後輪駆動から0-100km/h加速0.4秒短縮
執筆:Matt Prior(マット・プライヤー)
【画像】四輪駆動になった BMW M3コンペティション 欧州の高性能サルーンと比較 全157枚
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)
途中で4ドアボディへ切り替わったものの、長く続くBMW M3の歴史上初めて、四輪駆動が選べるようになった最新のG80型。同じくG82型、2ドアクーペのM4にも四輪駆動が設定された。
最新のBMW M3コンペティション xドライブが搭載するのは、最高出力510ps、最大トルク66.1kg-mを発揮する、われわれが大好きな3.0L直列6気筒ツインターボ・エンジンだ。そこへ、更なるトラクションが追加されたことになる。
確かに510馬力もあれば、加速時はフロントタイヤの助けが必要だとBMWが考えても不思議ではない。アウディが展開する、安定性の高いRSモデルのように。
実際、M3コンペティション xドライブのスペックシートを見てみると、四輪駆動が効果的だということがわかる。後輪駆動のM3コンペティションの場合、0-100km/h加速は3.9秒だが、xドライブでは3.5秒。同じエンジンで、0.4秒という差が生まれている。
ただし普通に運転している限り、四輪駆動システムの存在感はとても薄い。通常は後輪駆動のM3と同様に、8速ATを介してパワーが伝わるのはリアタイヤのみだからだ。
xドライブでは、フロントタイヤへパワーを伝えるべく、マルチプレート・クラッチが常に臨戦態勢で待機している。フロント・サスペンションの間を通る、ドラブシャフトも。この四輪駆動化に伴い車重は55kg増え、1780kgとなった。
通常走行では四輪駆動の違いはわからない
フロントタイヤへ伝達されるパワーは、リアタイヤのスリップ量によって自動的に変化する。さらにノーマル、4WD、スポーツ4WDという3段階のモード設定から、ドライバーが前後の分配割合を選択することも可能。スポーツ4WDは、より後輪側に軸足が移る。
スタビリティ・コントロールをオフにすると、上記のモードに関係なく、後輪駆動状態に固定される。ドライバーの気分次第で、ドリフトを楽しめる環境も整えられている。
BMW M3コンペティション xドライブの英国価格は、7万8425ポンド(1215万円)から。後輪駆動のM3より、2765ポンド(43万円)高い設定となっている。
法定速度を守ったような運転をしている限り、直接乗り比べてみなければ、後輪駆動のM3と四輪駆動のM3との違いはほとんど知覚できない。筆者は2週間前に後輪駆動のM3に乗ってはいたが、その条件で実感できる差異はなかった。
ただし駆動輪に関わらず、最新のM3として疑問がなくはない。G80型ではすっかり大きく成長し、全長4805mm、全幅1905mmもあるのだから。そのかわりインテリアは上品で、作り付けもソリッド感が一層高くなっているけれど。
BMWがiドライブと呼ぶインフォテインメント・システムには、ロータリーダイヤルが備わる。エアコンなどには個別の機能が割り振られた、実際に押せるハードボタンが残されている。これは日常的な乗りやすさを高める上で、とても大きな要素だと思う。
ドライビングポジションも抜群に良い。早速公道へ出てみよう。
姿勢制御が優先の硬いサスペンション
エンジンは力強く、低回転域では僅かにレスポンスへ遅れがあるように感じられるものの、それを過ぎれば意欲的に回転数を高める。8速ATも、滑らかに次々と変速をこなしてくれる。
乗り心地は後輪駆動版と同じく硬い。最もソフトなドライブモードを選択しても、快適性より姿勢制御の方が優先される印象。実際、コンフォート・モードからスポーツ・モードへ切り替えても、サスペンションの衝撃吸収性に目立った違いは生じないようだ。
印象としては、左右タイヤの個別の動きではなく、垂直方向の動きがタイトになる様子。筆者なら、サスペンションはコンフォートのままにしておくだろう。
もちろん、エンジンの出力特性やステアリングホイールの重み付け、ブレーキペダルの反応なども変更できる。来たるべき、サーキット走行に備えて。
ドライブモードに関係なく、M3コンペティション xドライブは、スポーツサルーンのベンチマーク・モデルといえる、アルファ・ロメオ・ジュリア・クアドリフォリオのように道を突き進む。極めて速く。
アルファ・ロメオのシャシー設定は、一般的な英国郊外の最高速度、97km/h以内でも沢山の喜びを与えてくれる。一方で多くの高性能モデルが楽しめる速度域は、英国の公道で許される数字の上限側にある。
このBMW M3も輝きを増すには、高めの速度が求められる。とはいえ、路面状態が完璧とはいえない条件でも、M xドライブ・システムが控えている。右足の力を躊躇する必要はない。
M3の魅力度をさらに高めるxドライブ
後輪駆動のM3なら安定性が損なわれるような、濡れた橋桁の継ぎ目やタイトコーナーでも、四輪駆動なら遥かに安全。トラクション・コントロールのお世話になることなく、高い能力を保ち続けられる。
気象情報を問わず、急いで目的地を目指すことができる。極めて高次元のパフォーマンス・モデルだ。
では、BMW M3はM xドライブの獲得で面白くなったといえるだろうか。筆者はそこまでとは思わない。しかし、普段遣いもできるドライバーズカーとしての訴求力を、一層高めていることは間違いない。これからの季節なら、その違いを一層実感できるはず。
2021年に生まれ変わったスーパーサルーンのBMW M3。四輪駆動システムは、その魅力度をさらに高めたようだ。
BMW M3コンペティション xドライブ(英国仕様)のスペック
英国価格:7万8425ポンド(1215万円)
全長:4805mm
全幅:1905mm
全高:1435mm
最高速度:249km/h(リミッター)/289km/h(Mドライバーズ・パッケージ)
0-100km/h加速:3.5秒
燃費:9.9-10.0km/L
CO2排出量:228-231g/km
車両重量:1780kg(予想)
パワートレイン:直列6気筒2993ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:510ps/6250rpm
最大トルク:66.1kg-m/2750-5500rpm
ギアボックス:8速オートマティック
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