■クルマの鍵穴は必要ない存在になった?
ひと昔前までのクルマは、鍵をドアノブ付近に設置された鍵穴にさして解錠し、さらにハンドル付近の鍵穴に鍵を挿して回すことでエンジンを始動させていました。
しかし、最近のクルマでは鍵を回すことなくプッシュ式になっているほか、鍵自体もボタンが付いた「キーレスキー(スマートキー)」となっています。そして、最近ではクルマ側の鍵穴もなくなりつつあるといいますが、なぜなのでしょうか。
現在、市販されているほとんどのクルマは、鍵についたボタンを押して遠隔で施錠・解錠が可能な「キーレスキー」であるほか、ドアノブのボタンを押すものや、触れるだけで施錠・解錠でき、エンジン始動もインパネのプッシュボタンを押すだけです。
キーレスキーやスマートキー(以下、スマートキーに統一)は、以前までのように鍵自体の部分は露出しておらず、クルマの施錠・解錠やエンジン始動が簡単に出来ることから急速に普及し、さまざまな車種に採用されています。
しかし、スマートキーは電池で作動するため、電池残量が少ない場合などでは、施錠・解錠できないこともあり、そのような場合にはスマートキーに内蔵されているエマージェンシーキーを取り出して、鍵穴に差し込んで使用します。
そのため、スマートキーが普及した現在でも多くの市販車にはドアノブ付近に鍵穴が存在するのです。しかし、最近のクルマではその鍵穴自体が目立つ部分から無くなっているといいます。
とくに、輸入車などでは以前から外から目立つ場所に鍵穴が存在しない車種が多く、そのほとんどはドアノブを引いた際の奥側に移設されているようです。
そんななか、国産車で鍵穴を目立たない場所にするようになったマツダはその理由について、次のように話します。
「マツダでは、2019年から投入している新世代モデルの『マツダ3』と『CX-30』から目立たない場所に鍵穴を移設しています。
エマージェンシーキーを使う機会は滅多にないこともあり、常に目立つ場所になくても良いのではと考えました。
そのため、洗練された外観デザインを作り上げる際にどうしてもボディ側面にある鍵穴が目立ってしまうことから、見えない場所に移設しました。
また、スマートキーの場合にドアノブに設置されるゴムのボタン部分や触れると施錠・解錠されるセンサー部分もできる限り目立たないよう、細部まで作り込んでいます」
※ ※ ※
レクサスでは、マツダ同様に市販されるほとんどの車種で鍵穴を見えない位置に移設しています。その反応について、レクサスの販売店スタッフは次のように話します。
「デザインという面では、鍵穴がない方が洗練されています。実際に、お客さまからは『鍵穴がない方がシンプルで良い』という声も頂いております」
このように、使用頻度やクルマの見た目上の観点から最近では見える場所に鍵穴がなくてもいいようです。
■新型車でも見える場所に鍵穴を設置する理由とは
マツダやレクサスは、おもにデザイン面の理由において鍵穴を見えない場所に移設していますが、一方で新型車でも従来どおりの見える場所に鍵穴があるメーカーも存在します。
トヨタは、2019年に登場した「ヤリス」や「カローラ/カローラツーリング」などほとんどの車種で、見える場所に鍵穴を設定しています。
鍵穴を見える場所に設置し続ける理由について、トヨタの販売店スタッフは次のように話します。
「鍵穴に関しては、確かに最近では見える場所になくても良いものといえます。しかし、万が一のトラブル時には慌てていることもあり、瞬時に分かる場所に鍵穴が設置されている方がユーザビリティの観点からいいとおもっています。
実際のデザインに関しては、お客さまに説明する際には簡単に緊急時の対応方法をお話できるので良いかもしれません。
また、スマートキーの電池切れなどでのエンジン始動方法は車種により異なりますが、一般的な国産車であればスマートキーをプッシュボタンに近づけて押すことで始動することが可能です」
最近では、以前のように鍵を差し込んで施錠・解錠する機会がなくなったことからクルマの鍵穴について意識することは減りました。
そのため、万が一のトラブル時にこそ見える位置にある方が良いかもしれせんが、今後電動化が進むなかでスマートフォンがスマートキーの代わりになる計画もあるといい、近い将来には鍵穴はなくなってしまうかもしれません。
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