腐ったシャシーは完全に再制作
レストア作業へ移された、ロータス・エラン BRM。シャシーは作業が難航した。現オーナーのイアン・ストウ氏が振り返る。
【画像】ロータス・エラン BRM 先代のエリートと最新のエミーラ/エヴァイヤ・プロトも 全97枚
「フロント・サスペンションの付け根部分は、完全に腐っていました。レストアを依頼したケルベドン・ロータス社によって、最終的に新品同様のシャシーが作られました。オリジナルの方は、ガレージにぶら下げてあります」
新しいシャシーが届くと、職人の手でメカニズムの修復が始まった。基本的には可能な限りオリジナルを用い、新しい部品の使用は最低限に留められた。
完全なレストア作業を通じて、新車時にBRMのマイク・スペンス氏たちが手を加えた内容を詳しく調べることもできた。リア・サスペンションの、コニ社製ショックアブソーバーもその1つ。丁寧にリビルドされ、シャシーに戻されている。
デフも3.54:1ではなく、3.55:1という僅かに高いギア比のものがが組まれていた。ギアボックス・マウント部分に、正しいスピードメーターを用いるよう、メモが残されていたという。ファイナルレシオが異なると、スピードも変わってくるためだ。
トランスミッションは、シリーズ3の標準。クロスレシオの4速MTが載っていた。
そしていよいよ本題、1558ccツインカム・エンジンだ。BRMの技術者は当時、シリンダーヘッド面を0.01インチ、ブロック側を0.02インチ、僅かに削っていた。それがオイル漏れの原因にもなっていた。
リビルドとチューニングで15ps向上
「エンジンの寿命が近づいた段階で、アルミ製のウオーターポンプ・プレートが交換されています。エンジンが高温になると、ブロック側よりヘッドの方が膨張し、1番シリンダー側でオイル漏れが発生したようです」
「標準のプレートでは、ブロックとピッタリ合わなかったのでしょう。位置関係を正常にするには、同様に研磨する必要があります」
ストウのクルマには、132psのCPL 2カムシャフトと呼ばれるエンジンが載っていたが、調査の結果、他のエラン BRMとは異なることも判明。レーシング仕様のエラン 26R用だった可能性が高いようだ。
エンジンのリビルドでは、バルブシートを無鉛ガソリンの対応品へ交換。ピストンリングやロッドベアリング、メインベアリング、コアプラグなども新品に置き換えられた。
レスポンスを良くするため、エグゾーストには4分岐のマニフォールドと、新車時のオプションでも選べたストレート・パイプを採用。キャブレターは、ウェーバーの40DCOEをチョイス。BRMのトランペット・インテークも組まれている。
最終的に、標準のエラン BRMより最高出力は15psほど向上。0-97km/h加速は6.8秒、最高速度は210km以上だという。
ドライバーズシートに座り、刺激的なDOHC 4気筒を目覚めさせる。ストレートパイプから、抜けの良い乾いたサウンドが放たれる。BRMのふるさと、英国東部のリンカンシャーに広がる道を攻め立てる準備は万端だ。
驚かされるツインカム・エンジン
通常のエランとは違うことは、走り出してすぐに見えてくる。チューニングが施されたツインカムに、何より驚かされる。気難しい部分はなく、純正エンジン以上の動力性能を与えている。
時々サーキット走行を楽しみつつ、日常的に郊外のドライブを楽しみたいドライバーには最適。市街地でも扱いやすいが、その気になれば慌てる子犬のように俊敏に走る。同時に、限界まで攻め込むことで、大きな喜びを味わえる。
ステアリングホイールへ小さな入力を加えると、エラン BRMは即座に反応。車重は軽く、早めのアクセルオンにも応えてくれる。不安な部分はまったくない。
ツインカム・エンジンは、7000rpmまで気持ちよく吹け上がる。アクセルペダルを緩めると、マフラーからパンパンッとアフターファイヤーが弾ける。小気味いいエランなら、耳障りということもない。
エラン BRMの中には、超クロスレシオのトランスミッションが組まれた例もあったようだが、純正の4速MTは公道を爽快に走るスタイルへ合っている。シフトレバーを操ることも楽しい。
ダブルクラッチを踏むか、ゆっくりスライドさせるマナーが求められるが、心地よくコクリと決まる。唯一慣れが必要だったのが、サーボアシストのブレーキ。ペダルの踏み加減と立ち上がる制動力とを理解するまで、少しの不安があった。
モータースポーツが最も輝いていた時代
開けた丘陵地帯を、小さく貴重なエラン BRMで駆け回る。こんな素晴らしい体験を、ひと握りのドライバーしか楽しめていないとは。秘密の世界への扉を、思い切り開いたような気分になった。
エラン BRMが驚くほど少ない数しか生産されなかった理由は、1968年のアメリカ・インディ500での悲劇にある。レーシングドライバーとして参加したスペンスの死去を受け、生産は終了してしまった。
オイルまみれでも構わないドライバーや、自動車購入に掛かる税金を免れたい英国人ドライバーが、ロータス・エランをキットの状態で購入した。BRMのチューニングは、その特徴を上手に突いた手法といえる。
動力性能が、見違えて向上しているわけではない。それでも、野心的な見た目から自在に振り回せる個性まで、エラン BRMは他にはない魅力で溢れている。モータースポーツが最も輝いていた時代が生んだ、ブリティッシュ・スポーツカーだ。
ステアリングを握れば、往年のレーシングドライバーの姿が浮かんでくる。刺激的で、完璧なロータス・エランのように感じた。
ロータス・エラン BRM(1967~1968年/英国仕様)のスペック
英国価格:1525ポンド(キット状態)/7万ポンド(約1085万円)以下(現在)
生産台数:10台(推定)
全長:3689mm
全幅:1422mm
全高:1175mm
最高速度:206km/h
0-97km/h加速:6.8秒
燃費:9.9km/L
CO2排出量:−
車両重量:696kg
パワートレイン:直列4気筒1558cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:132ps/6500rpm
最大トルク:−
ギアボックス:4速マニュアル
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