次回は11月20日に開催予定
青木拓磨といえば国内ロードレース選手権での大活躍の後、世界最高峰となる2輪ロードレース世界選手権(WGP)に1997年から参戦を開始した伝説のライダーである。フルエントリー参戦2年目となる1998年シーズン開幕直前にGPマシンのテスト中の事故によって脊髄を損傷し、車いす生活を余儀なくされてしまう。その後は4輪に転向し、さまざまなカテゴリーに積極的に参戦を続けてきているドライバーである。
「健常者」も「障害者も」参加できる! 車いすレーサー青木拓磨選手が主催する「HDRS」は超手厚いマンツーマン指導だった
トヨタ フォーチュナーがサーキットに現れる
そんな青木選手が理事長を務める一般社団法人国際スポーツアビリティ協会が主催するHDRS(ハンド・ドライブ・レーシング・スクール)は、千葉県袖ケ浦市にある袖ケ浦フォレストレースウェイで定期的に開催されているスクールである。
その内容は、ハンドドライブでクルマを運転する人のドライビングテクニックの講習という点に注力したものとなっている。障がいを持った人ならではクルマのドライビングの最適なポジションや操作方法を確認し、それに合わせたドライビングをレクチャーするというもの。それぞれの身体および障がいの特性によって、正しい乗車位置というものも変わってくる。
たとえば足で自分の身体を支えることができない脊椎損傷による障がいの場合、症状によっては体幹がなく身体が傾くと態勢を戻せなくなったりしてしまう。横Gが発生する運転の際には、クルマの挙動に対して自身の姿勢を保持できるようシートにしっかりと身体を固定する必要がある。
また旋回操作と加減速の操作を上腕2本で行なわなければならないため、片手運転がメインとなってそれ以外の動作をしなくても良いようにしておかねばならない。そのためのハンドルの位置やシート位置、シートベルト、そして正しい車両の操作について、直接青木選手らから指導してもらえるスクールである。
そのため、最初からサーキットのコースを使用してタイムを計測していくのではなく、まず45分間のスラロームおよびブレーキングの練習の時間が設けられ、その後、休憩を挟み30分×3回のサーキット走行が設定されている。もちろん、タイムアップを狙う人もいるが、いわゆるサーキットでのレーシングスクールとは異なる部分が多い。目を三角にするような走りのスクールではなく、のんびりとしたものとなっているのが特徴だ。障がい者はもちろん、一般健常者も参加が可能。ただ、参加費用は障がい者は健常者に比べて大きく割引されているのも特徴のひとつである。
青木選手の同乗走行も可能!
車両は基本的に参加者自身のクルマを持ち込んで走行となるが、アクティブクラッチやグイドシンプレックスといった手動装置を組み込んだレース用車両の日産「マーチ」やホンダ「N-ONE」といったHDRSの車両も持ち込まれており、これらの車両をレンタルすることも可能。またHDRSのハンドドライブ車両で走行する青木選手との同乗走行もできる。
5月、7月に続き、2023年の3回目となるHDRSが10月4日(水)に開催となった。この日は前夜からの雨が降りやまず、路面コンディションは完全にウエットだったものの、スクールが始まるころには徐々に止みはじめ、路面コンディションは回復していく方向にあった。青木選手と、このスクールで講師を務める山田 遼選手からも、
「あいにくの雨ですが、走行する頃には止む予報が出ています。路面は徐々に乾いていくことになるでしょうから、午後の3本の走行は路面が変わっていくタイミングとなります。路面の変化を感じながら走ってみてください」
と朝のブリーフィングで参加者にウエット路面を体感するいい機会だと話していた。
そんなレーシングスクールの会場に、マーチやN-ONEとともに今回持ち込まれたのはトヨタ「フォーチュナー」であった。アジアクロスカントリーラリー2023で総合優勝を果たした車両そのものである。9月後半に日本に帰ってきていたが、実際に青木選手がドライブするのは帰国後初となる。
豪快に走るその姿をHDRS参加者やその同行者はもちろん、サーキットにたまたま居合わせた利用者たちも遠巻きに眺めていた。サーキットには似つかわしくない巨体が時折黒煙を吐き出しながら囂々と走るさまは迫力満点。さらに興に乗ったのか、HDRS参加者のド・ノーマルのFD3S型マツダ「RX-7」とパドックでの加速対決をしたりと、HDRS参加者が楽しめる時間も設けられていた。
次回のHDRSは、2023年11月20日(月)に同じ袖ケ浦フォレストレースウェイで開催となる。次回も面白い企画を持ち込む予定ということで、その内容に期待したい。
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