近年日本での存在感も高くなってきたルノー。そのスポーツイメージも大事にしつつ、実用性にも富んだクルマとしてエンスーのみならずより幅広い層にも人気のブランドになっている。そんなルノーといえばついクルマ好きは「ルノースポール(R.S.)」を思い浮かべてしまうが、もう少し幅広いユーザーが満足する「GT」という存在を忘れがちだ。今回はシビックとニュルFF最速を競っているメガーヌR.S.ではなく、メガーヌGTに試乗。今年10月に上陸したメガーヌGTはシビックハッチバックのようなスポーティな走りに近い。その走りに「フランス車らしさ」は健在なのか、鈴木直也氏が徹底チェックです。
文:鈴木直也/写真:奥隅圭之
「ベストカー」2017年12月26日号
スポーツカー受難の時代!! それでも今年登場した秀逸スポーツ通信簿3選
■伝統的なフランス車の乗り味は健在
日本市場におけるルノーは、ニッチマーケットを開拓することで販売を伸ばしてきた。その代表がカングーだが、もうひとつの大きな柱がルノースポール(R.S.)。ドイツ車にはないホンワカした雰囲気と、その対極にある情熱的なスポーツモデルがルノー人気の双璧だ。そういうちょっと特殊なマーケットだからか、モデルチェンジした新型メガーヌを導入するにあたって、ルノージャポンはグレードを"GT"主体に絞ってきた。R.S.(来年導入予定)ほど過激ではないが、GTもルノースポールが開発。
搭載される1.6Lターボは205psを発揮し、クラッチが湿式に変更された新しい7速DCT(ルノーではEDCと呼ぶ)が組み合わされる。さらに、このGTのもうひとつの売り物は"4コントロール"と呼ぶ4輪操舵システムを装備していることだ。トーションビームのリアサス中央に取り付けられた電制アクチュエータがタイロッドを介してハブキャリアを動かすシンプルなメカニズムは初期の日産HICASを彷彿させるが、聞けば10年以上にわたって独自開発を続けてきたものという。標準で60km/h、スポーツモードでは80km/hで同相と逆相が切り替わり、最大切れ角は逆相2.7度、同相1度というセッティング。
こういう"仕掛け"が備わっているだけに、走りはかなりユニークといっていい。まず、パワートレーンが205psのターボ+7速DCTだけに、基本的に走りはパワフルそのもの。加速感はゴルフGTIと同等以上の水準にある。
スタイリングもドイツ車とは異なりフランス車らしい。そのなかでスポーティなイメージも強く押し出している
■ドイツ車と違うのはハンドリングだ!!
ぜんぜん違うのはハンドリング、より正確に言えば操安性を作り込んでゆく"センス"だ。ドイツ車(とその影響下にある日本のスポーツモデル)のハンドリングは、リニアなレスポンスと強靭なスタビリティが目標。常に高いボディ剛性と正確なサスペンションの動作を追い求めている。メガーヌGTで箱根を飛ばすと、いままで至高のものと思っていたこの価値観ががらがらと崩壊する。
交差点などの低速大舵角コーナーではお尻をヒョイとアウトへ放り出す軽妙な小回り感覚が面白いし、速度を上げるにつれて操舵フィールは素直でニュートラルに変化し、知らぬ間に後輪のスタビリティもガシッと落ち着いてくる。ドイツ系スポーツが理詰めでハンドリングを作り込んでくるのに対し、もっと有機的というか動物的というか、ドライバーがテキトーな操作をしてもクルマ側が上手に受け止めてくれて、結果として正しいラインをそれなりの速度でトレースしてくれる、いわばユルい楽しさと表現したいハンドリング感覚があるのだ。
ぼくがいつもルノーのクルマ作りで感心するのは、決して高級な材料は使っていないのに"シェフ"のセンスで美味しい料理に仕上げる編集の上手さ。メガーヌGTの走りの楽しさなんか、まさにその典型だと思いますね。
"テンロク"ターボは205psを発揮。扱いやすいエンジン性能も魅力的
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