メルセデス・ベンツ「標準車」と「AMG」は何が違う?
ドイツの高級車メルセデス・ベンツの中でも、究極のハイパフォーマンスを追求したブランド「メルセデスAMG」。このメルセデスAMGは、標準車と比べてどのような違いがあるのだろうか?価格面だけでなく車の性能についても、どのような部分が違うのかスポットを当て紹介しよう。
だからAMGはスゴイ! マイスターのプレート付きエンジンは今でも「手組み」で作られていた
「メルセデス・ベンツ」と「AMG」は違う会社だった
現在ではメルセデス・ベンツのサブブランドとしてメルセデスAMGは位置づけられているが、メルセデス・ベンツとAMGはもともと異なる会社だった。まずはメルセデスAMGになる以前のAMGについて説明しておこう。
1967年、創立者である「ハンス・ヴェルナー・アウフレヒト(Hans-Werner Aufrecht)」と彼の兄「フリードリッヒ」、エンジニアの「エルハルト・メルヒャー(Erhard Melcher)」のわずか3人で創業し、アウフレヒトの生まれ故郷であるグローサスパッハ(Großaspach)のそれぞれの頭文字からAMG社となった。
その後、1978年には本社をグローサスパッハからアッファルターバッハ(Affalterbach)に移転。もともとは独立したチューナーだったAMG社は、その後2005年にメルセデス・ベンツの完全子会社となり、2014年からはメルセデス・ベンツファミリーに迎えられ、メルセデスAMGとしてメルセデス・ベンツのサブブランドとなった。
ところでこのAMGの読み方は「エーエムジー」とそのまま読むのが正しく、ドイツ本国では「アーエムゲー」。日本ではなぜか「アーマーゲー」とも呼ばれることがあり、筆者の理解に苦しむところである。
標準車をベースにチューニングされた「AMGモデル」
メルセデス・ベンツにはさまざまなグレードがあり、そのなかでもメルセデスAMGはハイパフォーマンスを発揮する最上級グレードとして位置付けられている。高級感を前面に打ち出す「メルセデス・マイバッハ」とは対極をなすのが「メルセデスAMG」だ。メルセデス・ベンツ標準車とメルセデスAMGの大きく違う部分についてまとめてみよう。
メルセデス・ベンツ標準車との違いで代表的な特徴のひとつとして、サーキットを走れるほどのハイパフォーマンス仕様であることが挙げられる。走行性能やデザインの面でも、大きく差があるメルセデスAMG。標準車をチューンしたハイスペックエンジンとスポット増しなどで強化した車体や専用の高性能A/T、サスペンションが組み込まれ、サーキット走行で高いパフォーマンスを発揮できるようにセッティングされている。標準車よりもハードな乗り味のクルマに仕立て上げられ、一味違った乗り心地やエンターテイメントを楽しめる事もAMGの大きな特徴だ。エンジン性能を受け止めるパーツとして、強化ブレーキシステムやAMGスポーツサスペンションも装備。
加えて日本ではAMGモデルをさらにチューンした「パフォーマンスパッケージ」、コンフォート性をアップした「エクスクルーシブパッケージ」、ドレスアップした「AMGカーボンパッケージ」が各モデルにオプションで用意されている。標準車のメーターとは異なり、AMGのロゴが入ったスピードメーターは300km/h以上刻まれているモデルもある(各モデルで異なる)。ただ、実際には各国の交通事情によりコンピュターでスピードリミッターがかかる仕組みになっている(例:250km/h)。
各AMGモデル専用のアルミホイール、エアロパーツや4本エキゾーストマフラーなどが装着されるのもAMGの特徴である(各モデルで異なる)。モータースポーツの栄光を受け継ぐAMG専用グリルや新デザインのフロント・リアエプロン(エアロパーツ)、パワードームをあしらったボンネット、スタイリッシュなデザインのLEDヘッドライなど、そのスタイルは力強さと洗練を極めている。
またAMGのエンブレムを付ける位置も決まっている。リアエンド左上にはAMGエンブレムを、リアエンド右上には各モデル表示のローマ字の後に数字2桁のエンブレムが付く(C63、SL63、GLC63 4MATICなど)。
AMGは創業以来、FR(フロントエンジン・リアドライブ)モデルだけを発売してきたが、2013年にW212型 Eクラスがマイナーチェンジしたことに伴い、初めて4WDのAMGモデルであるE63 AMG 4MATIC(セダン/ワゴン)を発表。最近ではFFベースの4WDであるA35 4MATIC/A45 S 4MATIC+、CLA35 4MATIC/CLA45 S 4MATIC+が発表され、フラッグシップモデルのSクラスにもS63 4MATIC+ロングが設定されるなど、各クラスに4WDモデルを積極的に展開している。
メルセデスAMG製エンジンの特徴
次にメルセデスAMGがメルセデス・ベンツ標準車と大きく違う特徴である独自のエンジン、テクノロジー、装備を具体的に説明しょう。
本質的にAMGのエンジン部品は、世界最高水準の精度を誇るメルセデス・ベンツが定めた許容範囲のさらに半分という驚くべき高精度を追求している。こうした超高精度の部品を熟練したマイスター達が細心の注意を払って手組みで組み上げる事で、AMGのエンジンは求められるパフォーマンスを確実に発揮している。つまりAMGに搭載されるエンジンはOne man-One engine(1人のマイスターがひとつのエンジンを)という哲学に従い、手作業で丹念に組み上げられている。エンジンの上に輝くマイスターのサインが刻まれたプレートは正にクラフトマンシップの証しだ。
オートメーションが当り前の現在、AMGは頑なにマイスター達による家内制手作業を守り続け、選ばれたマイスターだけがエンジンの組み付けを許される。各マイスターには、エンジンと工具類を載せる為のキャスター付きカートが与えられ、まず、何も取り付けられていないエンジンブロックを自分専用のカートに載せることからスタート。そして彼等はそれと共に工場内をコース順に従って進んでいき、各工程で必要なパーツを正しい順番で正しい位置に実にスムーズで正確に取り付けていく。同時にボルトの締め付け具合等の精密検査も重ねて行なう。
ハンドメイドとはいえ、各ポイントには最新鋭の工作機械が用意されている。天井から吊り下げられた工具が良い例と言える。例えばこの最新鋭の工作機械でボルトが仮に斜めに入った場合、わずかな圧力を感知して工作機械が即座に止まるシステムだ。AMGでは、いつ、誰が、どの部分を作業して何をしたか全て工具と連動で記録される。もちろん締め付けトルクなどの数値データも記録され、各マイスターが責任を持って組み立てる。つまり性能云々よりも信頼性が第一主義である。
通常のメルセデス・ベンツ標準車はオートメーションで製品だけがラインに載せられてロボットで組み上げて移動するが、AMGの場合は製品と共に職人も移動する。こうして組み上げられたエンジンのヘッドカバーには最後に担当のマイスターの名前が彫り込まれたプレートが貼り付けられる。このようなことがOne man – One engine(ワン・マン、ワン・エンジン)と言われる所以であり、AMG社では1人の職人が一基のエンジンを最初から最後まで責任を持って組み上げているのだ。
また耐久性や信頼性についてもAMGは特別だ。エンジンテストは最高6700rpm、連続2300時間、温度は970℃の中で最先端の試験機を用いて行なわれる。さらに過酷な実走行テストも行なわれ、実際の使用条件を遥かに超えた各種テストに耐える事で、AMGの揺るぎない信頼性を生み出しているといえる。日本市場では35系、43系、45系、63系、65系、GT系の各エンジンモデルがあり、そのエンジン出力は306馬力から639馬力まで存在。
尚、M256直6ターボエンジン(53系モデル)、M276 V6ツインターボエンジン(43系モデル)、M260直4ターボエンジン(35系モデル)には、このマイスターのサインが刻まれたプレートは貼付されていない。その理由はメルセデス・ベンツのライン製造エンジンであるからだ。AMG党からすれば、議論の的となっている。
AMG専用のテクノロジーと装備の主な特徴
●AMG 7速スピードシフトDCT ※35系モデルに搭載デュアルクラッチA/TをメルセデスAMGに最適化し素早いシフトチェンジを実現。ダウンシフト時のブリッピング機能等によって、ダイナミックな走りを実現。
●AMG 8速スピードシフトDCT ※45系モデルに搭載8速化によってシフトショックの少ない滑らかな変速を実現。ワイドなギア比幅が燃費向上にも貢献。さらに、サーキット走行のための俊敏性を実現するRACEモードも搭載。
●AMGスピードシフトTCT ※43、53系モデルに搭載多くの革新技術を採用したメルセデス独自の電子制御9速A/T、9G-TRONICをメルセデスAMG用に最適化し、シフトタイムを大幅に短縮。ダウンシフト時のブリッピング機能等によって、ダイナミックな走りを実現。
●AMG 9速スピードシフトMCT(マルチ・クラッチ・テクノロジー) ※63系モデルに搭載トルクコンバーターの代わりに湿式多板クラッチを使用する9速の高性能A/T。俊敏でスムーズなシフトチェンジやブリッピング機能、瞬時のマルチダウンシフトで、ダイナミックな走りが楽しめる。
●AMGダイナミックセレクト(設定はセンターコンソールのスイッチにて操作)Slippery(滑りやすい)、 Comfort、 Sport、Sport+、RACE、Individualの走行モードに合わせて、ギアシフトプログラム、エンジン特性、サスペンション、ステアリングなどが連動して変化する。
●AMGパラメーターステアリングAMG専用にチューニングされた車速感応型の電動パワーステアリング。ワインディングロードからサーキットまで各状況に応じた適切なアシストにより、的確なステアリング操作が可能だ。
●AMG RIDE CONTROL+エアサスペンションAIR BODY CONTROLメルセデス・ベンツの「AIR BODY CONTROLサスペンション」をベースに、メルセデスAMGが開発。非常に優れたトラクションとコーナ-での路面を吸い付くような安定性、限界付近でもコントロールしやすい挙動を実現し、正確なハンドリングを可能とする。
●AMGドライブコントロールスイッチ左の2つのボタンにはサスペンションセッティング切り替えなどのAMGメニューを自由に割り当てることができる。右にはAMGダイナミックセレクトのモードが選択できるロータリースイッチをレイアウト。
●本革ナッパレザー(インテリア)シートは高級本革ナッパレザーが標準装備される。ただしS63モデルはフルレザー仕様(DINAMICAルーフライナー付き)でdesignoブラックアッシュウッドインテリアトリム、ステアリングは本革巻き。特に前席はAMG専用スポーツシートで、63モデルにはAMGエンボス付き。前後席にシートヒーターを標準装備する。
●AMG強化ブレーキシステム大径のドリルドベンチレーテッドディスクにフロントは4ピストン(43/45/53モデル)と6ピストン(63/65モデル)の固定キャリパー、リアには1ピストンのフローティングキャリパーを採用したメルセデスAMG専用のブレーキシステム。特徴ある赤・黄色のキャリパーにはAMGロゴを備えている。
●AMGカーボンパッケージ ※63モデルにパッケージオプション軽量で耐久性のあるカーボンファイバーのパーツが装着される。フロントスポイラーリップ、フロントフェンダーアクセント、サイドスカートインサート、ドアミラー、トランクリッドスポイラーリップ、リアディフュザー、インテリアトリムなど。
車両価格について
最後に気になる標準車モデルとの価格差であるが、特に最近のメルセデスAMGは4MATICに特化し、加えてAMG専用のエンジン、テクノロジー、装備品を採用しており、当然ながらそのぶん高価格となっている。
例えばCクラスの標準車モデルで高額なC350eアバンギャルドセダンが686万円に対し、AMG C43 4MATICセダンは、360度カメラシステムやワイヤレスチャージングを新標準装備し995万円と、標準モデルよりも309万円高額になっている。
まずエンジンを比較するとメルセデスAMGはハイパワーエンジンを搭載している。C350eアバンギャルド=DOHC直列4気筒ターボエンジン、1991cc、211ps/35.7kgf・m。AMG C43 4MATIC=DOHC V型6気筒ツインターボエンジン、2996cc、390ps/53.0kgf・m。
次にAMG専用テクノロジーではAMG 4MATICの4輪駆動、AMG RIDO CONTOROLスポーツサスペンション、A/TはAMGスピードシフトTCTを採用。ステアリング機構はAMGパラメーターステアリング、AMGエキゾーストシステムを採用。内装では本革ナッパレザーのスポーツシート、レザーARTICOダッシュボード、AMGパフォーマンスステアリング、ヘッドアップディスプレイ等が装備されている(各詳細は先述のとおりである)。
しかしAMGエンジンと同型式エンジンを搭載した標準車モデルもあり、比較してみる必要がある。例えば、EクラスのAMG E 53 4MATIC+セダンに搭載される3L DOHC直列6気筒ターボエンジンは、M256の型式(53系モデル)で、435ps/53.0kgf・mを発揮する。しかも同型式エンジンが標準車モデルのE450 4MATICエクスクルーシブセダンにも搭載されており、367ps/51.0kgf・mを発揮。先述のとおりライン製造した同型式エンジンをこのように両車に搭載しているとは言え、もちろん、このAMG E53 4MATIC+セダンの馬力やトルクは、標準モデルよりもハイパワーを発揮する。
Eクラスの標準車モデル、E450 4MATICエクスクルーシブセダンは1144万円に対し、AMG E53 4MATIC+セダンは1259万円で、115万円高額だ。この差額に収まっている主な理由は、AMG 53系エンジンがライン製造され、加えて同じ4MATICであり、AMG専用装備もかなりE450 4MATICイクスクルーシブセダンにも装備されているからだ。
内装ではAMGスポーツシート、AMGパフォーマンスステアリングが装備され、ほかのAMG専用装備は標準モデルのE450 4MATICエクスクルーシブセダンにも装備されている。
またAMG専用テクノロジーとしては、AMG RIDE CONTROL+エアサスペンション(AIR BODY CONTROL)、A/TはAMGスピードシフトTCT、ステアリング機構はAMGパラメーターステアリング、AMGダイナミックセレクトの採用に留まることも、115万円の価格差に収まっている理由といえる。
ちなみに標準車とAMGモデルとで車両価格に一番差があるのはAクラスで、ベースグレードのA180が367万円に対しメルセデスAMG A45 S 4MATIC+は807万円と、2倍以上もの価格差となっている。
50種以上のAMGモデルが揃う
今やメルセデスAMGの車種も多様化し、メルセデス・ベンツの標準車の新型販売と同時にその最上級モデルとしての選択が可能だ。日本国内におけるAMGモデルのラインナップは50種以上、エンジンの出力は306馬力から639馬力まである。車種は「ドライビング・パフォーマンス」をキーワードにセダン、クーペ、ステーションワゴン、カブリオレ、ロードスター、Gクラス、SUVのほか、メルセデスAMGが独自開発したメルセデスAMG GTもあり、搭載されるエンジンに応じて35、43、45、53、63、65、GTなど幅広いモデルを揃えている。
またAMG専用テクノロジーや装備品も装着し、厳選された高級本革ナッパレザーで内装を丹念に仕立て上げ、スポーツマインドを熱く駆り立てるカーボンファイバーインテリアトリムを採用し、高品質とアグレッシブな個性を引き出している。繰り返しになるが、特筆は創業以来One man-One engine(1人のマイスターがひとつのエンジンを)という哲学に従い、手作業で丹念に正確に組み上げ、1人の職人が一基のエンジンを最初から最後まで責任を持って組み上げている事である。従ってメルセデスAMGモデルはメルセデス・ベンツのサブブラントとはいえ、標準車モデルとは異なり、最上級グレードとして位置付けられている。
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