日本では輸入車=ドイツ車のイメージが強いなか、根強い人気を誇るのがスウェーデンのボルボ。だが「好きな人」以外には現状が分かりにくいのも事実。そこで北欧のボルボの近況と日本でのラインナップをお伝えする。
※本稿は2023年10月のものです
文/ベストカー編集部、写真/VOLVO、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2023年11月10日号
新型EX30カッコよくない!? 今や中国企業傘下だけど実際どうなってんの!? ボルボ人気のヒミツがスゴいゾ
■イメージ一新! 今のボルボを大研究
日本では安全性能の高さで人気のボルボだったが、ここ最近はカーボンニュートラルのオピニオンリーダーとして有名だ
今のボルボはカーボンニュートラル戦略に邁進し、オピニオンリーダー的でもある。ここまでイメージが変わったメーカーも珍しい。しかしその一方で、ラインナップを含めて非常にわかりにくくなっているのも事実。ここではわずかな字数ながら濃い内容で現代のボルボを研究していく。
■日本のステーションワゴン人気の立役者
ボルボの日本での販売台数推移
ボルボは1926年にスウェーデンに誕生した自動車メーカーで、あと3年ほどで100周年を迎える。
質実剛健を地で行く堅牢なボディをはじめとする安全性能の高さで日本でも根強い人気を誇る輸入車ブランドのひとつだ。
1980年代の日本では、ワゴンボディ=商用バンのイメージが強かったなか、ステーションワゴン(ボルボではエステートと呼ぶ)人気の礎を築いた功績は大きい。
表は21世紀に入ってからのボルボの、日本での年ごとの販売台数をまとめたものだが、ある時期を除いてコンスタントに1万台から2万台の間を販売している。
今の主力は40シリーズと60シリーズ。ちなみに、ボルボの日本最多販売は、850、V70人気が炸裂していた1996年の2万4055台となっている。
■中国企業の傘下に入り大復活
ボルボ復活の口火を切ったのがCセグハッチのV40。当時の先進安全装備を標準化して日本でも大ヒット
そのボルボは1999年にフォード傘下に入り、プラットフォーム、エンジンなどの共用化により高効率化を進めていたが、リーマンショックで大打撃。前述の「ある時期」、というのがまさにこれだ。
ボルボにとってどん底状態だった2010年に、吉利(ジーリー)傘下入りを発表。新興の中国メーカーによる老舗の買収を不安視する声が多かったが、それも杞憂に終わり、ボルボは大復活を遂げた。
「お金は出すが口は出さない」吉利のバックアップにより、ボルボのオリジナリティが存分に発揮され魅力アップ。
吉利傘下後の初のモデルV40は世界初の歩行者エアバッグ採用をはじめ、衝突被害軽減ブレーキを安価に標準化するなどして世界的に大ヒット。デザインもかつての武骨さとは無縁の洗練されたものになったのも人気の要因だ。
その結果、日本でのボルボのイメージは、『頑丈で安全なワゴンメーカー』から、『オシャレな高級車メーカー』へと完全に昇華。
■有言実行の素早い電動化
ボルボの最新のBEV専用モデルがEXシリーズ。まずはEX30が販売される。外部充電できるがリチャージと命名されず
ボルボと言えば、自動車メーカーのなかでは、電動化に最も早く舵を切ったことでも有名で、『エンジンは4気筒以下で2L以下しか作らない」、「2030年までに完全BEVメーカーとなる」と宣言し、「当面の目標は2025年までに世界販売のBEV比率を50%にする」と鼻息が荒い。
しかし大風呂敷を広げているのではなく、目標達成のための動きは早く9月20日にはディーゼルの全廃を宣言し、2024年の早い段階でディーゼルエンジンの生産を終了する。
現在日本で販売されるボルボ車は、すでにディーゼルはなく、BEV、2L、直4ターボ+モーターのPHEV&48Vマイルドハイブリッド(MHEV)の3種類に集約。つまり、電動化率は100%。
ただしボルボの電動化モデルの代名詞である「リチャージ」、これが曲者だ。
リチャージ=BEVのイメージを持っている人は多いが、「リチャージ=外部から充電可能なモデル」を意味するので、BEVとPHEVともにリチャージの名称が与えられている。
その一方で最新のBEVのEX30にはリチャージの名称はつかない。このことが最近のボルボはよくわからない、と言われるゆえんだろう。
現在日本で販売しているボルボ車でBEVは、最新モデルのEX30、C40リチャージ(ボルボ初のBEV専用モデル)、XC40リチャージの3車種と意外に少なく、PHEVはXC60ほか合計6車種ある。つまり、リチャージと付くモデルは全部で8車種。
■前輪駆動から後輪駆動へ! BEVならではの大改良
XC40&C40リチャージは改良でFWDからRWDに変更!! BEVの利点が活かされた形だ
最近のトピックとしてはマイチェンでC40&XC40が前輪駆動(FWD)から後輪駆動(RWD)に変更されたことだろう。
両車ともツインモーターのAWDとシングルモーターのFWDをラインナップしていたが、リアモーターを残してRWD化。エンジン車では絶対無理なBEVならではの改良と言える。
そのほかでは、車内でYouTubeが見られるようにOTAによってアップデートを予定するなど積極的だ。
現在はクロスオーバー、SUV、エステート、クロスカントリー、セダンというラインナップを誇るボルボ。
当然狙いは、SUV&クロスオーバー系のBEVの充実となるが、そのあたりも抜かりなし。EX30の上級版、EX90はすでに海外で発売ずみで、あとはいつ日本導入されるかというレベル。ボルボの積極攻勢はまだまだ続くだろう。
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みんなのコメント
ボルボ大好きで以前も何台か乗り継いだことがあるけど、全体的に価格帯が上がり、かつ、燃費も悪く、一向に改善出来ていなかった。購買層のターゲットを上げたためと思われるけど、それにしてもね。 また、ニュースや本はBEVを熱心に取り上げて賞賛しているけど、実際の使用状態とは違う使われ方で、それで賞賛されてもね。購入される方は、自分の使用状況としっかり照らし合わせて購入しないと後悔すると思いますよ。