコントロールしていけるのだ。

また、ハンドルの操舵力は軽く、気軽にステアできるが、直進の座りがしっかりあるので不安は感じない。ドライブモードのダイナミックを選べば操舵力は変化し、しっかりとした手応えになるのも好ましい。

そしてなんといってもブレーキの剛性感がたくましく、しっかりと安定した減速をするので、安心感倍増だ。ハイパワーなエンジンほどブレーキがそれ以上の減速度を発揮しなければ、安心してアクセルは踏めないものだ。まさに、スーパーアスリートのお手本と言えるだろう。

とはいえ、日常の買い物にだって使おうと思えば普通に乗れるのは間違いないし、5人乗車のユーティリティだって文句なしの使い勝手と言える。こうしたコンパクトセダンの中で世界最速の1台とも言えるRS3セダンは、「言い訳が必要な人」にはイチオシのモデルなのだ。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>

【価格】

780万円(税込)

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