レクサスは2021年2月22日、北米市場専用モデルとして、レクサスIS500 Fスポーツパフォーマンスを発表した。クルマ好きならば、レクサスのFスポーツパフォーマンスは、これまでなかったグレードだと気が付いたはずだ。
レクサスのFは、国際サーキットの富士スピードウェイの頭文字がその由来とされ、モータースポーツ仕込みの「走りを究めたモデル」として生まれたモデルである。
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これまでのFといえば、2007年12月に登場したIS F、Fシリーズの頂点としてデビューしたLFA、IS Fに代わり登場したRC FとGS F、そして日常からサーキットまで、誰もがシームレスに走りを楽しめるという「F」のフィロソフィーを幅広く展開するためにレクサス各車種にラインナップされたFスポーツがある。
こうしたなかで、今回発表されたIS500 Fスポーツパフォーマンスとはいかなるモデルなのか? これまでのFとFスポーツの間という位置づけになるのか、考察していきたい。
文/遠藤徹、写真/ベストカー編集部、レクサス
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■2020年11月にビッグマイナーチェンジしたIS
IS350 Fスポーツ。Fスポーツは前後異サイズの19インチホイールを専用設定。スタビライザーやEPSなどを専用チューニングして走りを磨いている
IS Fスポーツを紹介する前に、マイナーチェンジしたレクサスISの販売状況を報告しておこう。
2020年11月5日、レクサスISはビッグマイナーチェンジし発売された。絶好調の滑り出しを見せ、多数のバックオーダーを抱えている状況にある。2021年3月上旬現在、納車待ちがノーマルのカタログモデルでは6ヵ月、特別仕様車の「Fスポーツモードブラック」は9ヵ月となっている。
当面の生産枠では供給が間に合わないことから、一時受注をストップさせているほどの人気ぶりである。売れ筋の中心になっているのは「Fスポーツ」であり、受注構成比はカタログモデルで40%、特別仕様車を含めると半分以上となっている。
2021年1~2月の登録累計は2077台で前年同期の193台に比べて、10倍以上の急増ぶりとなっている。このうちハイブリッドの350hが1513台で全体の72.8%を占めている。
特別仕様車の「Fスポーツモードブラック」。ブラックを基調としたカラーコーディネートで、精悍さを際立たせている
特別仕様車の「Fスポーツモードブラック」は、2リッターターボの300Fスポーツと3500ガソリンNAの350Fスポーツをベースに仕立てている。
足回り強化をはじめ、専用鍛造アルミホイール、ドアミラー専用ブラック塗装、専用アッシュ&本革ステアリング、オーナメントパネル(パワーウインドウスイッチベース部)、専用本革スポーツシート、専用8インチTFT液晶式メーターなどを特別装備している。
車両本体価格はIS300が585万円、IS350が700万円で、それぞれベース車に対して50万円高となっているが、実際は約100万円分のコストアップだが、実質50万円も安い勘定になるという。
■新型IS Fスポーツパフォーマンスは初代IS Fの再来なのか?
レクサスIS Fは2007年12月から販売開始。全長4660(+80)×全幅1815(+20)×全高1415(-20)mm、車重は1690(+90)kg(※カッコ内はIS350比)
IS Fの2UR-GSE型V8DOHCエンジンは4968ccの排気量から、最高出力423ps/51.5kgmを発生
LFAは2010年12月に第1号車を生産開始。1日に1台のペースで生産され、限定台数の500台を生産した
Fの称号が最初に与えられたのは初代IS F(2007年~2014年)だった。サーキットで鍛えられた足回り、フロントが225/40R19、リアが255/35R19というタイヤを収めるために広げられた前後のブリスターフェンダー、そしてなんといっても注目すべきは新開発の5L、V8自然吸気エンジンだ。
筒内直接噴射とポート噴射を併用するD-4Sや電動連続可変バブルタイミング(VVT-iE)などの先進技術を採用し、423ps/505Nmを発生した。
RC Fは2020年9月に改良を行って、スマートフォンとマルチメディアシステムとの連携などで利便性を向上させている
続いて2010年12月、世界超一級レベルの運動性能と超一流の感性と官能を持ち合わせるスーパーカーとして世に送り出すべく開発された、レクサス初のスーパーカー、LFA(レクサス Fスポーツ アペックス/限定500台生産)。
Fシリーズの頂点として、独創的なスタイルと、3750万円という価格もさることながら、560ps/480Nmの4.8L、V10の性能にも驚かされた。
これに続くFの称号が与えられたのは、レクサスの戦略により、3代目ISではなく、2014年10月に登場した2ドアクーペのRC Fだった。発売当初搭載された2UR-GSE型5L、V8は477ps/530Nm。2019年10月の一部改良では、約20kgの軽量化と、5L、V8エンジンは481ps/535Nmに向上した。
GS Fはセダンでありながらサーキット走行も楽しめるFシリーズの高性能モデルとして、2015年11月に登場した
2015年11月にはGS Fもデビューしたが、2020年9月にGSとともに生産が終了したため、現行モデルのFは、RC Fのみとなっている。
これまでFシリーズの頂点としてLFAがあり、プレミアムスポーツとしてのFモデル、そしてモータースポーツのエンジニアリングに根ざした専用設計が特徴で、サーキット走行から日常の市街地ドライブまでシームレスにスポーツドライビングが堪能できるモデルのFスポーツを各車種にラインナップしてきた。
■北米レクサスがIS500 Fスポーツパフォーマンスを発表!
レクサスが2月22日に北米市場専用車種として、発表したIS500 Fスポーツパフォーマンス(Lexus IS 500 F Sport Performance)
2021年2月22日、北米レクサスが5リッターV8エンジンを搭載した「IS500 Fスポーツパフォーマンス」を発表した。
まず目をひくのはV8エンジンを搭載するために、フロントグリルの上から2インチ(約5cm)盛り上がったフロントボンネットをはじめ、拡大されたバンパーや前後フェンダー、ダーククロームの窓枠、専用のENKEI製19インチアロイホイールなど。
そしてFモデルの象徴ともなっているクワッドマフラー(4本出し)、ディフューザーとリップスポイラーなどが装備され、タダモノではない雰囲気を醸し出している。
専用の19インチホイールや、ダーククロームの窓枠など、随所にFスポーツパフォーマンスとしてのこだわりを感じさせる
ボディ側面にはこれまでのモデルと差別化するために、F SPORT Performanceという、黒いバッチが装着されている。
注目はフロントに積まれる5L、V8エンジン。発表されたスペックは最高出力472hp/7100rpm、最大トルク535Nm(395lb-ft)/4800rpm。RC Fの標準車に搭載されている2UR-GSE型5L、V8は477ps/530Nmだからほぼ同じ数値。
発表された0~60mph(約96km/h)加速は4.5秒。車重は1765kgとIS350 Fスポーツより65kgの増加に抑えられている。
5LのV8エンジンをISシリーズとして新たに搭載し、Fスポーツの上位でFモデルに近い性能が与えられている
トランスミッションは8速スポーツダイレクトシフトATが組み合わされている。またIS350 Fスポーツと同じアダプティブバリアブルサスペンションやトルセンLSDなどのダイナミックハンドリングパッケージ、ヤマハ製のリアパフォーマンスダンパーを装備。
公開されたレクサスの公式動画では、アクセルを吹かすと「ヴォン、ヴォーン」というV8らしい野太いエンジン音と、Fモデルの特徴ともいえる4本出しマフラーからの官能的なエキゾーストノートが聞こえる。
また、スポーツSとスポーツS+を備えたドライブモードにより、迫力のある加速シーンやドリフトシーンを見ることができた。
8速スポーツダイレクトシフトATはパドル操作で小気味よい変速が可能だ
IS500 Fスポーツパフォーマンスに搭載されている5L、V8NAエンジンは、472hp/535Nmと、FモデルのRC F(477ps/530Nm)とほぼ同じスペックというのも凄い。F←Fスポーツパフォーマンス←Fスポーツという位置づけとなるが、限りなくFモデルに近い、Fスポーツパフォーマンスといえるだろう。
インテリアでは、本革ステアリングやサイドシルのスカッフプレートにFスポーツパフォーマンスの黒いバッチが付けられ、コンビネーションメーターにIS500専用の起動アニメーションを採用。安全装備では、最新バージョンである「レクサス セーフティシステム+2.5」を搭載している
ドライブモードはスポーツS+も備えており、サーキット走行にも対応するホールド性の良いフロントシートが与えられる
今回のISのビッグマイナーチェンジとFスポーツを中心とした商品ラインナップの強化によって、生産が追い付かない状況になったことから、トヨタ&レクサス開発陣は「セダンも開発の取り組み方次第では、まだまだ生き残れる道があるのではないか」といった考え方が芽生えているようにも見える。
発表されたリリースを見ると、2021年秋に2022年モデルとして北米での販売を計画しているようだ。
日本のレクサスインターナショナル関係者に日本発売の可能性はあるのか聞いたところ、「今のところは北米専用モデルで、日本での発売の予定はない」という。しかし「反響が大きければ発売の可能性はある」とも話してくれた。
ステアリングホイール下部やスカッフプレートなどに「F SPORT」の刻印が配され、特別な存在をアピール
証言1:レクサスインターナショナル関係者
「北米で発表されたIS500 Fスポーツパフォーマンスは北米専用モデルで、日本での発売は想定していないと聞いています。
FスポーツとFモデルの中間にあたるモデルで、セダンのGS Fが生産終了したため、需要があると判断。IS Fを生産終了してから、ISにBMW MモデルやメルセデスAMGに対抗するスポーツモデルを、という声を世界の方々から多くいただいておりました。反響次第では日本発売の可能性はあると思います」。
証言2:首都圏レクサス店営業担当者
「2020年11月上旬にビッグマイナーチェンジしたISは標準のカタログモデルで納期は6ヵ月待ち、特別仕様車のFスポーツモードブラックは9ヵ月待ちになっています。
レクサスブランドではこれまでSUVの販売は好調でしたが、セダンは売れ行き不振でした。しかしISがビッグマイナーチェンジしたことでISの人気が復活しました。
レクサスIS500 Fスポーツパフォーマンスは、国内では新型CクラスのAMGモデルやBMW M3セダンがライバルになると思います。スペックを見るかぎり、RC Fの5L、V8とほぼ同等の性能なので、ぜひ日本にも欲しいモデルですね」。
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みんなのコメント
IS Fに乗っていましたけど、GT-Rに勝つとか負けるとか、そう言った事は考えた事ありませんね。当然IS F購入の際、GT-Rも候補でしたけど。
クルマにあまり詳しくない人を乗せた時、チョット走ってあげると、必ず「え?何コレ!」って反応されましたね~