フォルクスワーゲンが2017年にデビューさせたアルテオンは、流麗なラインをまとった5ドアハッチバックのグランツーリスモだ。このアルテオンのマイナーチェンジモデルが2021年7月13日に発表された。
また同時に追加設定されたスポーティなワゴンモデル、シューティングブレークも公開された。
新型も好評らしいけど…… なぜVWゴルフはそんなに高く評価されるのか?
今回はアルテオンシューティングブレークに加え、2021年4月6日にマイナーチェンジを受けたミッドサイズクラスのパサートの試乗を行った!
文/清水草一、写真/池之平昌信
【画像ギャラリー】2021年にマイナーチェンジを受けたフォルクスワーゲン アルテオン&パサートを見る!!
■フォルクスワーゲンアルテオンにクールなシューティングブレークが追加された!
フォルクスワーゲン アルテオン シューティングブレーク。質実剛健なVWにあって程よい色気を持つ車だ
フォルクスワーゲンのアルテオンというクルマは、とにかくレアだ。フォルクスワーゲンブランドは、基本的に実用車のイメージなので、アルテオンのような高級でスタイリッシュな5ドアハッチバックは、選択肢から外れやすい。そういうクルマが欲しい人は、アウディに流れるのが自然だろう。
その分と言うかなんと言うか、アルテオンは、カーマニア的には「レア度が高くてお買い得」という意味で、注目のクルマだった。街でアルテオンを見かけると、珍しいこともあって、つい凝視してしまう。アルテオンを選ぶなんてシブイ! って感じで。個人的には、前身に当たるパサートCC時代からそうでした。
アルテオンのライバル(?)は、アウディA5スポーツバックだ。そりゃアウディのほうが高級ブランドとしてわかりやすいけれど、アルテオンはA5スポーツバックよりお安いうえにデカくてパワーもあるし、デザインだってカッコいい! やっぱりシブい選択だよネ!
そのアルテオンがマイナーチェンジを受けて、これまでの5ドアハッチバックに加えて、シューティングブレークが登場した。
シューティングブレークと聞くと、メルセデスのソレのようなツルンとした曲面フォルムをつい思い浮かべるが、アルテオンシューティングブレークは、スポーティなステーションワゴンというくらいのところで、あんなにツルンとはしていない。これはステーションワゴンと5ドアハッチバックの中間ですかね?
大径タイヤが非常にマッチョで贅沢な雰囲気を醸し出す
で、かなりカッコいい。適度にスタイリッシュでアクティブで、フォルクスワーゲンというブランドにとって、ちょうどいい感じなのだ。サイドから見ると、大径タイヤ(245/35R20)がグッと大地を踏ん張っていて、非常にマッチョでゼイタク。「この謎のカッコいいワゴンは何?」という感じだ。
フォルクスワーゲンのワゴンと言えば、ゴルフワゴンやパサートワゴンだが、どっちも超実用的で質実剛健なデザインだ。それがフォルクスワーゲンの生きる道なんだけど、もうちょっと色気のあるモデルがあってもいいじゃないですか。
やりすぎると、フォルクスワーゲンのイメージにそぐわず、売れない。アルテオンがまさにそれだった。
でも、アルテオンシューティングブレークはちょうどいい! そう思うのです。
■カタくもないしチャラくもない、丁度よいカッコよさと変わらぬ実用性が魅力
後席に座るとかなり広さを感じる。実用性はさすがのフォルクスワーゲンだ
アルテオンシューティングブレークをパサートヴァリアントと並べると、健康的な遊び人対公務員。アルテオンシューティングブレークのほうが、断然イケてる。でも、遊びすぎてはいないし、高級すぎることもない。なんとも絶妙な落としどころだ。
サイズは、アルテオンとまったく同じで、全長が伸ばされていたりはしない。全長4870mm、全幅1875mmは十分大柄だけど、この大柄さがアルテオンのウリではないだろうか? 同クラスのアウディA5スポーツバックより一回り大きいのに安いという、この大盛り感がイイんだよ!
後席に座ってみると、閉塞感もなくてメッチャ広い! さすが全長4870mm。スタイリッシュだけど、居住性をまったく犠牲にしていないところは、さすが実用車ブランドのフォルクスワーゲンだ。
ラゲージスペースがまた広い。VDA方式による容量は、アルテオンもシューティングブレークもほぼ同じ(563L対565L)だけど、シューティングブレークのほうが天地方向のサイズがあるので、いざとなったら当然いっぱい積める。もちろん、A5スポーツバック(456L)よりずっと広いのは言うまでもないですね。
そして、ゴルファーにとって嬉しいのは、ラゲージ後端部が左右に凹んでいて、ゴルフバックを真横に積めるようになっていること。アウディはこの凹みが小さくて、真横に積むのはムリだ。アルテオンシューティングブレークの勝利!
■パワフルで快適な走りも楽しめる
走りもパワフルで頼もしい。運転支援システムももちろん装備されている
ところで、アルテオンのマイナーチェンジの内容だけど、まずはフロントとリヤまわりのデザインの小変更。以前よりちょっとだけアグレッシブになった。でも相変わらず「謎の高級車」っていう雰囲気は維持している。
インテリアは、ダッシュパネル全体のデザインを改良。正直、あんまり細かいところまで覚えてなかったので、どこが変わったかわからなかったけど、フォルクスワーゲンらしい堅実さの中に、キラリと光るスタイリッシュさがあって、これまたとってもちょういい感覚だ。
運転支援システムは、同一車線内全車速運転支援システム「トラベルアシスト」に進化した。でもまぁこのトラベルアシスト、他社のソレに比べて特に優れている点はない。今ドキのごく標準的なソレです。
今回の試乗では、高速道路でレーンキープシステムが、なぜか車線の右端を走りたがる癖があった。でもまぁ、どうせハンズオフができないなら、これくらいで問題ナシ。ロングドライブも適度にリラックスしてこなせるでしょう。
エンジンは、272馬力/350Nmの直列4気筒2リッターターボだ。以前は280馬力だったのが8馬力落ちたのは、わかりやすく表記をちょうど200kwにしたからだろうか(以前は206kw)。現実的にはなんら変わらずパワフルだ。
ミッションも7速DCTで変わらず。そしてフルタイム4WDの4モーション。コンフォートモードで静かにカイテキに、スポーツモードでは獰猛な快音を奏でて走ります。
アウディA5スポーツバックの最上級グレード「45TFSIクワトロSライン」は249馬力/370Nmで707万円。アルテオンシューティングブレークの「TSI 4モーションRラインアドバンス」は644万6000円。
エンジンはアウディが縦置き、アルテオンは横置きだけど、運転していてその違いが判る人はまずいまい。アルテオンシューティングブレーク、ますますシブイ選択だ!
■生まれ変わったパサートにも試乗
アルテオンと同時期にマイナーチェンジを受けたパサートにも試乗。運転支援システムがグレードアップされた
今回は、4月に行われたパサートのマイナーチェンジモデルにも試乗した。
変更内容は、外観の小変更と、ガソリンエンジンが1.4Lターボから1.5Lターボに変更になったこと、そしてアルテオンと同様、運転支援システムがトラベルアシストにグレードアップされたことだ。ただ、乗ったのはディーゼルモデル(TDI)で、こちらはDCTが6速から7速になっただけで、エンジンの変更はない。
フォルクスワーゲンの直4・2リッターディーゼルは、以前から低い回転域でのトルクが薄く、アクセルオンで出足が一瞬もたつく傾向があったが、ミッションが変わってもそれは同じだった。
VWのディーゼルは、ATをDレンジからSレンジに切り替えておかないと、とにかくトロい。排ガス対策を厳格に行った結果と推測されるが、この点、他社のディーゼルに対して明らかに劣っている。いかに燃費が良くても、これはツライ。
もちろん燃費では断然ディーゼルだが、ドライバビリティを優先すれば、1.5Lガソリンターボがオススメだろう。あれはいいエンジンです。
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