軽自動車税も値上がりし税金などでの差は縮まっている
2019年度(2019年4月から2020年3月)に国内で売られた新車のうち、軽自動車が37%を占めた。そして軽自動車は、ボディサイズやエンジン排気量の枠が小さく抑えられる代わりに、税金が安い。一般的に軽自動車のメリットは、税金の安さといわれる。
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ところが改めて軽自動車と小型車の税金を比べると、意外に差が付かない。まず軽自動車税と小型車の自動車税だが、軽自動車税は乗用車が年額1万800円、1.2~1.5リッターエンジンを搭載する小型乗用車の自動車税は3万500円だ。差額は1万9700円になる。
ちなみに2015年3月までの軽自動車税は年額7200円、2019年9月までの自動車税は前述の排気量で3万4500円だったから、軽自動車税は年額2万7300円安かった。それが今は軽自動車税が値上げされて、自動車税は小排気量車を中心に値下げしたから、差額が1万9700円に縮まった。
また購入時に納める自動車取得税は10%への消費増税に伴って廃止されたが、環境性能割という新しい税金が導入された。10%の消費増税に併せて自動車取得税を廃止する公約は実質的に破られた。
新しい環境性能割の税率は、2020年度燃費基準の達成率により、小型/普通車は取得価格の1~3%あるいは非課税、軽自動車は1~2%あるいは非課税だが、2019年10月1日から2020年9月30日までは軽減税率が適用される。各1%減らすので、小型/普通車は取得価格の1~2%あるいは非課税、軽自動車は1%か非課税だ。ここでも軽自動車と小型車の税額差が縮まった。
結局のところ、車両価格が170~175万円の軽自動車と1.2~1.5Lエンジンを搭載する小型車を比べた場合、購入後3年間に納める環境性能割+自動車税+自動車重量税の合計額は、軽自動車が約3万8000円、小型車は約12万円だ。軽自動車が3年間で8万円ほど安い。
自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)の保険料は、購入時に納める3年分で、自家用の軽乗用車が2万9550円、小型/普通乗用車は3万170円だ。軽自動車が安いものの、差額は3年間で620円にとどまる。約10年前は軽自動車が5000円以上安かったから、差額が大幅に縮まった。
軽自動車の保有台数が多いほどお得になる傾向
その理由は、自賠責保険料が保険料収入と保険金支出の差額で決まるからだ。税金と違って、軽自動車を制度的に安く抑えているわけではないため、軽自動車の保有台数が増えて保険金支出も上昇すれば軽自動車税も高額になる。
以上のように、軽自動車と価格が同等の小型車の維持費を総合的に計算すると、税金と自賠責保険料の差額は3年間で約8万円だ。メンテナンス費用を含めて、3年間で11~14万円、1年当たり4~5万円の差額に収まる。
そのためにクルマの所有パターンが「1世帯に1台」ということが多い東京都では、軽自動車の普及率も低い。逆にひとりに1台の割合で所有する地域では、軽自動車の普及率も高まる。1台だけの所有なら1年当たり約5万円の差額でも、4台持てば20万円に拡大するからだ。
従って軽自動車にとって税金の安さというメリットは、1世帯当たりの保有台数によって変わる。そして軽自動車が新車として売られるクルマの37%を占めるに至った一番の理由は、実用性が優れていることだ。
今の軽乗用車の販売内訳を見ると、ホンダN-BOXやダイハツ・タントといった全高が1700mmを超える車種は50%弱に達して、スズキ・ワゴンR、ホンダN-WGNなど全高が1600~1700mmの車種も35%を占める。つまり軽乗用車全体の80%以上が背の高い車種になり、N-BOXやタントの室内はコンパクトカー以上に広い。4名で乗車しても快適で、後席を畳めば自転車なども積める。
ユーザーに関心が高い安全装備も充実しており、ホンダ車で自転車を検知できる衝突被害軽減ブレーキを最初に採用したのはN-WGNだった。海外向けに造られた普通車とは異なり、日本のユーザーを見据えた商品開発により、軽自動車は絶好調に売れている。コストでも、維持費でもなく、共感の得られるクルマ作りが人気の秘訣だ。
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