優れたハンドリング性能から、クルマを操ることを重視する多くのドライバーに支持されるFR車。そのなかにはエンジンを中央に寄せることで擬似的なミドシップレイアウトとし、走りをより追求したモデルも存在する。
文:井澤利昭/写真:トヨタ、ホンダ、マツダ、三菱自動車、CarsWp.com
駆動方式やレイアウトによって変わるクルマのキャラクター
クルマの駆動方式は、エンジンが車体のどこに搭載されているかと、エンジンからの動力が伝わるタイヤ=駆動輪の位置によっていくつかの種類に分類することができる。
現在、街中を走る一般的な乗用車では、車体の前側にエンジンを搭載してフロントタイヤを駆動する、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)や、前後4つのタイヤすべてを駆動する4WD(4ホイールドライブ)を採用するクルマが多い。
特にFFは、エンジンやトランスミッションといった駆動系の主要部品を車体の前方に集めることで、室内空間を広くとれる点や、駆動輪がクルマを引っ張るようなかたちとなることで生まれる高い安定性、部品点数が少なく製造コストが抑えられるため、車体価格も安くできるといったメリットが多く、コンパクトカーから乗用車、軽自動車まで、幅広く採用されている。
また4WDは、雪道や未舗装の道路でも安定して走行することができ、高出力エンジンでも安定した走りで運転がしやすいというメリットがある。
いっぽう、走りの良さを売りとしているスポーツカーなどで積極的に採用されているのが、リアタイヤのみを駆動輪とするRWD(リアホイールドライブ)だ。
RWDはエンジンを車体の前側に搭載するFR(フロントエンジン・リアドライブ)、エンジンを車体中央に置くMR(ミドシップエンジン・リアドライブ)、車体後部にエンジンを積むRR(リアエンジン・アドライブ)の3つに大別される。
このうちMRは運動性能こそ優れているものの、そのピーキーなハンドリング特性や、エンジンを運転席の後ろに搭載する関係上キャビンやトランクなどの車内空間を広くとることができないというデメリットもあり、フェラーリやランボルギーニなどに代表されるいわゆるスーパーカーや、ホンダのNSXやS600、ビート、トヨタのMR2やMR-S、マツダのAZ-1といった実用性を度外視した一部車種のみに採用されるに留まっている。
またRRも同様で、加速やブレーキ性能でのメリットこそあるものの、コーナリング時のコントロールが難しく、乗用車においてはその代名詞とも言えるポルシェ911シリーズなど、一部モデルでのみの採用となっている。
かたやFRは、後輪駆動ならではのトラクションの高さ=加速性能の良さに加え、軽快でバランスのいいハンドリングが生み出す操作性の高さが魅力。
室内空間にもある程度余裕があるため、国内外のスポーツモデルや大型セダンで採用されることが多く、古くから多くのクルマ好きに支持されている駆動方式と言えるだろう。
高い運動性能を見せる「フロントミドシップ」のFR車
フロントタイヤが「曲がる」ことを、リアタイヤが「加速する」ことをそれぞれに分担するFRのクルマは、素直で扱いやすいハンドリングと、胸のすくような加速感を味わうことができるのがその大きな魅力だが、同じFRでもエンジンを搭載する位置によって、その特性はやや変わってくる。
一般的なFR車では、エンジンがフロントタイヤの車軸より前側に飛び出すような位置に置かれていることが多い。これは、こうしたレイアウトを採用したほうがキャビンやトランクなどの車内スペースをより広くすることができるためだ。
このようなFR車ではクルマ全体の重量配分がやや前よりとなるため、いわゆるフロントヘビーなハンドリングとなり、コーナリング時の限界点では弱アンダーステアの特性を示すことになる。
こうしたハンドリングは一般道で非常に扱いやすく、ナチュラルな走行フィーリングを得ることができるのが魅力。
FRならではのトラクションの良さは大排気量エンジンの大きなパワーを受け止めるのにも最適で、乗り心地にも優れるため、クラウンやスカイラインといった高級セダンでも積極的に採用されている。
これに対して、前輪の車軸より後ろにエンジンを搭載するのが、いわゆる「フロントミドシップ」というレイアウトを採用するFR車だ。
フロントミドシップレイアウトを採用する最大のメリットはクルマの運動性能を大きく左右する、前後重量配分を、その最適値とされる「50:50」へと近づけやすいという点。
前後重量配分が50:50のクルマは、慣性モーメントに対するバランスに優れているため、「曲がる・止まる・走る」というクルマの運動性を決定する基本性能が、一般的なFR車よりもさらにレベルの高いものとなるからだ。
特にコーナリング時の限界付近でのニュートラルなハンドリングは特筆もので、加速性能の高さやブレーキング時の安定性においても秀でているため、その多くが、走りを重視するスポーツモデルでの採用となっている。
フロントミドシップの代表的なクルマとは?
●ホンダ S2000
フロントミドシップを採用するFR車は、縦置きのエンジンを運転席の前にレイアウトする都合上、車体のフロント部分が長く、リア側が短いボディスタイルをしているものが多い。
そんな「ロングノーズ・ショートデッキ」と呼ばれるスタイルをまさに具現化したクルマを代表するのが、1999年に登場したホンダ S2000だ。
元F1エンジニアが生み出した、当時の量産エンジンとしては世界最高峰となる、最高出力250psの2.0リッター直列4気筒DOHC VTECエンジンをフロントアクスル後方に配置するとともに、バッテリーやスペアタイヤ、燃料タンクといったその他の重量物も重心近くに集めることで、前後重量配分50:50を実現。
重量面や剛性面で不利と言われるオープンスポーツカーながら、ハイXボーンフレーム構造という独自の技術によって生まれた専用ボディの採用で、クローズドボディと同等以上のボディ剛性も引き出し、ダイレクト感に優れたハンドリングへと仕上げられている。
ちなみにホンダでは、S2000のエンジンレイアウトのことをフロントミドシップではなく、「FRビハインドアクスルレイアウト」と命名していた。
●マツダ RX-7/マツダ ロードスター
ハンドリングが優れたクルマと聞いて多くの人が連想するのがマツダのRX-7ではないだろうか。
なかでもその3代目にあたるFD3S型ことアンフィニRX-7は、コンパクトな直列2ローターツインターボのロータリーエンジンの特性を活かし、スポーツカーとしては最適な前後重量配分50:50を実現したフロントミドシップのFRを代表する一台と言えるだろう。
1400kgを下回る軽量な車体、前後ともにオールアルミ製のダブルウィッシュボーン式のサスペンションが奢られた足回りなど、その姿はまさに走るために生まれた生粋のスポーツカーを体現したものだった。
2003年にその販売を終えたアンフィニRX-7だが、同じマツダには、もう一台、フロントミドシップのレイアウトを採用したFRの名車がある。クルマ好きのみなさんならもちろんご存知であろうロードスターだ。
1989年に登場した初代モデルであるユーノス・ロードスターから歴代モデルすべてで前後重量配分50:50を採用し続けており、そのこだわりはもはや伝統といっても過言ではない。
もちろん、その伝統は4代目となる現行のND型ロードスターにも受け継がれており、同じく初代NA型から続くコンセプトである「人馬一体」をさらに追求するため、1.5リッターのDOHC直列4気筒エンジン「SKYACTIV-G 1.5」をフロントミドシップに搭載。
小型・軽量化を図った新開発の6速マニュアルミッション「SKYACTIV-MT」も最適な前後重量配分の実現に大きく寄与している。
●トヨタ スープラ
現行モデルのFRレイアウトのクルマとして、思い浮かぶもう一台がトヨタのGRスープラだ。
長年のフェンからすれば、スープラといえば6気筒エンジンというのが常識。
フラッグシップである3.0リッター・B58エンジン搭載の「RZ」はまさにその流れを受け継ぐモデルだが、こと前後重量配分という視点から見ると、4気筒である2.0リッター・B48エンジンを積む「SZ」系のほうが50:50とバランスが優れている。
これはB58と比較してB48のほうが約70kgも軽く、エンジン長も短いことでより重心位置がセンター寄りとなり、フロントミドシップレイアウトになっていることが大きく寄与している。
そのハンドリングは軽快そのもので、ワインディングでドライバーの意のままにグイグイと曲がっていく楽しさから、4気筒モデルを推す専門家も少なくない。
先頃、2026年3月をもって生産終了することがアナウンスされたGRスープラだが、今後の動向が気になるところだ。
現在ではあまり採用されることがないフロントミドシップレイアウトのFR。とはいえその優れたハンドリングは、クルマの運転が好きなドライバーにとってはやはり大きな魅力。クルマ好きを自認する人であれば一度は味わっておきたいものだ。
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みんなのコメント
セールスプロモーションのためだけに生まれたコトバ
前車軸との位置関係に違いがあっても、客室(キャビン)の前にエンジンがある限り、言うほどその運動特性に違いは無い