セダン冬の時代と言われる今、「次期モデルはSUVになる!?」という噂があるクラウン(セダンも次期型はFF車になるという情報もある)。
その噂の種は今年4月の上海モーターショーで公開された中国向けのクラウンクルーガーという可能性もあるが、もし次期モデルでSUVが設定されるなら、それはクラウン史上最も大きな変革となるだろう。
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というのも、クラウンはこれまでの歴代モデルでも、新しい技術やスタイルに挑んできたトヨタの高級車としての歴史がある。
ここでは、トヨタクラウンが挑戦してきた歴史に焦点を当て、その歴代モデルを振り返っていきたい。
文/片岡英明 写真/TOYOTA、ベストカー編集部
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■クラウンは初代モデルから新しい技術が投入された
日本の風土に根ざしたトヨタの高級車が「クラウン」だ。誕生したのは1955年、日本の年号では昭和30年の1月である。
第二次世界大戦での敗戦から10年になるこの時期、日本の自動車産業は欧米の足元にも及んでいなかった。だから日産やいすゞ自動車などは経験豊富で技術レベルも高いヨーロッパの老舗メーカーと技術提携を結び、設計と量産技術を学んでいる。
だが、トヨタは違う。外国の自動車メーカーの技術力に魅力を感じながらも独自開発にこだわり続けたのだ。
初代クラウンを見れば、トヨタの首脳陣と設計陣の強い意気込みが伝わってくる。言うまでもなく、クラウンは日本で初めての本格的な高級セダンだ。常識的に考えれば、手堅い設計を取るはずである。
だが、驚いたことに積極的に新しいメカニズムを導入していた。大量生産を実現するためにトヨタ初のプレス技術を用い、シャシーも乗用車用に専用設計としている。また、フロントサスペンションは、日本の量産車として初となるダブルウイッシュボーンの独立懸架だ。
初代クラウンは、日本髪の花嫁が乗り降りしやすいように観音開きのドアを採用するなど、日本ならではの「おもてなし」を前面に押し出した設計を特徴とする。このユーザー第一主義の考え方は、最新のクラウンにまで受け継がれている美点のひとつだ。
1955年に誕生した初代トヨペット クラウン。トヨタはこのクルマをオマージュして観音開きを採用したトヨタ オリジンを2000年に発売している
また、保守的と見られているが、初代がそうであるように歴代のクラウンは積極的に日本初、世界初のメカニズムを盛り込んでいる。それは乗る人すべてが快適に、安全にロングドライブを楽しむことを最優先しているからだ。
トヨグライドと名付けた2速の半自動ATも日本で最初に採用し、注目を集めた。
■1962年2代目から1979年6代目のクラウン
1962年秋に初めてモデルチェンジを行い、2代目は4灯式ヘッドライトの伸びやかなフォルムとなる。2代目で特筆したいのは、ワイドボディに日本初のV型8気筒エンジンを搭載したVIPセダン、クラウンエイトを仲間に加えたことだ。
1965年夏には2Lの直列6気筒SOHCエンジン搭載車を投入。これ以降、6気筒エンジンを積んでいないと高級車と呼ばれなくなる。また、トヨグライドは日本で初めてフルオートマチックへと進化した。
3代目クラウンは、国際商品として通用する高品質と優れた安全性能を売りに、1967年9月に登場する。オーナーカーとしての性格を強め、快適性を大きく向上させた。そのために日本で初めてペリメーターフレームを採用している。
1968年秋には角形ヘッドライトとしたクラス初の2ドアハードトップを送り出した。時代に先駆けてパワーステアリングやパワーウィンドウも装備している。
1971年に登場の4代目は、個性的なエクステリアデザインが話題になった。が、メカニズム面でもっとも注目を集めたのは、電子制御燃料噴射装置のEFIを採用してクリーン性能と燃費を向上させた2.6Lの6気筒エンジンだ。
1971年発売の4代目クラウン。この代から「トヨタ クラウン」となる。4代目は斬新なデザイン「スピンドルシェイプ」で話題となった
また、時代に先駆けて3速の電子制御ATや横滑り防止の後輪ESC(電子制御スキッドコントロール)も搭載する。
1974年秋に5代目を投入したが、衝突時の安全性を重視してセンターピラー付きの4ドアピラードHTとした。驚いたことに、ロイヤルサルーンのブレーキはフロント4ポッド式の4輪ベンチレーテッドディスクだ。
世界で初めてATをオーバードライブ付き4速タイプにし、日本で初めて車速感応式のパワーステアリングを採用したのも、この5代目クラウンの偉業のひとつと言えるだろう。
6代目は新しいメカニズムを積極的に採用し、スポーティ度を一気に高めた。ターボ搭載車や2.8Lの直列6気筒DOHCエンジン搭載車を投入したことによりファン層を大きく広げている。
■1983年「いつかはクラウン」の7代目から1999年11代目まで
1983年には「いつかはクラウン」のキャッチコピーが話題をまいた7代目がベールを脱いだ。今につながる電子デバイスを積極的に導入し、ハイソカーブームを牽引した。
1983年に発売された7代目クラウン。「いつかはクラウン」のキャッチコピーは"頑張れば手のとどく高級車"のイメージをつくった
日本初としては、スーパーチャージャー付きエンジンやABSの前身となる4輪ESCを採用し、メモリー付きチルト&テレスコピックステアリングは世界初の試みだ。スーパーホワイトのボディカラーも大人気で、これは社会現象にもなっている。
1987年登場した8代目では4ドアHTにワイドボディを設定し、DOHCエンジンは4バルブ化した。また、4LのV型8気筒エンジンやエレクトロマルチビジョン、ナビシステムの前身となる世界初のCDインフォメーションに加え、電子制御エアサスペンションも投入し、快適性と先進性に磨きをかけている。
トラクションコントロールは日本車として初採用だ。1990年夏には新設計の2.5L直列6気筒エンジンを搭載し、これも話題になる。
バブル期に開発された9代目ではマジェスタを加え、4輪ダブルウイッシュボーンのエアサスペンションによって重厚な乗り心地と軽快な走りを両立させた。
また、統合制御の新しい電子制御5速ATやマジェスタにクラウン初の4WDモデルを設定し、新境地を切り開いている。エレクトロマルチビジョンもGPSナビ付きに発展した。
10代目は慣れ親しんだフルフレーム構造からモノコック構造に変更し、走りの質感と実力を高めている。車両安定制御システムのVSCを搭載し、前席にエアバッグを標準装備するなど、安全性はさらに進化した。
1999年秋には11代目にバトンタッチし、2.5Lと3.0Lの直列6気筒は筒内直接噴射のD-4エンジンになっている。このクラウンで見逃すことができないのは、世界で初めてマイルドハイブリッドシステムを実用化したことだ。
■2003年12代目の「ゼロクラウン」から現行15代目
2003年12月に登場した12代目の「ゼロクラウン」では既成概念をリセットし、新たな伝説に挑んでいる。プラットフォームを一新し、世界で初めて歩行者傷害軽減ボディ構造を採用した。
2003年に発売した12代目クラウン。「ZERO CROWN~かつてゴールだったクルマが、いまスタートになる~」というキャッチコピーでユーザー層の若返りを模索しはじめた
また、直噴の3L V型6気筒DOHCエンジンにはシーケンシャルシフト付きの6速ATを組み合わせている。夜間運転支援システムのナイトビューや減衰力制御付き電子制御サスペンション(AVS)も注目を集めた。
2008年に登場した13代目は画期的なTFT液晶ファイングラフィックメーターを時代に先駆けて採用し、世界で初めてドライバーモニター付きプリクラッシュセーフティシステムも導入する。また、3.5L V型6気筒エンジンにモーターを加えたハイブリッド車(THSII)も投入した。
14代目は2012年12月に、大胆なフロントマスクで登場する。ハイブリッド車は2.5Lの4気筒エンジンにモーターの組み合わせだ。サスペンションも新設計としている。
2018年6月に登場した最新の15代目クラウンは、スマホ連携機能を充実させ、各種スマホアプリを活用できるようになった。
いつの時代も旺盛なチャレンジ精神で時代をリードしてきたのがクラウンだ。ここ数年、セダン人気が落ち込むとともに輸入車の販売攻勢にもさらされるようになった。
苦戦を強いられ、次期モデルではプレミアムSUVの投入も噂されている。が、これからも伝統の強さに加え、挑戦の姿勢と攻めの姿勢を貫き、日本を代表する高級車の新しい姿を見せてくれるだろう。
ベストカーが制作した次期型クラウンSUVの予想CG
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