10月14~15日、大分県日田市のオートポリスでスーパーGT第7戦が開催されているが、このレースウイークのなかで、スーパーGTをプロモートするGTアソシエイションは、9月17日にスポーツランドSUGOで行われた第6戦SUGOの決勝レースで発生したアクシデントに関しての検証の結果を説明し、また10月15日に行われたGTA定例記者会見では、坂東正明代表が2022年から発生する大きなアクシデントについて説明した。
9月17日に行われた第6戦SUGOでは、38周目に入ろうかという最終コーナー立ち上がりで、ピットインしようとしていたGT300クラスのリアライズ日産メカニックチャレンジ GT-RとSTANLEY NSX-GTが接触。スピンに陥り、ガードレールに激しくクラッシュ。STANLEY NSX-GTをドライブしていた山本尚貴は精密検査の結果、外傷性環軸椎亜脱臼、および中心性脊髄損傷と診断され、今季のスーパーGT、スーパーフォーミュラを欠場することになった。
スーパーGT第7戦オートポリスのZFアワードは第6戦から復活を遂げたSTANLEY NSX-GTが受賞
今シーズンの第3戦、第6戦、さらに言えば2022年第2戦富士と、スーパーGTでは大きなアクシデントが相次いでおり、メディア、またソーシャルメディア内でもさまざまな意見が飛び交った。ただ、中継映像だけでは観る側の受け取り方もさまざまで、10月14日、GTAはメディアに向け、アクシデントの検証結果を服部尚貴レースディレクターのカコミ取材というかたちで行った。
服部レースディレクターは、第6戦SUGOでのアクシデントの検証について、リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rが最終コーナーから上り坂のストレートに向かったところでブレーキを踏み減速状態にあり、山本は緊急危険回避としてピットロードギリギリのイン側のラインを通らざるを得なかったことを説明した。
「昨年から(ドライバーブリーフィングで)ピットイン時にウインカーを出すようにずっと言ってきていましたが、今回は残念ながらそこがなかった。自分としてはそれさえ出してくれていれば、今回の事故は起きなかったと思っています」と検証についての見解を語った。
「もう少しみんなが余裕をもって走ってほしいですし、まわりをちゃんと見て、まわりをリスペクトして走らなければならないと思っています」と服部レースディレクター。なお、このアクシデントの際にSTANLEY NSX-GTのタイヤがホイールごと飛散しており、コース内の周回路まで飛んでいたという。GTカーでタイヤが飛散することは珍しいが、「今すぐは難しいですが、今後(GTA)テクニカルグループと話し、将来にはなりますができるだけ早く安全対策を行えるようにしていきたい」と語った。
すでに10月14日に開幕している第7戦から、ピットイン時等でのウインカーの活用についてはドライバーに徹底するようGTAとして動きはじめているほか、坂東代表によれば、スポーツランドSUGOのピットレーン入口について、芝生エリアを舗装にすることでホワイトラインを伸ばすような改良を要請したと明かしている。
このアクシデントについては、現在のGT500車両のコーナリングスピードがあまりに高すぎるという指摘もあるが、GTAレース事業部の沢目拓事業統括部長は「安全性第一で、この事故が起きる前にもスポーツ部会では議論が起きていましたが、今季はその“議論のスピード”が上がった」という。また服部レースディレクターは、
「スーパーGTのスピードが高いからあのアクシデントが起きたのではなく、あのスピード差がつけらえるとああいう事故が起きてしまう。GT500のスピードはあまりに速すぎるところはありますが、スピードをどうコントロールしていくかは次の課題だと思います」
さらに今後の安全対策について、沢目統括部長は「トップスピードというより、コーナリングスピードの抑制に対し、GTAのなかにスポーツ部会、テクニカル部会というのがあり、スポーティングレギュレーションと車両規則を定めていきますが、この組織のなかで安全性第一で何ができるのかを議論している途中です」と語った。
「さらに、スポーツ部会の下に『タイヤワーキンググループ』というグループを新しく作りました。スーパーGTは年々スピードが上がっていますが、これをいかにコーナリングスピードを抑える方向に作っていき、安全性を高めていけるか、タイヤメーカーさんを含めて議論しているところです」と沢目統括部長は語った。
「非常に難しい問題で、すぐにできること、開発が必要なもの、さらに中長期的に見なければいけないことの課題をしっかりワーキングの中で位置づけをもち、委員と議論、会話をしています」
安全性向上に向け、GTアソシエイションのなかでも対応がスタートしていることが伝わってくる。GTA坂東代表は、15日の定例記者会見のなかで「GT500とGT300と言う車速が違う異種格闘技戦がスーパーGTであり、そのレースをしましょう、それを極めようとやっているプロの世界を我々が作ろうと思っている」と、あくまでスーパーGTの魅力は、GT500とGT300の混走を前提にしていることを改めてアピールした。
「みんなのクオリティを高めなければならないと思っているし、今後に向けては環境も考えなければならない。その中でクオリティを高める。それをやりながら是正する方法論はあると思う。その方向でやっていかないと、先の道はないと思う。それをやって、初めて2030年に音の出せるレースをやれると思っている」
なお坂東代表は将来に向けて、タイヤメーカー側からの提案もあり、幅広いコンディションに対応できるワイドレンジの特性のタイヤを採用し、再生素材を40パーセント配合したエコタイヤを導入することでコーナリングスピードを抑制するプランをタイヤメーカーと進めていることを明らかにした。
車両側、そしてドライバー側、チーム側、タイヤ側、さらに運営のレギュレーション面など、プロモーターとしてさまざまな角度でレースの魅力と安全性のクオリティアップを目指している。多くの要素が絡み合う複雑さが魅力のスーパーGTだけに解決策を探る作業も複雑になるはずだが、主催者であるサーキット側との協力体制を含めて、クオリティアップがさらに加速することを願いたい。
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