輸入車 [2024.06.07 UP]
常に時代の半歩先を行くラグジュアリーカー「メルセデス・ベンツ Eクラス」の歴史
[History of E-Class]時代を先駆けるラグジュアリーカーEクラスがもたらした価値
文●ユニット・コンパス 写真●メルセデス・ベンツ、ユニット・コンパス
(掲載されている内容はグーワールド本誌2024年7月号「Eクラス特集/メルセデスらしさが凝縮した主力モデル[選ばれ続ける E-Class]」記事の内容です)
なぜEクラスがいまだに特別な存在であり続けるのか。11代にわたり積み重ねてきたラグジュアリーカーとしての歴史を紐解きながら、Eクラスがもたらした価値を解説する。
Eクラスのコンセプトは50年前に完成していた
内燃機関を搭載する自動車の発明者であるメルセデス・ベンツ。世の中の新技術を搭載した商品がそうであるように、自動車も登場から長く富裕層をターゲットにした高級車が主力モデルであった。だが、マーケットが発展すれば、ユーザーは商品ラインアップに多様性を求めるのも自然の流れである。
1960年代初頭、メルセデスはテールフィンを備えたSクラスで栄華を極めた当時のゴージャスなアメ車たちに対抗しながら、同時に新時代を見据えたニューモデルの開発に邁進していた。
それこそが、1968年に登場し現在のEクラスへとつながる系統、W114/W115モデルシリーズであった。「ストローク/8」という愛称で親しまれたW114/W115は、Sクラスと比較して小型ということからコンパクトとも呼ばれたが、実質的にはアッパーミディアムクラスをカバーするモデルであった。それはメルセデスが、高級乗用車ブランドであったからだ。
「ストローク/8」は、あらゆる面で洗練され、従来の同クラス車より完成度が高かった。
空間効率に優れながら、同時に当時の安全基準をはるかに上まわる安全性を誇り、走行性能も高かった。新開発のサスペンションシステムや4輪ディスクブレーキ、パワーステアリングもオプションながら用意されたほどだ。そのスタイリングはクリーンで洗練されており、メルセデスのクルマ作りが新たなる世代に突入したことが見た目からもはっきりと伝わった。結果として、「ストローク/8」はメルセデスとして初めて販売台数100万台を超え、最終的に派生車種を含め約190万台に達する大ヒットモデルとなった。
大袈裟に言えば、以降登場したミディアムクラスおよびEクラスは、「ストローク/8」と同じコンセプトで作られている。
クリーンで洗練されたスタイリング、基準を超越しクラスをリードする安全性、そして卓越した走行性能。さらに、優れた基礎設計をもとに派生モデルを用意することで、マーケットの需要を幅広くカバーする。
これらはまさに歴代Eクラスが備えてきた美点であり個性だ。Sクラスが自動車全体を牽引し、メルセデスを象徴する役割を担うのに対して、Eクラスは究極の実用車としてのメルセデスらしさを極めていく。
時代の半歩先をとてつもない完成度によって駆け抜けるEクラスの存在は、メルセデスだけでなく、高級乗用車とはどのような価値を与えてくれるのかを我々に教えてくれる。
だからこそ、人々はEクラスを信頼し続けるのだろう。
Eクラスの祖にあたるW120は、衝撃吸収ボディやセミ・モノコック構造による室内および荷室空間の確保といった革新的な設計を採用。戦後メルセデスの指針となった。
歴代のEクラスは、優れた空気抵抗、ボディサイズに対する広々とした室内空間という命題をクリアしながら、堂々たるスタイリングを実現させた。
メルセデスの本社があるドイツ・シュトゥットガルトの博物館では、Eクラスの特別展も開催された。
優れた基本設計ゆえ、派生モデルの完成度も高くなる。なかでもステーションワゴンは、独自の熱心なファンを持つモデルだ。
Eクラスワゴンがセンセーショナルだったのは、貨物車のイメージを払拭したこと。ライフスタイルを感じさせる高級車となったのだ。
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