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イタリア「Beta」2ストローク・エンデューロモデル3機種に試乗 排気量による違いとそれぞれのモデルの狙いを考察

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イタリア「Beta」2ストローク・エンデューロモデル3機種に試乗 排気量による違いとそれぞれのモデルの狙いを考察

■狙いを定めたら、研ぎ澄まされた「プリミティブ」さ。

 イタリアBETA社が送る2022年モデルのエンデューロマシンシリーズ、今回はBETA RR 2Tシリーズから300,250、200を一気に紹介します。今回は乗れませんでしたが、BETAはこのラインナップに125を加えてシリーズ展開をしています。その特徴はエンデューロレースで求められる扱いやすいエンジン特性、素直な操縦性。このバランスを突き詰めているのが特徴です。まとめると「速いのに乗りやすい方向性」と言えるでしょう。ただし、経験者を対象とした味付けであることは間違いありません。

オフロードバイクメーカー「Beta」をご存じですか?

 BETAの2ストロークモデルの特徴として、250と300、125と200は共通のシャーシとなっています。つまり、250と300はのり味としてはエンジンの違いとなります。250?以下のクラス、それ以上のクラスというエントリーするクラスの違いもあるのですが、250?以上のクラスはかつては500?の2ストマシンで戦われた時代もありました。が、あまりにもエンジンパワーとトルクが大きすぎて、扱い難い。そこで350?を採用することで、250より断然パワフルかつ扱いやすいパッケージとなり、それが今では300で充分な性能と250と代わらない軽さを手に入れたコトで、過激さを増すエンデューロのセクションでもライダーを疲れさせずに低速トルクを活かした走りができる、というものなのです。

 これは同様に125と200にも言えて、125ながらエンデューロチューンのエンジンが持つワイドレンジなトルク特性は難所を掻かずに走り抜ける才能を持ち合わせていますが、そこは排気量が限られる分、どうしても高回転を多様するコトになるわけです。その分、200はその足りない低速トルクを補いつつ、250並の走りをするというアプローチが成されているのはココまでの説明で容易に想像がつくことでしょう。

 レースユーザー以外、イザ欲しいとなったら排気量の選択がマニアックなため、悩む部分もあるのでは。そして価格も気になるところ。その気になる税込み車両価格は……!

RR 2T 300 119万9000円RR 2T 250 117万7000円RR 2T 200 115万5000円RR 2T 125 110万円

 そうなんです。10万円以内に収まる幅でしかない。排気量別でコストを抑えるワケでは無く、高性能な足回りや車体回りはどのモデルも共通ですし、排気量が違っても、高性能エンジンの開発、製造に関わるコストが大きく差があるわけではありません。つまり、スキルレベルやのり味の好みで選んで間違いなし。もちろん、レースユーザーなら目指すクラスに向け得た排気量のマシンにフォーカスする。そんな世界に向けたバイクなのです。

 BETAのRR 2Tシリーズ2022年モデルに施された共通のアップデイトは、サスペンションセッティング変更と、作動性の向上を狙った摺動抵抗の低減策がほどこされています。エンジンは300が新型に。全モデル共通としては、分離給油を採用し燃料供給にキャブレターを採用していること。またスターターモーターを採用したことで、難所でスタック、バイクを支えるだけで精一杯、という場面でもイージースタートが可能になっています。もはやエンデューロマシンではこれが当たり前ですが。

 では早速300,250、200の試乗インプレッションをお届けします。

■BETA RR 2T 300

 RR 2T 300最大のニュースは、2022年モデルではエンジンを刷新。新型エンジンを投入したことです。2021年モデルでは72.0×72.0mmというスクエアなボア×ストロークだったのに対し、新型では73.0mm×69.9mmへとショートストローク化。もちろん燃焼室形状も最適化され、パワーバルブも新設計に。また圧縮比もわずかに低められ11.9:1→11.6:1へ。排気量は293.1?→292.6?へとわずかに減少していますが事実上差はナシ。排気系ではサイレンサーもトップエンドパワーを稼ぐ形状を採用したことで扱いやすさとパワーの両立を狙ったのがわかります。

 BETAの2TモデルはKTMのように電子制御インジェクションではなく、キャブレターを採用しています。これは、BETAが狙うエンジン特性にはキャブレターが生み出す特性があってこそ、という結果のようで走ると「なるほど!」と唸ることになりました。

 いかんせんタップリ雨が降ったあとのコースだけにあちこち水たまり、泥沼、ツルテカな状況のマウンテンルートに走りだします。車体はスリム。ストリートを走るトレールバイクのようにシートが低めでハンドルバーがやや高め、というものではなく、ハンドルバーへは高めのシート位置から腕を斜め下方向にアクセスでき、ダートでも自然と抑えが効くもの。同時に、ステップに体重が掛かりやすくコントロールがしやすい! そう、低いシートは足付きには有利でも、体重がシートの中心にかかるため、バイクのトラクションを掴み難いデメリットがあります。しかし、さすがレーサー、それがないのです!

 さすが300cc近くあると低中速トルクが厚く、低いエンジン回転と1速高めのギアを選択して滑りやすい(というか、ニュルニュルと地面のほうが動く)路面を捉え加速していきます。それでも細身の車体をホールドしながらハンドルバーを向かう方向に保持しないとドロの重さに負けてバイクがあらぬ方向に向かいはじめるコンディションだけに、車体の剛性バランスが適度で、柔軟な吸収性をもって走れることをしっかりと確認できました。

 サスペンションはちょっとしたジャンプでも余裕しゃくしゃく。着地でもグリップへのキックバックはわずか。作動性の良さを確認しました。細かなバンプでの動きも滑らかさを感じました。このコンディションゆえ高速領域でのスタビリティーは未確認ですが、兎に角エンジンは扱いやすく、ストレートで開けても後輪が空転するだけで前に行かない印象はなく、しっかり増速しその時の車体の安定感もなかなか。

 ブレーキに関してはほぼリア主体に使うようなコンディションながら、ここぞ、と言う場面でフロントを握り込んでもドロとギャップだらけのコースをしっかり捉えるフロントフォークの作動性と剛性感がライダーに走る勇気を与えてくれるというもの。

 さすが、難所だらけのエンデューロを征するために生まれた300だ、と感心したのです。

■RR 2T 250

 RR 2T 300のイメージのまま乗り換えたRR 2T 250。しかしキッチリエンジンのキャラは異なりました。車体の特性は300同様。ドロの海でもしっかりとした走りを見せてくれます。エンジン特性は300では低めの回転から高回転へと至るパワー特性がリニアでまるで4ストロークのように綺麗につながるのに対し、250は2ストエンジンらしいパワーバンドに入るや一気呵成にパワーとトルクが盛り上がるタイプ。

 これも激戦のレースでライバルより頭一つ抜け出す手法とも言えるワケで、そのパワーを余すこと無く路面に伝えることこそ、ライダーの使命だ、と言われているようで、まずはテクニック、そしてフィジカルを整えてから対峙せよ、とのメッセージがエンジンから届きます。

 それでも、アクセルの開け方に慣れてくると、その爆発的に盛り上がるゾーンを少しマイルドに入手できるようになり、250が持つ特性を使いマディーコンディション(ぬかるんだ路面状況)の中、コーナリングなどでテールをクイックに回すことも簡単。2022モデルで採用されたダイヤフラムスプリング式クラッチの扱いやすさが光ります。ドンとつながるというより少しタメのある感じでピタリとつながる印象で、半クラッチで回転をあげ、後輪をパワースライドさせ、その後、クラッチレバーから指を離した瞬間がマイルドにつながってくれる印象だったのです。

 走るほど世界で調達したノウハウが各部から感じられるRR 2T 250。そう考えると、世界の頂上向けエンデューロコンペティションバイクが117万7000円ってどんだけリーズナブルなんだろう! と思った次第です。

■RR 2T 200

 さすがに125と車体を共有することで300,250と比較すると各段にコンパクトに感じる車体が特徴のRR 2T 200。跨がるだけでこのバイクが手の内に入るような気持ちになります。オフロードでコントロールするために理想的なポジション、それでいて岩、丸太などのセクションを通過するため軽くフロントアップができるよう、低すぎない位置にハンドルバーが据えられているのも、BETA RR 2T シリーズに共通したもの(これは4ストロークのRR 4T 350も同様です)。エクストリーム化するエンデューロに対応したものだと言えるでしょう。

 乗り出し、200は250にも増して高回転を好むエンジン特性であることがすぐに解りました。軽い車体、そこにパインと回りたがる特性のエンジンを載せたことで、250クラスで排気量の大きなバイクをカモろう、という意図も透けて見える他、125では足りないし、250では大きすぎるというホビーライダーにも高い性能のマシンを与えてくれることになるのです。つまりこの日のコンディション(マディーコンディション)では上級者向け。同じ路面状況であればRR 2T 300のほうが乗りやすいと感じたほどでした。

 それでもコンパクトな車体は300,250同様、しなやかでもありながら、200?のエンジンがパワーバンドに入る前と入る瞬間以降のパワー特性のグラデーションは250以上に明解。むしろ、低いギアでパワーバンドが入れ替わるゾーンを避けパワーゾーンだけを使いコンパクトな車体を押さえ込みモトクロスマシンのような走り方とラインでドカンと走るほうがこの日のコンディションでは妥当でした。

 時間とともにドロがこねられどんどん走行抵抗が増える中、限られた低中速のパワーでは押し戻されるように減速してしまいます。ならば、と開けるとコンパクトな車体と炸裂するパワーで思わぬダンスを踊ることに。

 この日RR 2Tシリーズに乗って実感したのは、場面によって乗りやすい、難しいいという明確なメッセージをバイクが伝えてくれたことです。

 なるほど、セローやCRF250Lを選ぶような感覚で排気量選択をすると狙いが外れることがあるかも知れません。モデルごとに持っているキャラクター、軽さ、コンパクトさと、それに伴うメリット、デメリットも含め、ご自身の走り方と上手くマッチングするBETA選びは、ショップでのアドバイスを抜きには考えられないかも、と思った次第です。とはいえ、難しいバイクだ、といっているのではありません。ハイエンドモデルをより楽しむために、それが近道だと思うのです。

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