軽自動車は、価格が安くてサイズも小さく、普段のアシとして大活躍している。その気軽さゆえか、軽自動車はメンテナンスにあまりお金がかからないと思われがち。
しかし、実際にはエンジンオイルの交換サイクルは普通車よりも短くなっている。なぜ軽自動車のエンジンオイルの交換サイクルは短いのか、徹底解説。
軽はメンテにあまり手がかからない? 実は逆! なぜ軽自動車のエンジンオイル交換サイクルは普通車より短いのか?
文/鈴木伸一
写真/ベストカーweb編集部、トビラ写真=yamasan@Adobe Stock
■軽自動車は普通車より手がかかる!?
軽自動車のエンジンオイルは普通車よりも早いタイミングで交換するよう推奨されている(dreamnikon@Adobe Stock)
環境対応への強化がなされている近年のクルマは、各部のメンテナンスサイクルが長く設定される傾向にある。
人間に例えればエンジンにとって「血液」に匹敵するほど重要な働きをしているエンジンオイルも同様で、普通車におけるカーメーカーの推奨交換サイクルはほぼ(メーカーによって微妙に異なる)、次のように規定されている。
●ガソリンNA車/1万5000kmまたは1年
●ガソリンターボ車/5000kmまたは6ヵ月
ところが、近年人気の維持費が安く、燃費にも優れる「軽自動車」の場合は、
●NA軽自動車/1万Kmまたは6ヵ月
●ターボ軽自動車/5000kmまたは6ヵ月
……となる。動作時、高温かつ高回転となるターボチャージャーが装着されたターボ車は普通車に準じた短さで、NA車(自然吸気)は普通車の約半分が目安。さらに、シビアコンディションだった場合、普通車の以下の通り。
●ガソリンNA/7500km、または6ヵ月
●ガソリンターボ車/2500km、または3ヵ月
これに対し、軽自動車のシビアコンディションは、
●NA軽自動車/5,000kmまたは3ヶ月
●ターボ軽自動車/2,500kmまたは3ヶ月
となり、やはり軽自動車のターボ車は同等の厳しさ、NAでも約半分と、さらに短くなる。このように、軽自動車のエンジンオイルは普通車よりも早いタイミングで交換するよう推奨されている。
小排気量で大きな出力を得ようとした場合、必然的に回転数を高めることになり、一定時間内に回る回転数が多いほど摩擦が大きくなるため、エンジンオイルへの負担もその回転数の増加に比例して増大するからだ。
例えば、2Lクラス普通車の100km/h巡航時のエンジン回転数は2500回転前後。これに対し軽自動車の場合、約4500回転。スポーツモデルともなれば5000回転前後と、約倍の回転数となる。
ただし、この100km/h巡航時の条件が当てはまるのは2010年代までのトランスミッションがMTやAT仕様だった場合。それ以降の、トランスミッションにCVTを採用したモデルでは100km/h巡航時のエンジン回転数が2500~3000回転と、普通車と変わらなくなってきている。
このため、近年のモデルなら高速道路といえども制限速度内で流れに乗って走っている限り、エンジンオイルへの負担は普通車と同等レベル。軽だからといって目くじらを立てるほどの差はなくなってきている。
■エンジンへの負担が大きい軽自動車
ジムニーのメーカー推奨エンジンオイル交換時期は5000km毎または6ヵ月どちらか早い方となっている。シビアコンディションが30%以上となる場合は早めの交換が必要になり、通常仕様の半分の2500kmになる
とはいえ、小排気量の軽自動車は普通車に比べて低速トルクが弱く、パワーに余裕がない。これは純然たる事実。高速道路の合流路等で流れに合わせようとした場合、高回転まで引っ張らざるをえない。追い越し加速時も同様で、キビキビ走らせようと思えば回転を高めにキープする必要も出てくる。
このため、トータルでは普通車に比べて常用回転域が高くなる傾向にある。
また、軽自動車の使われ方を考えた場合、高速道路の利用や遠出は少なく、街乗りが主体。それも近所への足。つまり、「ちょい乗り(1回あたりの走行距離が8km以下)」の利用が多いものと思われる。
この1回に走らせる距離が短く、エンジンが温まらないうちに帰ってくる「ちょい乗り」や真夏の渋滞路の「のろのろ運転」といった利用環境も実は「シビアコンディション」に該当する。
ガソリンの燃焼過程で発生する水分(理論空燃比で燃焼させると二酸化炭素と同時に、燃焼したガソリンと同量の水が発生する)はエンジンが暖まることで蒸発する。
ところが、エンジンが完全に暖まる前に止めてしまうと、蒸発しきらずに残った水分がオイルに混ざり込んでスラッジを発生。燃え残った未燃焼ガスの混入量も増加するため、エンジンオイルの劣化を早めることになるからだ。
真夏の渋滞路も短時間ならまだしも、長時間に渡ってエンジンの放熱が追いつかない状況に陥って油温(エンジンオイルの温度)が限度(一般に130℃)を超えてしまった場合、性能が一気に低下する。街乗りは慢性的な渋滞にも巻き込まれやすいだけに注意が必要だ。
なお、「シビアコンディション」とは悪路走行が30%以上、走行距離が多い、山道など上り下りの頻繁な走行が30%以上といった、エンジンオイルに負担がかかる過酷な使用条件下における交換サイクルで、これに該当したら早めにオイル交換を行う必要がある。
■愛車長持ちの秘訣は手間と出費を惜しまないメンテナンス
1回の走行距離が短くちょこっと街中を走ることの多い軽自動車は普通車よりも気を使う必要があるので早め早めのエンジンオイル交換を勧めたい
とにかく、愛車を少しでも長持ちさせたいと考えていたなら、大きなトラブルに発展する前に定期的に交換すべきパーツ(消耗パーツ)は、ケチることなく交換する。これが重要なポイントとなる。
特に、「油脂類」は使用頻度や期間に応じて確実に劣化が進み、本来の性能を発揮できなくなってくるので注意! 数千円の出費で済むオイル交換を怠ったがためにエンジントラブルに見舞われ「数万円の修理代がかかってしまった」といった事例が往々にしてあるからだ。
また、軽自動車の新型モデルには「アイドリングストップ」が標準装備される傾向にある。この「アイドリングストップ」。ゴー&ストップの多い街乗りで真価を発揮し、燃費性能の向上に確実に寄与してくれる。
が、停車の都度エンジン停止と再始動が繰り返されるため、バッテリーへの負担が大きく、バッテリーメーカーの保証期間も1年半と短い。実質的な寿命の目安も2年前後、もって3年と、一般的なクルマであれば3~5年は使えることを考えれば、約半分の寿命となるので注意が必要だ。
さらに、バッテリーターミナルの緩みなどによる通電不良といった些細なトラブルも信号待ちの停車時に発生したら命取り。それゆえバッテリー本体は元より、バッテリーターミナルのコンディションチェックも欠かすことができない。
このように、近距離走行の多い軽自動車こそメンテナンスは重要なわけで、乗りっぱなしは厳禁! 安全かつ快適に走らせるために、定期点検はもちろんのこと日常点検もキッチリ行う必要がある。肝に銘じておきたい。
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みんなのコメント
どうせ年間のガソリン代なんて4-5万にしかならんから、1-2km燃費向上したところで4-5千円?
それで2万円ぐらい割高なバッテリーを3年交換?
割に合わん。
ドレーンから出てくるのはヘドロのようになった黒いモノが少々、という状態もある。
少々変な音はしているが、それでも壊れずにまた次の、そしてまた次の車検まで、同じ状況を繰り返しながらも走れる日本車の技術力ってすごいわ。
田舎の道をのんびりと走るだけだから持っているんだろうけど。