輸入車や希少車を購入するには勇気が必要という人もいるだろう。今回紹介するほそでィーさんもその一人だ。20代にして日本ではマイナーメーカー、しかも故障も多いと聞くTVRを購入したのだから、相当な勇気が必要だったはずだ。キミーラとの出会いから勇気を得たキッカケなどを聞いてみた。
オーナー:ほそでィーさん(25歳)
車両:TVR キミーラ500
年式:1997年式
在住:静岡県
走行距離:10万7000km(取材時)
フェアレディZ(Z32)を150万円かけてレストア。26歳のオーナーが目指すものとは?
〇:TVRにしかない雰囲気と存在そのもの
×:自動車としての完成度や信頼性
■友人の993カレラ購入に感化されて
もともとレースゲームのグランツーリスモなどで知ったTVRという自動車メーカー。そのころから興味はあったが、キミーラという車種を知り、好きになったのは英国の自動車番組トップ・ギアだったそうだ。
「EV車を自作する企画でキミーラがベース車として登場していたんです。キミーラはフレーム部分しか使用していないので、でき上がったEV車は原型もないのですが、そのときキミーラのデザインがカッコイイなって思ったんです。TVRらしい奇抜な印象が若干ありつつも、他のTVR車に比べて普通なデザインが気に入りました」
こうしてキミーラへの憧れを持ったほそでィーさんだったが、最初から狙っていたわけではなかった。
「3代目Y33シーマや英国生産の7代目EP3シビックタイプRなどに乗ってきました。やっぱりTVRは故障が多いと聞くし、社会人になっても現実的な選択ではないと思っていたんです。でも友人が993カレラを買ったのを見て、『彼がネオクラの輸入車を購入したなら、自分も年式の近いTVRがイケるはず!』と思って感化されてしまいました」
■現在の個体との出会い
こうしてキミーラを探し始めたほそでィーさん。今乗っている個体は探して2台目に見つけたそうだ。最初にチェックした個体はブリデッシュグリーンでローバー製4L V8を搭載する「キミーラ400」。実際に見てみると記録簿がなかったり、イモビライザーカットがされていなかったり(誤作動が多いTVRでは定番らしい)、いろいろと不安になる部分が多く断念。しかし、ここで実際に試乗をしたことで、よりキミーラ購入への思いが強くなった。
「実際に試乗させてもらって雰囲気や挙動が異次元で『スゲェ、クルマだ!』って思いました。パイプフレームとFRP外装の軽量な車体に、大排気量のV8エンジンを搭載…こんなパッケージは今まで味わったことなかったですからね。もうキミーラをいつか買うしかないと思いました」
そんなキミーラ初体験から2カ月後、知人の店舗にキミーラが売りに出ている情報を別の知人経由でキャッチ。今度はローバー製5LV8エンジンを搭載するキミーラ500であった。当時、10万1000kmとTVRとしては過走行ぎみであったが、記録簿がずっと付いていて、TVRで有名なショップで整備されていたようで出所が確かな個体。ショップと相談して金額や保険料なども何とかなる範囲であることがわかった。そして何より「ここで買わないと一生買えない!」と思い購入に至ったそうだ。
■購入後はトラブルにもめげず長距離ドライブへ
こうしてキミーラ購入を決めたほそでィーさん。納車してから…ではなく、納車前からトラブルは多かったそうだ。まず納車前整備の際にタペットカバーから水漏れが。パッキンを注文したら別のパッキンが届いたり、エアコンが効かなかったり、ライトが付かなかったりと問題が多発。納車してからも2週間でイグニッションコイル関連のトラブルで不動になったりとトラブルエピソードは尽きない。
しかし、このキミーラで富山への旅行など遠出も敢行したそうだから、その勇気には恐れ入る。購入後はTVRクラブジャパンに入会。世代を超えたつながりがあり、先輩オーナーたちが色々と情報提供をしてくれるため、ありがたいコミュニティとなっているそうだ。なお、小物入れが少ないキミーラだが、助手席にある小物入れはTVRクラブジャパンの会員が作ったアイテムだ。
トラブルに悩まされることは多いが、「このクルマを買えただけでもうれしい」とほそでィーさんは語る。このキミーラは乗れる限り乗っていきたいとのこと。富山まで自走で往復したほそでィーさんなら、まだまだ距離を伸ばしてくれるはずだ。
〈文と写真=西川昇吾〉
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