フォルクスワーゲンの主力モデルのひとつである「ポロ」は1975年に、同社のボトムレンジを担うモデルとして登場した。日本には1994年の3代目から正式にカタログモデルになっている。基本的なボディー形状は、4ドア+リアゲート付きのハッチバックと2ドアハッチバック。日本での人気も、ボディーサイズのコンパクトさが好評だった。とくに、2018年まで販売されていた5代目までは、全幅が1.7m以下の5ナンバーだったので、女性ユーザーからの支持も多かった。
一方で、スポーツモデルの開発にも熱心で、3代目(1994~2001年)からは「GTi」というネーミングのスポーツモデルをラインアップ。パワーユニットに、ターボ+スーパーチャージャーを用いるなどのハイパワーモデルを投入している。
戦後フルラインメーカーへと登りつめたドイツの名門自動車ブランドOPELの歴史
現行の「GTi」は2018年にフルモデルチェンジした6代目。6代目からはVWの共通プラットフォームであるMQBを採用したことで、全幅が1750mmになってしまい、日本では3ナンバー登録、「GTi」はノーマルモデルが2018年3月から販売されたのに対し、同年7月から発売されている。
マイナーチェンジでエンジンを変更と同時に足回りも変わった
パワーユニットは、発売当初は直噴ターボミラーサイクルの直4、2.0ℓだったが、2022年11月のマイナーチェンジで、エンジンを変更し、直4、2.0ℓLターボは207PS、320Nmにパワーアップされ、ミッションも7速DSGが搭載された。
今回の試乗車は、この最新モデルだ。エンジンの変更と同時に足回りも変わった。フロントはストラット、リアはトレーリングアームで、4つのモードが選択できるようになった。コンソール上のボタンはエコ/ノーマル/スポーツ/カスタムで、ダンピング特性、ハンドル、エンジン、ギアボックスの制御プログラムが変えられる。さらに、2022年11月のマイナーチェンジでスポーツ/ノーマルの2モードを切り替えるアクティブダンパーを備えたSport Selectパッケージが、メーカーオプションで選べるようになった(12万1000円)。試乗車には、このパッケージとインフォテイメントシステムのDiscover Pro(15万4000円)が装着されていた。
2022年11月の最新モデルは、外観もGTi専用になった。フロントグリルはハニカム状になり、左右のヘッドライトをつなぐ車幅灯やヘッドライト内部まで赤いアクセントラインが走るGTiデザイン。
内装は、黒、赤、グレー、クロームを基調に、赤いアクセントが施されている。とくに前席はチェック柄のファブリックトップスポーツシートを採用。このシートは座面の太もものホールド性がよく、ヘッドスペースの圧迫感も少ない。太い握りのハンドルと共に、スポーツモードを高めてくれる。ハンドルやシフトノブ、シートはGTi専用だ。
ノーマルの「ポロ」よりも約15mm低いローダウンサスのボディーと215/40R18のコンチネンタル「スポーツコンタクト5」タイヤが、スポーツムードを盛り上げる。シートに座って、2.0ℓターボを目覚めさせる。新搭載の2.0ℓターボの実力を知るために、最初からスポーツモードを選択。スポーツモードに切り替えると瞬時にエキゾーストノートのボリュームが高まる。
ワインディングで本領発揮
Dレンジでスタートすると2000回転からのレスポンスが鋭い。5000回転をポイントに、マニュアルモードで踏みこむと、1速40、2速70、3速で110km/hに達する。一方、100km/hの巡航はDレンジ7速1800回転、6速2000、5速2500回転で走行する。トルクの盛り上がりと、100km/hのキープが同じ回転数なので、100km/hをキープすると、かえってアクセルワークに気を使う。乗り心地はスポーツモードでは硬め。路面のザラつきや目地での突き上げも硬め。高速巡航ではエコモードの乗り心地がよかった。
そして、「ポロ GTi」が本領を発揮するのはワインディングだ。ローダウンされた車体、トラクション性能を最適化してくれる電子制御式デファレンシャルロック、アクティブダンパーを備えたスポーツモード、7速DSGのマニュアルモード(GTiにMTは存在しない)。コンパクトなサイズは、ドライバーと一体となったかのようなコーナリングを楽しませてくれる。
もちろん、先進安全性は最新レベルをほとんど備えている。燃費も、こうしたスポーツ走行でも8~10km/ℓ台はキープしていた。実用性に関しても、後席はやや低めの着座位置で、頭上の空間は身長170cmでも耐えられる広さを確保。足元は広々とはしていないが、ロングドライブでも十分だ。
もちろん背もたれは前倒する。リアの荷室も左右幅は1m以上確保されている。サブトランクも一応、確保されている。日本車では、少なくなってしまったコンパクトハッチバックのスポーツモデルは、日本の道には合っている。ガソリンエンジン+ターボのスポーツハッチの未来は見通せないが、この楽しさだけは記憶に残しておきたい。ワインディングを高回転キープで走りながら、ふと考えた。車両本体価格は411万3000円。
■関連情報
https://www.volkswagen.co.jp/ja/models/polo-gti.html
文/石川真禧照 撮影/萩原文博
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