■カーボンニュートラルの実証として合成燃料で参戦するGR86とSUBARU BRZがシェイクダウン!
2022年2月15日、富士スピードウェイに2台のレーシングカーが運びこまれました。
このモデルこそ、カーボンニュートラル燃料を使った「GR86」と「SUBARU BRZ」の先行開発車両です。
ついに、2021年11月に発表された“ガチンコ”公開開発の火蓋が本当に切られたのです。
【画像】トヨタとスバルのガチンコな挑戦! シェイクダウンの様子を見る!(45枚)
すでに両社は個別に動作確認とチェック走行を行なっていますが、2社が揃ってのテスト、さらにレーシングスピードでの走行は初です。
早朝パドックに向かうと、GR/スバル共にピットは設営済み、すでにマシンのチェックが行なわれていました。
ちなみにコースはGR/スバルの専有ですが、最初にGRとスバルのピットの間隔が微妙に離れていることに気が付きました。
その理由を両社に聞くと「コロナ対策の観点から」との事でしたが、筆者(山本シンヤ)にはそれだけには到底思えず……。
スバルの責任者・本井雅人氏は、「GRさんとは結構情報共有していますが、それでも知らない事はあります。それは……当然の事でしょう」
一方、GRの責任者・藤原裕也氏は、「週一でスバルさんとは必ずミーティングをしていますが、進化については、むしろシンヤさんの方が詳しいと思いますよ」と、両社共に手の内はまだ明かせないようです。
そのおかげで、筆者(山本シンヤ)は各々のピットを何十回と往復するはめになりました(笑)。
なお、GRとスバルが合同でシェイクダウンを行った背景には、レースカーを作る上でお互いに知見が必要なことや、一緒にテストをすることでレースカーとしてレベルアップを共にしていくという狙いがあり、走らせるうえでの不具合や情報は共有しているといいます。
しかし、レース中は互いに競い合う関係にあるため「お互いに言わないこともある」ようで、そのあたりは競争と協調を大切にしているのでしょう。
そうしたこともふまえて、午前中のテストに向けた準備を見ていると、両社の違いが見られます。
GRのピットはメカニックとエンジニアの役割分担が明確で、各々の動きも無駄がなく的確です。
マシンも早いタイミングで暖気が行なわれ、いつでも走行が可能な状態となっています。
この辺りは10年以上に渡るニュル24時間の参戦で培ってきた経験や知見や、本番も見据えてルーキーレーシングも加わった体制になっているからのようです。
マシンは真っ白なボディでボンネットのみGRのモザイク(白・黒・赤)入り。
空力パーツはフロントスポイラーのみでリアウイングは未装着。ブレーキはアドヴィクス、サスペンションはKYB、エキゾーストはフジツボなのが確認できます。
それを見た上でスバルのピットに行くとちょっと様子が異なります。
GRの倍くらいのスタッフがいますが、8割くらいが「サーキットに来たのが初めて」というメンバーなので、作業は「やっていいのかな?」、「どうなのかな?」と探り探りの状態……。
ただ、エンジニアが自らの手を汚しながら一生懸命作業を行なっている姿は、クルマ屋の原点を見たような感じです。
マシンは真っ白なボディにサイドステップのみブルー。空力パーツ(フロントスポイラー/リアアンダースポイラー/リアウイング)はSTI。
ホイールはエンケイ、ブレーキはエンドレス製、サスペンションはオーリンズ、エキゾーストはフジツボなのが確認できます。
最初にコースインしたのはGR86です。チェックランと高負荷走行とテスト項目を行なっていました。
ホームストレートでは水平対向とは異なる独自のサウンドを奏でて通過していきます。スバルのエンジニアも「いい音しているなぁ」と感心する場面も。
少し時間を置いて、BRZもコースイン。チェックランから中負荷→高負荷走行を行なう予定だったものの、予想外のトラブルでピットイン。
燃料系のトラブルでしたが、この部分はGR/スバルの協調領域で、スバルのピットでGRのメカニックがBRZのトラブルシュートを行なう……という何とも不思議な光景を目の当たりにしました。
■午後になると両社の動きに差が出てきた? シェイクダウンの行方はどうなる?
午後のテスト走行は、スバルは午前中のドタバタは何だったの……と思うくらい順調な走行でした。
ロングランや全負荷走行をはじめとするテストメニューを全てこなした上で、スーパー耐久の公式テスト(2月23日)に向けた仕込みも行う余裕もあったと言います。
さらにエンジニアにも変化を感じ、各人の動きに無駄がなくなり、チームとしての一体感が増したように感じました。
本井氏にテスト終了後に話を聞くと、嬉しそうに答えてくれました。
「午前中は想定外のトラブル対応に時間を取られましたが、午後の走行は充実したテストができました。
ドライバーのフィードバックでマシンの状態は良くなった上に改善の方向も見えてきたので、『何をするか』が明確になりました。
メンバーの進化は、午前中のトラブルが功を奏して、業務の分担・役割が明確になった結果です」
ドライバーの1人である井口卓人選手は、感触は良かったようで次のようにコメントしています。
「結果的に言うと、短時間で大きな進化がありました。
走り出しは心配がないと言えば嘘になりますが、原因が見つかって以降は全く問題なく走れました。
まだ探り探りの部分はありますが、コミュニケーションを取りながら進めていけばいいチームになると思います。様々な部分で伸び代を感じたテストになったと思います」
一方、GRは午後も途中まで順調にテストを行なっていましたが、トランスミッショントラブルでピットイン。
修復を試みたものの、その場での修復はできないと言う判断でテストは終了。
ただ、今回確認しておきたかった超高負荷走行や強度確認などはこなすことができたそうです。
藤原氏にテスト後に話を聞くと、ちょっと悔しそうに答えてくれました。
「やはり『甘くない』ですね。シェイクダウンから驚くほど順調で、クルマのフィーリングを含めて評価が高かったのですが、なぜか直前(公式テスト)に課題が出てしまいます。
ただ、原因は推定できているので、どう対策するかですね。公式テストで『鍛えてくれ!』と言う準備はできたと思っていますが、まだまだクルマとしてもスポーツカーとしても成熟できていないので、それ以外の部分もレベルアップさせますよ」
GR86のドライバーの1人である蒲生尚弥選手はシェイクダウンの感想を次のように述べています。
「乗り味は市販のGR86とは結構違いますが、クルマが持つパッケージとしては悪くないと思いました。
かつて、ニュル24時間のマシンのシェイクダウンでは走る事さえままならない事もありましたが、今回は全く違和感なく走ることができました。
ミッショントラブルであまり走ることはできませんでしたが、原因が解っているので問題ないです」
※ ※ ※
このようにGR/スバル共に今回の合同テストで「得た事」と「課題」は多かったようです。
その後、短時間でフィードバックと本番用のカラーリングを施し、2月23日のスーパー耐久公式テストへと挑みます。
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