「フルモデルチェンジでもないのにデザインが大きく変わった!!」。時折そんな衝撃のマイナーチェンジがおこなわれるモデルが存在する。最近でいえば、2017年6月に改良を受けたスズキ SX4 Sクロスも、まさにそんな一例のひとつだ。なぜ、これほどまでにガラッと車の“顔”を変えるのか? そこには大きく分けて2つの理由が存在していた。
文:渡辺陽一郎/写真:編集部、MAZDA、TOYOTA
マツダ、スバル車は1年で新型に!? 「年次改良」の理由と事情
ベストカー2017年9月10日号
“大整形”の背景には2つの事情が存在
“大整形”する根本的な理由は売れゆきを伸ばすことだが、背景には2つの事情がある。
まずはその顔が存在感に欠けるなど、販売面で失敗だったと判断された場合だ。SX4 Sクロス、9月下旬に顔を変えるステップワゴンスパーダなどはこの部類に入る。
2つ目の事情は、その車種の製造メーカーが新たに統一したファミリーフェイスを採用した時だ。このパターンは多く、アウトランダーとRVRは、今後の三菱車に共通する「ダイナミックシールド」に改めた。
プレミオ&アリオン、SAI、マークX、マーチも同様だ。レクサスが「スピンドルグリル」を採用した時は、LSやHSがフロントマスクを大幅に変えた。
面白いのはマツダ ビアンテ。2008年の発売時では、当時のマツダ車に共通する五角形グリルを採用した。ところが2012年にCX-5が発売され、それ以降にマツダが自社開発する車種は「魂動デザイン」になった。
「魂動デザイン」はSKYACTIV技術をフル採用するマツダの新世代商品群の表現手段だから、ビアンテには採用できない。そこで背の高いミニバンで流行する大型メッキグリルを装着した。要は古い顔立ちを守る必要がなくなり、「魂動デザイン」にも所属できず、宙ぶらりんになって自由にデザインできた。その結果、大整形はまずまず成功している。
『他車種と統一したいが、バランスは崩れる』大整形の難しさ
いっぽう、新しいファミリーフェイスに合わせた時は、ボディ全体のバランスを悪化させる。外観はボディの前/横/後ろが調和するようにデザインされるから、顔だけ変えると全体が崩れて当然だ。
従って外観のことだけを考えると大整形は避けたいが、ほかの車種と統一が取れない。小変更でも同じだ。そして、大整形する車種は設計が古く、売れゆきも低迷しているから、大幅な変更を加えて外観が崩れても販売は下がらない。そこで大整形に至る。
大きく変われば注目され、車種によっては安全装備なども充実する。担当セールスマン氏は顧客に「新しくなりました」と代替えをすすめるから、優しいユーザーは「フルモデルチェンジじゃないのかよぉ」と思いつつ乗り替えてくれるのだ。
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