2017年2月15日、トヨタはプリウスPHVをフルモデルチェンジし、トヨタ店、トヨペット店、トヨタカローラ店、ネッツ店の全チャンネルを通じて発売した。新型プリウスPHVは2016年秋に発売予定とされていたが、約3ヶ月遅れでの発売に漕ぎ着けた。
■ハイブリッドの次は何か?
予定より発売が遅れた理由は、バッテリーの生産体制、カーボン製リヤドアの生産体制など諸説あるが、その一方で2016年1月にはアメリカ市場でプリウス・プライムの名称で発売を開始しているので、アメリカ市場を最重視したのではないかとも推測される。
新型プリウスPHVの詳細解説と、クローズドコースでのプロトタイプ試乗レポートは2016年8月31日に既報の通りで、変更はない。
新型プリウスPHVは、先代モデルのフルモデルチェンジというだけではなく、改めてPHVを「次世代環境車の柱」として再定義し、最新のPHVモデルらしく商品力を高めている。さらに、どちらかといえば手探りのモデルであった従来型プリウスPHVとは異なり、ハイブリッド車のプリウスの後継となるグローバルモデルというポジショニングとなっている。発表会の冒頭で示された「ハイブリッドの次は何か?」という問いの答えは「PHV」ということだ。
ハイブリッド車のプリウスは日本市場ではエコカーの先駆車であり、燃費を訴求する頂点のモデルとしてブランドを築き上げているが、一方でアメリカにおけるZEV規制のゼロエミッション適合車から除外され、その将来像は不透明になっている。だからトヨタにとっての次世代のエコカーを作り出すことが喫緊の課題であり、PHVは次世代の環境戦略における基幹車種としているわけだ。
■グレードと燃費
新型プリウスPHVのグレード展開は、ベースモデルのS、ミドルグレードのA、最上級グレードのAプレミアムの3機種で、Sにはナビパッケージ、Aにはレザーパッケージが設定されている。
ドライバー支援システム「トヨタ セーフティセンスP」(ミリ波レーダー+単眼カメラ)は全車標準装備とし、Sグレード以外は11.6インチ・ディスプレイを持つT-Connect SDナビゲーションシステム+常時接続サービスDCMを標準装備(DCMは3年間無料)としている。
プリウスPHVは従来型とは異なり、プリウスをベースとしながらも専用のデザインを採用。プリウスよりオーバーハングを長くし、結果的に全長が105mm伸ばされ、フロント、リヤともに専用デザインとなっている。
プラグインハイブリッドの新型プリウスPHVは、総電力量8.8kWh(三菱のアウトランダーPHEVのバッテリー電力容量は12kWh)のリチウムイオン電池を採用。これは従来型の2倍となる電力量で、EVによるJC08モード走行距離は68.2km、EV最高速度は135km/h、ハイブリッド走行時のJC08モード燃費は37.2km/Lとなっている。
なお駆動用のリチウムイオン・バッテリーは、標準のプリウスはリヤシート下に配置しているが、PHVモデルはリヤ・ラゲッジスペース下側に搭載しているため、ラゲッジスペースの床面が上がり、やや狭くなっている。
また主にドイツ車が採用しているパラレル式PHVの加速力に対抗するため、THS-IIの機構を改良し、急加速時には発電用ジェネレーターも駆動用モーターとして使用する2モーター駆動にしている。2モーターの最高出力は75kWとなり、エンジンを含めたシステム最高出力は122psとなっている。
なお充電システムは、Sは100V/200V充電のみで、それ以上のグレードは家庭用100V、200V、CHAdeMO急速充電に対応。(Aグレード以上はCHAdeMO急速充電のレス・オプションも設定している)充電時間は、100Vで14時間、200Vで2時間20分間、急速充電は80%充電で20分間だ。
さらにSグレード限定だが28万800円のオプション設定となるソーラー充電システムも追加できる。ルーフに装着されるソーラー発電は最大180Wで、専用のニッケル水素バッテリー+ECUとDC-DCコンバーターを装備し、平均2.9km/日分の充電ができる。
■車両価格と新技術
プリウスPHVは、その他に冬期に能力低下を抑えるバッテリーヒーター、カーボン製の骨格を持つ軽量なリヤドアや、効率の高いヒートポンプ式エアコン、アダプティブハイビームシステムを搭載したフルLED式ヘッドランプなど新たな技術を採用している。
アダプティブハイビームシステムは、先行車のテールランプや対向車のヘッドランプで車両を認識し、照射範囲を左右16個のLEDで自動制御する。またT-Connect、常時ネット接続のDCMは、今後のトヨタがコネクテッドカー(インターネット常時接続)を積極的に採用する方針であることを示している。
プリウスPHVの価格は、標準のプリウスと比べ約70万円高となり、クリーンエネルギー車補助金を考慮しても高めとなる。そのため、月間販売目標は2500台と控えめだ。課題は販売店が既存のハイブリッド・プリウスとプリウスPHVを併売するにあたり、どのような施策を進めるのかにかかっている。
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