ここ数年、東京モーターショーの「寂しい」状況が続いている。
具体的には2007年辺りから出展者数が減ってきていて、2007年には「241」あった出展者が、2017年には「153」にまで減っている。今年(2019年)は186の企業および団体が参加するという。
入場者数についても、ここ数年が減少トレンドにあり、2013年の90万人から、2017年では77万人に減っている。
なぜ出展を取りやめるメーカーが出てくるのか
2019年の東京モーターショーは、10月23日~11月4日(一般公開日は10月25日から)にかけて開催される予定ではあるが、その「出展者」の内容はあまりパっとしない。
フェラーリやランボルギーニといったスーパーカーはもちろん、BMW、ミニ、ポルシェ、フォルクスワーゲンといったドイツの自動車メーカーも東京モーターショーへの不参加を表明した。
これまで、モーターショーというと、新型車やコンセプトカーを発表する華やかな場であったはずだ。
一体なぜこういった状況になってしまったのか、ボクなりに考えてみた。
東京モーターショー不参加の理由は2つある
ボクが考える、「大手自動車メーカーが、東京モーターショーに参加しない理由」は大きく分けて2つある。
ひとつは、「日本がもう魅力的なマーケットではない」ということだ。
つまり、費用をかけて東京モーターショーに出展したとしても、リターンがない、ということなのだろう。
たとえば、ポルシェの場合、2018年における世界販売は256,255台だ。
一方、日本国内での販売は7,166台にとどまる。
つまり日本は市場として、「ポルシェにとって2.8%」しかなく、その2.8%のために「数億円もの」費用をかけて東京モーターショーに出展することは「割に合わない」という判断になるのは致し方ない。
これは他の自動車メーカーにも当てはまることだし、日本市場の規模が相対的に縮小している今、自動車業界以外にもあてはまる(有名ブランド、大企業の日本撤退の報道を聞いたこともあるかと思う)。
ただ、これについては「一概に日本市場の魅力欠如」だといい切ることはできない。
自動車マーケットとしては巨大な「北米市場」で開催されるモーターショーからも撤退する自動車メーカーが相次いでいるからだ。
そしてここからがもうひとつの理由だが、現代においては「同じ金額をかけるなら、もっと効率の良いプロモーションが可能」ということだ。
今ではインターネットやSNSという効率的な情報伝達手段があり、新型車の情報をいとも簡単に消費者へと伝えることができる。
そして消費者にとっても、「わざわざ交通費を出して会場に行き、人混みにもまれながら」新型車を見るより、自宅に居ながらにして動画や画像、詳しい文章で新型車をチェックする方を好むのだろう。
さらに、現代は情報過多といった状況でもあり、よほど好きなものでもない限り、消費者は自分で情報を探しにいくことはないし、ましてや実際に体を動かして「その製品を見にいく」ことは少ない。
…であれば、その製品(今回の場合は自動車だ)を提供する側も、消費者に情報を届けようと考えた場合、「その場に来てもらう」よりも「情報をより広く発信する」ことのほうが重要となる。
消費者にとっても情報は「毎日洪水のように押し寄せ」、それらを取捨選択することに追われるばかりで、自分で情報を探しにゆく時間は少ないだろう。
そういった状況では、「その洪水」の中に、より目立つ印をつけて情報を流すしかない。
SNSの登場が世界を変えた
加えて、販売を伸ばすには「その製品を知らない人に知ってもらう」ことも欠かせない。
その場合は、いわゆる「インフルエンサー」を活用し、その人たちのファンたちに製品の存在を知らしめることになるが、現代においてはこういった手法のほうが商業的に成功する確率が高い。
だからというわけではないが、フェラーリは最近、限定モデルを販売する対象の定義を少し変えたようだ。
以前は「これまでに何台買ってくれた」ということが限定モデルの主な購入条件であったと伝えられるが、最近では「若く、SNS上で影響力のある」人物に限定モデルを販売する傾向がある。
たとえばスポーツ選手やビジネスにて名を成した若手実業家、著名なシェフといった人々に限定モデルを販売し、彼ら/彼女らがSNSにて自分たちの車両をアップすることで、そのファンたちはフェラーリの存在を知り、自分も「あこがれの人と同じものを手に入れたい」と思うようになるわけだ。
よって、東京モーターショーからの撤退が相次ぐこと、規模が縮小することについては「時代の流れ」だとボクは考えている。
それを憂うのは、「レコードからCDになった」時代にレコードが売れないと嘆くようなものだし、CDから音源配信へと移行した現代に「CDをなぜ買わない」と消費者のせいにしたり、「CD販売枚数ランキングを重視して」現実を見ないようなものだ。
よって自動車メーカーは「新しい時代に向けて、どうプロモーションを行ってゆくか」を考えるべきだと考えているし、旧い手法に固執していては、時代に遅れとなるだろう。
そう考えると、「若者の自動車離れ」は、単に自動車業界が時代の変化について行けていないだけで、プロモーション次第では「若者が飛びつく」商品に生まれ変わる可能性だってあるんじゃないか、と考える今日このごろだ。
[ライター・撮影/JUN MASUDA]
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