日産は2023年8月8日、スカイライン400Rの限定車、「スカイラインNISMO」を正式発表した。限定1000台で9月上旬に発表し、100台限定で「スカイラインNISMO Limited」は2024年夏に発売される。事前試乗記をお届けしよう。
文/松田秀士、写真/池之平昌信、ベストカーWeb編集部
420psの1000台限定車「スカイラインNISMO」登場!! スペシャルなスカイライン400Rに刮目せよ!
■GTエンブレムが復活!
1000台限定のスカイラインNISMO。ベースの400Rから15psアップの420psを発生する
世界で初めて高速道路でハンズオフ(両手放し)ができるプロパイロット2.0を搭載したスカイライン。デビューからすでに10年が経過しているが、この度400Rをベースにより走りに特化したスカイラインNISMOが1000台限定で発売される。
価格はスカイラインNISMOが788万400円、同レカロシート+カーボン製フィニッシャー装着車が847万円、スカイラインNISMO Limitedが947万9800円。
まず、エクステリアで目を引くのは、スーパーGTなどレースで培ったNISMOの空力ノウハウが盛り込まれたエアロが採用されているが、フロントフェンダー両サイドに今となっては懐かしいGTエンブレムがあしらわれている。
GTエンブレムはスカGやハコスカと呼ばれた伝説的なスカイラインの華の時代をオマージュしたもので、そこにNISMOの空力デザインの融合を合わせたものだという。
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■P901活動の手法を採用
復活したGTバッジ。P901活動で培われたチューニング手法が施されているという
日産には古く「P901」活動というものがあった。これはシャシー設計の開発部門を中心に、当時欧州車に操縦安定性で大きく負けていた日産車を、1990年代に日産車の走りが世界一になっていること、を目標に開発することだった。
この時のベンチマークはVWゴルフIIGTIとFRではポルシェ944だったのだ。この活動によって生まれたクルマは、FF車ではキャビンフォワードを合言葉に広大な室内空間を持ったP10プリメーラ。そしてFR車ではR32スカイラインだった。
特にP10プリメーラはFFながら前後サスペンションにマルチリンクサスを奢り、素晴らしいハンドリングだったことを覚えている。
さて、この「P901」活動ではニュルブルクリンクを走って評価のできるドライバーを3名育成したのだという。そのうちのひとりが神山幸雄氏で、ニュルブルクリンクのテスト周回数は実に7000周を超えるという兵。現在もNISMOの車両開発に深くかかわっている。
筆者はプロのレーシングドライバーであった経験から、今回のようないわゆるチューンドカーにどのようなセットアップを施しているのか? そしてどのようなハンドリングを求めて開発してきたのか? いつも非常に興味を持って試乗している。
神山氏のシャシーを含めたセッティングによって、スカイラインがどのように変貌しているのか? 興味は尽きない。
■パワー&トルクアップの効果はいかほどものか?
明らかにノーマルの400Rを凌ぐトルク感が感じられたというスカイラインNISMO。3000rpm前後のトルク感が分厚くなったと筆者
さぁ、では走り始めよう。
まず加速フィーリングだが、明らかに400Rよりも3000rpm前後のトルク感が厚い。パワースペックは400Rの405ps/475Nm→420ps/550Nmへと、特にトルクが軽自動車1台分ほど増強されている。
スカイラインNISMOの心臓部。V6の3Lツインターボエンジンはノーマル比15psアップ、最大トルクで25Nmアップの550Nmに
実用域、市街地レベルの一般道走行ではとても扱いやすいトルク特性をも併せ持っている。もちろんアクセル全開にすればトップエンドの7000rpm付近までも一気に吹け上がる。
全開加速感は400Rよりも明らかに強力だ。このエンジンにはGT500レース用エンジンに携わった開発者が同じ開発設備で手組みによるチューニングが施されているという。
また、ATの変速スケジュールも専用チューニングされていて、高速道路の上り坂などでの追い越し加速では、強力なトルクを生かしてシフトダウンせずにブースト圧を維持しながら加速。
「SPORT+」のドライビングモードでは逆に高回転を維持しながらレスポンス重視のシフトスケジュールでスポーツドライビングをサポートする。
■タイヤも専用開発品
ノーマルの400Rではランフラットタイヤを装着していたが、スカイラインNISMOはダンロップの専用開発タイヤを履く
このパワーアップ、特にトルクアップしたエンジン特性を生かすためにタイヤは専用開発されている。400Rはランフラットタイヤを採用していたがNISMOではランフラットを止めている。
その理由は軽量化としなやかさを出すためとのことだが、バネ下の軽量化はハンドリングに大きく影響し、特にタイヤは回転するので高速になるほどにジャイロ効果によって応答性などに影響が出るのだ。
また、リアタイヤの幅を20mm広げた265/35R19に(フロントは245/40R19)して、増大したトルクに対応している。さらにENKEIのMAT工法による専用ホイールを採用していて、それぞれ+0.5Jと+1.0JのF:9J/R:9.5Jとなっている。
NISMOの車両開発の考え方として「限界性能を超えた時の車両の挙動がドライバーの意図どおりに動くことは、限界領域以下の通常領域では非常に扱いやすい」というものがある。
確かに限界領域以下では安定性が高く狙ったラインを修正舵もなくトレースする。サスペンションのしなやかさも400Rのようなゴツゴツ感もなく(これはおそらくランフラットを止めたから)、締まりはあるが乗り心地もいい。
■限界領域ではどうか?
アクセルを強めに踏み込んでリアの挙動を確かめたところ、滑り出しが非常にスムーズで安心できたと筆者は指摘している
そこで実際に限界域を超える走りを行ってみた。限界横Gからさらにアクセルを踏み込んでリアの挙動を確かめる。滑り出してもとてもスムーズで安心できるもの。
また、トラクションコントロールの介入もいつの間にか制御されていて、唐突に入ってギクシャクすることもなくリアスライドを自然に収束させてくれる。
P901活動を経験している神山幸雄氏の味付けが非常にスカイラインNISMO安心感の高さを感じさせてくれるのだという
非常に安心感が高い制御とハンドリングなのだ。なるほど、「P901」活動を経験した神山テスターの味付けは、このような細部にまで渡っているのだ。
サスペンションのチューニングはFスプリングのバネ乗数を+4%、Rスタビのバネ乗数を+44%強化しているだけ。いたずらに硬くなく、タイヤが常に路面を捉えていて、そのインフォメーションも伝わってくる。
ほかにボディの剛性アップを図るためにフロントガラスとリアガラスの接着に高剛性接着剤を全周に塗布している。これはR35 GT-Rにも採用されていて製造過程で別ラインを通す手間がかかるもの。
■スムーズに動く足と同時に静粛性も向上
試乗時には400Rからのボディ剛性アップを実感できたと筆者の弁。同時に静粛性も高まっていたとのことだ
しかし、ボディ剛性アップは明らかで、コーナーを攻め込むほどにガッチリとしたボディによって、サスペンションが微小な入力でもスムーズに動いていることが感じ取れる。
また、ボディ振動を抑える効果から室内のノイズも減少し、明らかに静粛性も高い。ほかにブレーキパッドも耐フェード温度を約1.5倍にした専用のものを採用する。
スカイラインNISMOにオプション装着されるRECAROシートのホールド性を筆者も絶賛!
試乗車にはオプションとなるRECAROシート(前席)が採用されていたが、こちらはリアシートも含めた専用設計でトータルでは20kgもの軽量化となっている。やはりRECAROのホールド性と剛性感は素晴らしく、1.0Gレベルの急操舵にもガッチリ身体を支えてくれた。
さて2024年の話になるが、匠の手作業によるエンジンを含めたより高度な専用チューンが施されたスカイラインNISMO Limitedが100台限定で販売される予定だ。
今回改めて感じたのは、10年という月日が経過したモデルだが、数々のマイナーチェンジを経て熟成されたうえにNISMOの手が入ると、ここまで進化するものなのだということ。このクラスの国産FRスポーツセダンはもうレクサスくらいしか思い浮かばないが、日産の心意気に拍手を送りたい。
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みんなのコメント
見た目がクソダサイ。
ニスモ以前の問題。
もっとカッコいいスカイラインにしてくれよ。
見た目で損してる車のベスト3に入る車。
それが現行スカイラインだと言う事を、日産はそろそろ本気で自覚しないと、スカイラインの永久消滅は時間の問題で間違いなし。
(買えません(汗))