運営元:外車王SOKEN
著者 :木谷 宗義
「100ドロ」が、「100万円でドロ沼にハマる」を意味することは、中古車マニアーズならきっとご存知のことでしょう。
この100万円というのは、50~70万円のクルマに車検をつけて、タイヤ交換などなどのリフレッシュをすると、だいたいこのぐらいになるという絶妙なライン。しかも、「車両70万円なら……」と気軽にいけちゃう金額だから、タチが悪いというものです(笑)。
でも、100万円の予算があれば、それほど古くなく暮らしのパートナーとして活躍してくれる万能趣味車が買えるのも事実。(選択を間違えなければ)リーズナブルに濃厚輸入車を楽しめる、中古車マニアーズ的においしい価格帯なのであります。
実際、筆者も初めての愛車は総額100万円のルノー「トゥインゴ」でした(2002年式クイックシフト5が懐かしい……)。
■いい意味で“普通”でもその先に
そんな前段のもとに今回、取り上げるのはルノー「ルーテシア4」。日本では2013年~2020年にかけて販売された、ルノーのBセグメントコンパクトカーです。
ルノーというメーカーは不思議なもので、フランスでは長らくベストセラーでありながら、日本ではマニア度の高いメーカーとして輸入車ファンに(輸入車ファンだけに?)愛されてきました。
その理由は?というと、いい意味で“普通“だから。そして、普通なのに“とっても良い“から。
フランスでのルノーは、日本でいえばトヨタやホンダのようなメーカー。プレミアムブランドではない、身近なブランドです。だから、クルマ自体はごく普通。メルセデス・ベンツのようなプレミアム性も、アルファロメオのような飛び抜けたスポーティネスも持ち合わせていません。
でも、乗ってみると操縦安定性や乗り心地がよく、どのモデルでも“ひとクラス上”の乗り味が感じられるから不思議。これが、輸入車ファン(というかマニア)に愛される所以です(松任谷正隆さんもルノー・セニックを愛用されていた)。
さらに、日本ではマイナーなブランドのため、希少性が高いのもマニア心をくすぐるポイントで、カングーがここまでメジャーになる前も2010年ごろ(ルーテシア2の時代です)までは、ルノー車同士ですれ違うと、たとえ知らない人でも手を上げて挨拶をするほどでした。
■ルーテシア4が旬である理由
話がルノーに寄ってしまいましたが、ここまでの話を踏まえてルーテシア4の中古車をちょっと探してみてください(そしてこの記事に戻ってきてください)。下は50万円以下から、R.S.(後述します)を除けば高くても120万円程度で、中心はまさに“総額100万円”の価格帯であることがわかるでしょう。
でも、今もそのデザインはまったく古くなく、1.3リッターターボ+7速DCTの走りはパワフル。しかも、ルノーの美点である重厚なのに軽快な乗り心地とハンドリング(剛性感も高い)がついてくるのです。探せば、3ペダルMTだってあります(こちらは0.9リッターでさらにマニアック!)。
4mをちょっと超える全長と1.7mを少しはみ出す全幅のボディは、コンパクトカーより立派位に見えてオシャレ度もバツグン(カラーや仕様もいろいろある)、おかげで室内も広いのも嬉しいところです。
レッドやブラウンもある大胆なデザインの内装は意外や質感が高く、大きめのシートは掛け心地良好(これもルノー伝統の美点)。カーナビだけはつかないけれど、時代遅れのシステムがついているよりはいいかもしれない、と前向きに捉えておきましょう。
走り出した瞬間に感じる重厚さとハンドルを切ったときの剛性感ある手応えは、繰り返しになりますがルノーの最大の魅力。これが100ドロ範疇にあるのだから、中古車マニアーズとしては無視できないのです。
ちなみに、日本で販売の主力となった上級グレードの「インテンス」は17インチを履きますが、ホイール径の小さい「アクティフ」や「ゼン」を選ぶといいでしょう。内装もベーシックな黒基調となりますが、それも“現地っぽさ”であり、むしろプラス要素となるかもしれません(カングーを黒バンパーで乗るような感覚で)
■ルノー・スポールも捨てがたい
ルーテシア4でもうひとつ忘れてはいけないのは、R.S.の存在。こちらはルノーのレース部門であるルノー・スポール(R.S.はルノー・スポールの略!)が手がけた、本格派スポーツモデル(トヨタのGRやメルセデスのAMGのような仕様)です。
200psの1.6リッターターボエンジンに、電子制御ディファレンシャル「R.S.デフ」などにより強化されたシャシーを採用。よく“懐が深い”と評されるその走りは、“ルノー・スポールの妙”と言えるでしょう。並大抵の足ではないのに乗り心地もよく、“妙”という表現がピッタリ。
さらに、さらに出力を220馬力まで高め、サスペンションだけでなくシフトスピードやステアリングギア比まで変更された「R.S.TROPHY」は、そのままサーキット走行ができるほどの実力の持ち主です。さすがに“100ドロ”対象とはいきませんが、それでも“150ドロ”には近づいてきていて、これも大いに魅力的に映ります(先代ルーテシア3のRSで100ドロもアリ)。
■ルノー、そしてフランスを感じる
そのクルマ本来の性能を体感するなら、新車に勝るものはありません。でも、そのメーカーの思想や風味を感じるならば、中古車でも十分です。そういう意味では、ルノーのようなマイナーブランド(日本では)のクルマは、中古車ほど手を出しやすく、かつ味わい深いのではないでしょうか。
中古車マニアーズに賛同してくださるような方なら、きっとルノーの乗り味に何かを感じられるはず。古くからのフランス車ファンには薄味と言われるかもしれませんが、ルーテシア4に宿るルノー車の、そしてフランス車の味はまだまだ濃い口。
年式も比較的新しく、新車に近い感覚で乗れるルーテシア4は、“今まさに乗りたい1台”としてここに記します。
[画像/Renault・ライター/木谷宗義]
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2型は2000年ごろ。