毎日使い倒せる万能ワゴン トップ10
実用性、乗り心地、走り、インテリアの質感などさまざまな観点から、今最も注目したいステーションワゴンのトップ10を紹介する。
【画像】えっ、チェコ車ってこんなに良かったのか!【最新型スコダ・スパーブ・エステートを写真で見る】 全35枚
AUTOCARでは以前にも同様のテーマを取り上げたが、実は今夏に入り、「どうしても外せない1台」が新たに加わった。チェコのスコダが満を持して投入した新型スパーブだ。詳細は後述するが、地味ながら走りと乗り心地のバランスが抜群で、見事に編集部のハートを射抜いた。
今回はこの新顔を加え、優れたステーションワゴンを改めてピックアップしたい。
ステーションワゴンというジャンルは最近、特に過小評価されているように思う。SUVと同等の多用途性と、セダン並みのシャープなダイナミクスを併せ持つ「合理的」なクルマなのに、残念ながらSUV人気の影に隠れて存在感を発揮できていない印象がある。
北米だけでなく、日本でもかつてほどは目立たなくなってきた。しかし欧州では、SUVがトレンドの中心となった今でもその人気は根強く、極めて実用的なモデルから華やかなシューティングブレイクまで、幅広い選択肢がある。
欧州のステーションワゴンは、快適な乗り心地、燃費の良さ、スポーツカーのようなハンドリングなど、さまざまなニーズに合わせた1台が用意されている。中には、これらすべての特徴をうまく組み合わせたモデルさえある。
(翻訳者注:この記事は2024年4月14日に掲載した記事『2024年版 カッコよくて実用的なステーションワゴン 10選 多用途に使える「合理的」な1台』を更新・再編集したものです)
1. スコダ・スパーブ・エステート
長所:種類豊富なパワートレイン。インテリアの雰囲気と使い勝手の良さ。
短所:低速域での乗り心地がやや硬い。DCTは少し扱いにくい。インテリアの質感はいまいち。
大型で保守的なスコダ・スパーブ(Skoda Superb)は、ガソリン、ディーゼル、ハイブリッドの各種パワートレインが用意されている。フォルクスワーゲン・グループのハードウエアとソフトウエアを使い、好感の持てる、親しみやすく使い勝手の良いクルマに仕上げている。
第4世代となる新型スパーブは、先代と同様、実用性、多用途性、快適性、扱いやすさを重視しているが、室内空間がさらに広くなり、エンジンの効率性も向上している。ボディはセダン(ハッチバック)とステーションワゴンがあり、後者は「エステート」と呼ばれる。
フォルクスワーゲン・パサートと同じMQB Evoプラットフォームを採用し、トランク容量は690Lで、60/40分割可倒式の後部座席をフラットに折りたたんだ状態では1920Lになる。
プラグインハイブリッド(PHEV)モデルでは、25.7kWhの大きなバッテリーがトランクフロアの下に格納されるため、トランク容量は510Lに減少する。その分、電気のみの航続距離は135kmと印象的なものだ。
マイルドハイブリッド付き1.5Lガソリンエンジンもあるが、売れ筋になると予想されているのが2.0Lディーゼルだ。静かでよく働き、燃費もいい。
欧州ではディーゼル車の市場シェアが縮小の一途をたどっているが、長距離を走ったり、高い牽引能力を必要とする人々のことを考えたチェコのスコダには敬意を評したい。
新型スパーブは、特別スポーティなわけでも、飛び抜けて快適なわけでもないが、その2つをうまくバランスさせている。長いボディはしっかりと動きを抑えられており、コーナーでサスペンションに負荷をかけるとステアリングが重くなり、路面追従性に十分な自信を与えてくれる。
また、標準車の乗り心地は低速域での繊細さに欠けるが、オプションのDCCアダプティブ・ダンパー装着車を試乗したところ、よりしなやかで、上級モデルにふさわしい乗り心地を実現していることがわかった。
2. BMW 5シリーズ・ツーリング
長所:スタイリッシュなキャビン。パワフル。洗練されたインフォテインメント・システム。
短所:やや不安定な乗り心地。BMWの卓越したハンドリングに欠ける。アダプティブ・サスペンションが標準装備ではない。
現在、BMW 5シリーズ・ツーリングの新型が販売されているが、本稿執筆時点でAUTOCARはまだ試乗できていない。しかし、先代モデルは今でもあらゆる方面をカバーする万能マシンであり、他の追随を許さない。
エレガントなスタイル、魅力的な走り、多用途に使える広さ、そしてユーザーの利便性を追求した機能群を備えた、多才なドイツ車である。
この世代のトランク容量は560L(PHEVモデルで430L)と平均的なものだが、荷室の形状はよく、開閉機構付きのリアガラス(ガラスハッチ)により狭い場所でも小さな荷物の積み降ろしが簡単だ。40/20/40の分割式後部座席を折りたためば、1700Lの大容量になる。
リアアクスルにはエアサスペンションが用意され、重い荷物を積んだときのセルフ・レベリング機能と、アダプティブ・ダンパー(オプション)との組み合わせにより快適性を高めている。
それでいて、BMWの「駆けぬける歓び」というスローガンが崩れることはない。肉厚なステアリングと高い敏捷性によって、ボディサイズや質量をうまく隠している。
この世代では高性能のM5ツーリングはないが(新型に設定)、繊細かつホットなアルピナB5ツーリングはある。ただし、どちらもトランクをいっぱいにするほどのお金が必要だ。
3. ダチア・ジョガー
長所:クラストップのコストパフォーマンス。使い勝手の良い3列目シート。経済的なエンジン。
短所:一部の安全システムに欠ける。居住空間は大人には十分でない。パワートレインの洗練性にやや欠ける。
ルーマニアの自動車メーカーでルノー傘下のダチアが欧州市場で販売するジョガー。日本では無名のモデルだが、果たしてこれはステーションワゴンなのか、ミニバン(MPV)なのか、あるいはSUVなのか、触れた人によって意見が分かれると思う。確かに7人乗りで車高もそこそこ高いが、筆者はステーションワゴンだと捉えている。
ここ数年の生活費の高騰を考えると、ダチア・ジョガーは特に歓迎すべきモデルだ。一般的なハッチバックよりも大幅に安い価格で、3列シートと高い実用性を備えている。
安いからと言って、快適な乗り心地を犠牲にしているわけではない。確かに、内装のプラスチックは硬く、肌触りのいいレザーシートもないが、ファブリックやアルミ調トリムをうまく使うことで好印象に仕上げている。
上級グレードにはシートヒーター、クルーズコントロール、ナビ、そして機能的なインフォテインメント・システムが追加される。
搭載される1.0Lガソリンエンジンはパワフルではないが、キビキビと決まる6速MTのおかげで十分に扱える。筆者のおすすめはシンプルなガソリン車だが、どうしてもATが必要なら、非常に優れた経済性を発揮するハイブリッド車もある。
ソフトなサスペンションで乗り心地は良く、また全体のバランスに優れ、曲がりくねった道でも走りを楽しめる。欧州の安全性評価機関ユーロNCAPで「1つ星」の最低評価を受けてしまったが、これは決して “危険な乗り物” というわけではない。一部のアクティブ・セーフティ・システムがないことから減点となったが、衝突時の乗員保護性能は他車と遜色ないレベルだ。
ダチア・ジョガーは、比較的安価な価格で多くの楽しさを提供してくれる、陽気で快適なパッケージである。高級車とは正反対のキャラクターだが、好きにならないわけがない。
4. BMW 3シリーズ・ツーリング
長所:優れたドライビング・ダイナミクス。世界基準のパフォーマンスと経済性の融合。便利なガラスハッチ。
短所:高価に見え始めた。トランスミッションはそれほど器用ではない。Mスポーツサスペンションでは、乗り心地が不安定になることがある。
5シリーズの弟分である3シリーズ・ツーリングは、兄貴分の長所をそのままコンパクトなパッケージに凝縮したモデルである。待望のM3ツーリングも登場し、オールラウンダーとしての地位を確立した。
Mモデルに手が届かなくても、グレードを問わず多くの魅力が散りばめられている。軽快感、ドライバーとクルマの一体感、そして適度なサイズ感によって、どんなに曲がりくねった道路でも落ち着いて走り抜けることができる。
乗り心地は比較的硬めだが、全体のソリッド感と洗練性により長距離走行でも快適だ。インテリアの質感は高く、5人乗車時で500L(PHEVモデルは410L)のトランクを誇る。また、便利なガラスハッチ、多数の収納スペース、コンビニフックなども装備されている。
2022年の改良では、巨大な曲面スクリーンが採用された一方で、物理的なコントロール(操作系装置)がかなり廃止された。BMWの最新OSは完璧ではないが、少なくともロータリー・コントローラーは多くの操作を助けてくれる。
5. ジャガーXFスポーツブレーク
長所:高級感の割にお買い得。クラストップのハンドリング。しなやかな乗り心地。
短所:今どきPHEVの設定がない。後部座席が狭い。高価なオプション。
XFスポーツブレークは2021年初頭のマイナーチェンジで、インテリアの見直し、エンジンラインナップの縮小、そして値下げが行われ、魅力が大いに高まった。
ディーゼルの後輪駆動モデル「D200」は、英国では4万ポンド(約750万円)強で販売されている。これは、6万ポンド(約1120万円)台が当たり前となっている他の高級ステーションワゴンと比べると衝撃的な価格設定である。
排ガス規制の影響により、残念ながら6気筒エンジンは失われてしまった。しかし、クラス最高のハンドリングを誇ることは間違いない。ジャガーらしい重みのあるステアリングとレスポンスのおかげで、方向転換も華麗にこなしていく。
上級グレードにはFタイプと同じ最高出力300psの2.0Lガソリンエンジンと四輪駆動が採用され、季節や天候を問わず素晴らしい能力を発揮する。インテリアの質感とインフォテインメント・システムも、ジャガーブランドにふさわしいものだ。
XFスポーツブレークは、ジャガーの伝統的な価値観である「Space, Pace and Grace(広さ、速さ、優雅さ)」を十分に備えている。
6. シトロエンC5 X
長所:しなやかでソフトなサスペンション。充実したインテリア。経済的なパワートレイン。
短所:もどかしいブレーキフィール。時折ギクシャクするトランスミッション。衝撃吸収性能はやや期待外れ。
シトロエンC5 Xは、クーペとSUVのスタイル、ステーションワゴンの多用途性を併せ持つユニークなフランス車で、実用性に対するブランド独自のアプローチを見せてくれる。見慣れた一般的なステーションワゴンとは少し異なるクルマだ。
外見からも快適性を最優先していることは明らかである。ソフトなサスペンションは不安定になることもあるが、基本的にはしなやかで気楽な足取りを持ち、シートの座り心地とサポート性には目を見張るものがある。ボディの動きは大きいが、軽快かつ正確なステアリングと高い安定感により、運転が苦になることはほとんどない。
華やかな外観とは裏腹に、インテリアは広々としており、見た目が良く作りもしっかりしている。トランクも大きく、5人乗車時で540Lの容量を誇る(PHEVモデルでは485L)。
PHEVモデルの経済的なメリットはそれなりに大きく、快適性も一番高い。1.6Lガソリン車も、その静かな走りとトルクがC5 Xのキャラクターによく合っている。ただし、やや不機嫌な8速ATには苦戦を強いられることもある。
7. メルセデス・ベンツEクラス・ステーションワゴン
長所:615Lの大容量トランク。豊富な車載システム。クラストップレベルの航続距離を誇るPHEVモデル「E 300e」。
短所:英国では四輪操舵もエアサスペンションもない。高価。PHEVのバッテリーがトランクルームを圧迫。
ステーションワゴンよりも魅力的なEクラスはあるだろうか? 筆者はないと思う。Eクラスに大事な家族を乗せるとしたら、セダンよりもステーションワゴンを選びたい。40/20/40分割可倒式リアシートを折りたたむと、1830Lものフラットフロアが出現する
トランクルームの形状もよく、低いフロア高や電動テールゲートなどがあり扱いやすい。ただし、PHEVモデルでは大型バッテリーを搭載するため、トランク容量は460~1675Lと小さくなってしまう。
最新世代のEクラス(W214型、ステーションワゴンはS214型)では、スクリーンとテクノロジーに全力を注いでいる。上級グレードには、中央と助手席用のスクリーンが統合された「スーパースクリーン」が用意されている。機能性は十分だが、必ずしも選ぶ必要はない。
弊誌は本稿執筆時点で2.0L 4気筒ディーゼルの「E220d」しか試乗できていないが、非常に洗練されていると同時に経済的であることがわかった。PHEVのE 300eは、よりソフトなサスペンションが装備されているため快適性がさらに高いと思われる。ステーションワゴンには全車、リアにエアサスペンション装備されるが、これは乗り心地よりもセルフ・レベリング機能を目的としたものだ。
8. フォード・フォーカス・エステート
長所:俊敏で遊び心のあるシャシー。人間工学的に優れる。走りが楽しい。
短所:高速道路での燃費が悪い。地味で安っぽいインテリア。選択肢の限られたパワートレイン。
日本では馴染みが薄いかもしれないが、欧州では何十年にもわたって、フォードの中型車(エスコートやフォーカス)はファミリーカーとして「定番」の地位を築いてきた。しかし、SUVの台頭によりフォーカスも疎外されつつあり、2025年の生産終了後は後継車の計画がない。
AUTOCARはフォーカスをたいへん気に入っている。プレミアム感に関して言えばプジョー308 SWに劣るが、ドライビングやクルマを操ることが好きな人にとっては数少ない選択肢の1つとなるだろう。
フォーカスはマイルドハイブリッド付きの1.0L 3気筒エンジンを搭載し、6速MT付きの最高出力125psのバージョンと、7速DCT付きで155psのバージョンがある。
どちらも優れているが、筆者は安価なMT車をおすすめしたい。「ホットハッチ」というほどではないが、とてもナチュラルで満足のいく運転体験を提供してくれる。また、編集部で最高出力155psのDCT車の長期テストを行ったところ、平均燃費24.6km/lを記録した。マイルドハイブリッドのガソリン車としてはかなり印象的だ。
最近のマイナーチェンジでは、巨大なマルチメディア・スクリーンが導入された。残念ながら物理的な空調コントロールは廃止されてしまったが、実を言うと、それでも機能性は十分に高い。
フォーカス・エステートは実用的で、見た目の威圧感もない。トランク容量は608Lで、後部座席をフラットに折りたたむと1653Lになる。単に大きいだけでなく、脱着が簡単なカバーなどの実用的な機能もある。
9. トヨタ・カローラ・ツーリング
長所:優れた経済性。驚くほど優れたハンドリング。快適な乗り心地。
短所:トランスミッションの「マニュアル」モードは形だけ。キャビンの装備が残念。貧弱なインフォテインメント・システム。
少し前まで、トヨタ・カローラは平凡な乗り物の代名詞だった。耐久性と信頼性は高いが、平坦で魅力に乏しいクルマでもあった。しかし、第12世代となる現行型は、これまでの長所をすべて備えつつ、スタイルと走りの魅力度が大幅にアップしている。
ステーションワゴンの「ツーリング」ではさらなる実用性も得られる。TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)により上質な乗り心地とハンドリングのバランスに恵まれ、走りが楽しいだけでなく、快適かつ洗練されたクルマに仕上がっている。
英国仕様はハイブリッド車のみの設定だが、排気量は1.8Lと2.0Lから選べる。1.8Lハイブリッドは2023年のマイナーチェンジで最高出力140psに大幅パワーアップし、十分なパフォーマンスを備えている。
2.0Lハイブリッドは最高出力195psとさらにパワフルで、軽快な走りが楽しめる。性能重視のマシンではないが、いずれも経済性は良好だ。1.8Lは混雑した一般道でも驚くほど低燃費だが、高速道路で長距離を走るなら2.0Lの方がいいかもしれない。
インテリアは「上質」と言える水準には達しておらず、インフォテインメント・システムもパッとしないが、適度に広く、頑丈に作られている。トランクにも十分な広さがあり、低いフロア高と適切な荷室形状の恩恵を受けられる。
なお、1.8Lハイブリッドのトランク容量は696Lだが、2.0Lハイブリッドではバッテリー配置の影響で581Lとなる。1.8Lの方が広くて実用的、かつ経済的なのだ。
いずれにせよ、現代のカローラがスタイル、走り、使い勝手など幅広い魅力を備えていることは確かだ。
10. アウディA6アバント
長所:豪華で高級感あるキャビン。長距離走行での経済性。快適な長距離クルーザー。
短所:選択肢の限られたパワートレイン。トランクの広さはいまいち。後部座席が狭い。
アウディA6アバントは、新しさや走りの楽しさではライバルのEクラスや5シリーズに敵わないが、それでも多くの利点がある。
英国では4気筒ガソリン、ディーゼル、PHEVの各種パワートレインが用意されている。ドライビング・ダイナミクスでBMWを追いかけるのではなく、機械的な洗練性と快適性を重視している。
インテリアは広々としていて高級感があり、車内で時間を過ごすのも楽しい。マルチメディア・システムの触覚フィードバックはいまいち不器用だが、反応は素早く、空調コントロールには個別のスクリーンが用意されているため比較的使いやすい。
実用性の面でも高く評価できる。トランク開口部は広く、565Lの容量がある。ルーフの角度によって背の高い荷物は積み込みづらいが、開口部に厄介な敷居がないため重い荷物を運ぶのには便利だ。40:20:40分割可倒式リアシートを折りたためば、1680Lに拡大される。
速く走りたければ、RS6アバントもある。V8ガソリンエンジンは素晴らしいパワートレインであり、M5ツーリングやE 63ステーションワゴンのような複雑なハイブリッドシステムもない。
RS6アバントはドライビング・ダイナミクスも優れ、アウディの中でも屈指の速さを誇る1台だ。BMWのMモデルのような派手さはないが、リアバイアスの出力配分とよく調整された四輪操舵システムと相まって、飽きずに楽しませてくれる。
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一応、現行モデルも存在するが。