マクラーレンにしてみれば、まさかフェラーリに敗れるとは夢にも思わなかったのではないか。
前日に圧巻のポールポジションを獲得したランド・ノリス(マクラーレン)は、第1シケインまではリードを守るものの、第2シケインの飛び込みでオスカー・ピアストリ(マクラーレン)に先行され、続くターン6ではシャルル・ルクレール(フェラーリ)にも先行を許し3番手に後退してしまう。
ルクレールがモンツァを制しティフォシ歓喜。マクラーレンを抑え込む【決勝レポート/F1第16戦】
それでも14周目、ノリスは2番手のルクレールにアンダーカットを仕掛け、難なく2番手の座を取り戻すことが叶った。フェラーリ陣営はそのままステイアウトさせてもよかったはずだが、次の周にルクレールを入れてしまった。
「アンダーカットされるとわかっていて、どうして僕をピットに呼んだの?」と、ルクレールが無線で怒ったのも無理はない。想定より早い周回でピットインしたことで、1ストップ戦略の選択肢も消滅したと、この時点でのフェラーリ陣営は、そう覚悟したはずだ。
これでマクラーレンは、もはやフェラーリは敵ではなく、ワン・ツー・フィニッシュを手中にしたと思ったことだろう。その証拠に23周目にはノリスに、「オスカーとレースをしてもいいよ」と伝えている。1.5秒後ろにつけるルクレールの存在は、完全に無視した内容の無線だった。
とはいえマクラーレンもしばらくは、1ストップで行く可能性を探っていた。しかしノリスは32周目に2回目のピットイン。「1回で行けるか」と尋ねられたピアストリも、「ぜんぜんダメだよ。左フロントが完全に終わっている」と答えて、38周目に2回目のタイヤ交換に向かった。
これで暫定ワンツーに立ったルクレール、カルロス・サインツのフェラーリ勢は、その後もスティントを引っ張り続けた。チェッカーまで残り10周余りとなった42周目、マクラーレン陣営もさすがに不安に思い始めたようだ。
そこで「不可能だとは思うが、フェラーリの2台は1ストップを狙ってるかもしれない」と、ノリスに伝えた。そして「ここからは予選ペースで行ってくれ」と、指示を出した。13~19周以上フレッシュなタイヤを履くマクラーレンの2台なら、たとえフェラーリが1ストップで走り続けたとしても、コース上で抜き返せるに違いない、と。
その目論見どおり、2番手につけていたサインツは攻略できた。ところがサインツよりさらに4周古いタイヤを履いていたルクレールのペースは、驚くほどに落ちなかった。終盤になっても1分23秒台をキープし続けたことで、ルクレールは5月に開催された第8戦モナコGP以来となる今季2勝目を挙げた。
今季のフェラーリは、去年までの“一発は速いが、タイヤに厳しくレースでは持たない”という欠点を完全に払拭している。マクラーレンもその事実を認識していないはずはないが、完全再舗装でタイヤに厳しくなった今年のモンツァでの1ストップは、自分たちも含めあり得ないと思ったのではないか。
ワン・ツー・フィニッシュに失敗したマクラーレンは、レッドブルとの30ポイント差をひっくり返すことができず、彼らを王座から追い落とすことはできなかった。最終周にノリスがファステストを決め、1ポイントを追加したのが、彼らのせめてもの意地だった。
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