少し無骨な機械感が漂うクワトロ
アウディ・(Ur)クワトロでは、オペル・モンツァ FFのように、リアタイヤが外側へスライドするような挙動を楽しめない。1988年に2.2Lの後期型MBシリーズへアップデートした段階で、トルセン式ディファレンシャルを採用。その弱点は改められた。
【画像】オンロード×四輪駆動 アウディ・クワトロ オペル・モンツァ FF ヤリスからレヴエルトまで:現代の四駆スポーツ 全112枚
5気筒ターボエンジンのトルクは、最大75%までリアへ分配可能に。ドライコンディションでのアンダーステアも、大幅に軽減された。あいにく、今回は最後までウェット状態だったけれど。
インテリアは、クワトロがブラック基調。シートは硬めのクロスで包まれる。モンツァ FFも黒い世界だが、ベロア生地とウッドトリムで飾られ、豪華なグランドツアラー感を漂わせる。
低速域での乗り心地も、モンツァ FFの方が快適。防音性に優れ、3.0L直列6気筒エンジンのリニアなパワーを、しっとり味わえる。かといって、ロー&ワイドなプロポーション通り、スポーツカーらしさもしっかり備わる。
運転席からの視界は広く、ハイペースでの運転もしやすい。乗り比べてみると、モンツァ FFの方が挙動を予想しやすい。限界領域も、予め感じ取りやすいようだ。
クワトロは、低速域では少し無骨な機械感が漂う。シフトレバーとクラッチペダルのストロークは長めで、ステアリングホイールは理想より若干大きい。1980年代らしいターボラグは、滑らかな体験と相容れない。
6台しか製造されなかったモンツァ FF
しかし、ハードに攻め立てると才能が輝き始める。ターボブーストを保つ限り、5気筒エンジンは夢中にさせるパワーを繰り出す。シフトレバーのぎこちなさも、運転へ集中すれば気にならなくなる。
比較すると硬めのサスペンションは、英国の傷んだ路面を流暢にいなす。適度に引き締まり、充分しなやか。凹凸を均し、ある程度のボディロールを生むものの、フロントに荷重を移しながら左右へ活発に回頭していく。
コーナーの内側が盛り上がっていても、フロントタイヤが積極的に食らいつく。後輪駆動へ乗り慣れている人にとっては、新鮮な体験だろう。
加えて、クワトロは約20psも最高出力で勝り、遥かにパワフル。自然吸気のモンツァ FFの方が扱いやすいとしても、車重が軽く、その差は大きい。新車時代から、比較試乗で指摘されてきた事実だ。
この2台は、四輪駆動のスポーツクーペが、秀でた動的能力を発揮することを証明した。だが、モンツァ FFは市場を掴むことができなかった。1981年からの6年間に、6台しか製造されていないのだ。
四輪駆動化のコストが、約5500ポンドと安くなかった。モンツァ FFの英国価格は、当時で1万9363ポンド。アウディは、クワトロを1万4500ポンドで提供していた。
1981年のモーター誌の取材で、技術者のトニー・ロルト氏は次のように述べている。「アウディは、わたしたちの主張を受け入れ、素晴らしいクワトロを生み出しました。しかし、50:50のトルク分配率が正しいとは思えません」
世界ラリー選手権で活かされた技術と経験
スチュアート・ロルト氏は、モンツァ FFが自らにとっての成功作だったと考えている。「ラリーチームへのデモ走行は、今でも忘れません。それが、ビジネスの大部分を占めていました。ビスカス・カップリングのメリットを示すことが、重要だったんです」
FFデベロップメント社は、もっと多くのモンツァをコンバージョンしたいと考えていたはず。それでも、効果的で信頼性の高い四輪駆動システム技術を確立するうえで、一連のFFは極めて重要な役割を果たしてきた。
フォードRS200やシエラ XR 4x4iといった名車が、FFデベロップメント社の四輪駆動を採用。1990年代初頭の世界ラリー選手権では、スバル以外の全チームが、同社の技術や経験を頼ることになったのだ。
協力:ジム・ホフ氏、デレク・アンダーウッド氏、クワトロ・オーナーズ・クラブ
番外編:モンツァ FFの75%を所有するマニア
グレートブリテン島中東部のリンカンシャー州で農業を営み、クルマを愛するジム・ホフ氏は、世界屈指のオペル・モンツァ・コレクターだ。6台作られたモンツァ FFのうち、3台を所有しているのだから。
今回ご登場願った、FFデベロップメント社のデモ車両もその1台。1989年に放置された状態で発見した時は、誰かがフォード・シエラなどの四輪駆動システムを押し込んだ改造車だと考えていたらしい。
「ジェンセンFFくらいしか、古い四輪駆動のスポーツクーペを知りませんでした。FFデベロップメント社が、幾つかのモデルを製造していたことも。資料を確認し、非常に興味深いモデルだと知ったんです。それが、購入の決め手でした」
彼のガレージには、4台のアストン マーティンと、フィアット・パンダも停まっている。モンツァ FFは、人とは違うクルマに載りたいという、ジムの欲求を明らかに満たした。更に2台を迎え入れるほど。
6台のモンツァ FFのうち、1台は事故で失われた。もう1台は盗難後、行方不明になっている。つまり、生き残ったのは4台。彼の3台は、走れる状態が維持されている。
シルバーの1台は、現存する唯一のMT車だ。「1993年のクラシックカー・イベントで、ロルトさんとお話する機会がありました。最終的には、沢山のスペアパーツをいただいだんですよ」
現在の問題は、一般的なモンツァ用部品だという。マスエアフロー・センサーやブレーキキャリパーは入手が極めて困難で、多額の費用を投じてリビルドしたそうだ。
アウディ・クワトロ オペル・モンツァ FF 2台のスペック
オペル・モンツァ FF(1981~1986年/欧州仕様)
英国価格:1万9363ポンド(新車時)/5万ポンド(約925万円/現在)
生産数:6台
全長:4690mm
全幅:1730mm
全高:1380mm
最高速度:199km/h
0-97km/h加速:9.7秒
燃費:6.0km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1491kg
パワートレイン:直列6気筒2968cc 自然吸気SOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:182ps/5500rpm
最大トルク:25.2kg-m/4200rpm
トランスミッション:3速オートマティック/4速マニュアル(四輪駆動)
アウディ・クワトロ(Urクワトロ/1980~1991年/英国仕様)
英国価格:1万9363ポンド(新車時)/5万ポンド(約925万円/現在)
生産数:1万1452台
全長:4404mm
全幅:1723mm
全高:1344mm
最高速度:217km/h
0-97km/h加速:7.3秒
燃費:6.7km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1290kg
パワートレイン:直列5気筒2144cc ターボチャージャーSOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:200ps/5500rpm
最大トルク:28.9kg-m/3500rpm
トランスミッション:5速マニュアル(四輪駆動)
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