「2ドアクーペ受難の時代」であるように思える。
2ドアクーペというカテゴリーに入る車の魅力とは「パーソナル感」や「スポーツ性」など、さまざまあるだろう。だがごく簡単に言ってしまえば、それは「カッコいい」とか「イケてる感じに見える」ということであったように思う。
しかし平成の世も完全に押し詰まった今、屋根が低いウェッジシェイプ(くさび形)の2ドア車を「カッコいい」と感じる男の数はおそらく減少した。
多くの者にとって「カッコいい」の対象は今やプレミアムSUVへと移行しており、そうでなければ、同じクーペスタイルであっても利便性が高い「4ドアクーペ」が優勢となっている時代だ。
今、売れに売れている2ドアクーペとは、形状的には確かに2ドアクーペではあるものの、実質的にはまったくの別ジャンルとなる「スーパーカー」か、それに近い「準スーパーカー」だけだろう。
かく言う筆者もそういった時代のムードと決して無縁ではないせいか、現在の自家用車はSUVである。また近々、何らかの2ドアクーペを買う予定もない。
だが唯一かどうかはさておき、かなり気になってしまう2ドアクーペはある。
1975年から1996年まで販売された英国製の2ドアクーペ、「ジャガーXJ-S」だ。
もちろん近年のジャガーも「Fタイプ」という素敵な2ドアクーペを作っている。だがそれは汎欧州的なキャラクターも強いモデルであり、さらに言ってしまえば近年のジャガーは、「スポーティなクーペまたはセダンを作る自動車メーカー」というよりは「F-PACEやI-PACEなどのSUVに力を入れているブランド」と化したようにも見える。
だがXJ-Sは、ジャガーがジャガーだった時代の、つまりスポーツ性とプレミアム観が、あの島国のなかで独特の混淆を見せていた時代のクーペだ。
その登場は1975年9月。1960年代から70年代にかけて作られた名作スポーツクーペ/ロードスター「Eタイプ」の後継として誕生したXJ-Sは、排気量5.4リッターのV型12気筒エンジンを基本ユニットとする、贅沢きわまりない2ドアクーペだった。
車というのはエンジンの気筒数が3つか4つもあればまぁ普通ぐらいには走るもので、仮にXJ-Sのように大柄な車であっても気筒数は6つか、せいぜい8つで事足りる。
だがジャガーはあえてこの車に、部品点数が多くなるため整備するとなるとどうしても手間とカネがかかり、卑近な話をするなら各種税金も高くならざるを得ない「大排気量のV型12気筒エンジン」を搭載した(※1983年には直列6気筒も追加したが)。
その直接的な理由は、まずは単純に「前身のEタイプが5.4リッターのV12を積んでいて、それをそのままキャリーオーバーしたから」というのがある。さらに、V12エンジンは理論上、振動のない「完全バランスエンジン」であるゆえ、高級パーソナルクーペにふさわしかったという理由もあるだろう。
またさらに言えば、現代の技術をもってすれば6気筒または8気筒エンジンでも生み出せる余裕のパワーと静粛性あるいは官能性が、この時代は12気筒でしか実現できなかったから、という現実的な理由もあったはず。
だが根本のところを言うのであれば、ジャガーXJ-SにV型12気筒エンジンが採用された理由は、筆者が思うに以下のとおりだ。
「ジャガーは金勘定をしなかった。そしてユーザーも、それを求めなかった」
コストもかかる、故障もする、それでも乗る
贅を尽くそうと思えば、車に限らず寿司でも衣服でも住居でも、どうしたってそれなり以上の金銭は必要となる。
そういった金銭の支出そのものを嫌うのも、あるいは「もう少し安く、もっと効率的に、同じぐらいの贅を味わえないものだろうか?」と工夫することも、決して悪いことではない。いや悪いことではないどころか、むしろ推奨されてしかるべき態度だろう。
だがもしも「どちらが粋か?」と問われたならば、軍配は間違いなく「効率など知ったことか。とにかく我々は最高のモノを作り、それを求める人々に届けるのだ」と考えた当時のジャガーに、そしてそれを受け入れた当時のユーザーたちに上がるはずだ。
そこが、ジャガーXJ-Sという2ドアクーペ(ないしはコンバーチブル)のカッコ良さの根本であるように、筆者には思える。
そして世の中がダウンサイジングターボ(小排気量エンジンに過給器を加えることで、効率的かつ経済的にパワーを生み出す仕組み)を中心とする「効率一辺倒」になっている今だからこそ、ある意味で非効率なV型12気筒エンジンを積むジャガーXJ-Sの「粋」あるいは「やせ我慢」が、異彩を放つのだ。
V12搭載グレードの1991年における新車価格は1145万円。だがその中古車は今、車両250万円から350万円付近にて探すことができる。とはいえデリケートな部分も多い(そして気筒数も多い)エンジンゆえ、メンテナンスのコストはそれなりにかかってしまうことは間違いない。
だがそれでも、やや金太郎飴的な近年の1000万円級2ドアクーペを買うよりはるかにディープな満足と個性を、はるかに低コストで得られるじゃないか、という見方がないわけではない。
結局は何を大切とするかだ。もしも貴殿が「粋」「伊達」といった部分を己の至上命題とするのであれば、この端正な英国製12気筒クーペは今なお、というか今だからこそ逆に、注目に値する1台である。
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
メリットなかった!? トヨタもホンダも「アイドリングストップ機能」廃止へ! 「使いにくい」の声も! どんな反響があった?
「え…あたしのクルマが勝手に改造されてる…」!? 母のクルマの「変わりすぎた姿」に反響多数! 衝撃の「変貌」に集まった声とは
全長2.2m級で3人乗れる! 59万円からの「小型マシン」に反響あり! 普通免許&ノーヘルでも乗れる新型「トライク」どんなモデル?
日産が「新型セレナ」をまもなく発売! 超スゴい「高性能4WD」&地上高アップの「イーフォース」追加! 待望の「性能向上モデル」に販売店でも反響あり
「ヘッドライトが眩しいクルマ」なぜ増えた? 信号待ちで「ライト消さない人」が多数派になった理由とは? ヘッドライトの“新常識”ってどんなもの?
「ヘッドライトが眩しいクルマ」なぜ増えた? 信号待ちで「ライト消さない人」が多数派になった理由とは? ヘッドライトの“新常識”ってどんなもの?
電気自動車に積む「リチウムイオン電池」には2種類がある! レアメタル不足問題を解決する「LFP」ってどんなバッテリー?
真夏も真冬も車内で寝る必要があるトラックドライバー! アイドリングが御法度なイマドキの「冷暖房」事情
160万円でガルウイングドアが買えた! トヨタ「セラ」はバブルが生んだマイクロスーパーカーでした…今見ても新鮮なデザインに再注目です
「“暗い色”増えたなぁ…」 自動車カラーのトレンドが一気に“地味化”へ!? “とにかく明るい色”から一転のワケ
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!
みんなのコメント
この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?