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検証、フェラーリV8モデル。GTC4 ルッソTと488 スパイダーを徹底比較! 【Playback GENROQ 2018】

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検証、フェラーリV8モデル。GTC4 ルッソTと488 スパイダーを徹底比較! 【Playback GENROQ 2018】

Ferrari GTC4 Lusso T × 488 Spider

フェラーリ GTC4 ルッソT × 488 スパイダー

検証、フェラーリV8モデル。GTC4 ルッソTと488 スパイダーを徹底比較! 【Playback GENROQ 2018】

8気筒の愉しみかた

同じV8でありながら異なるパワートレインを用意するフェラーリ。FRとミッドシップが生み出す違いは走りなのか、それとも居住性なのか。GTC4 ルッソTと488 スパイダーを乗り比べて、その真意を探る。

「かのフェラーリまでもが採用に踏み切ったダウンサイジング」

2000年代半ばから市場にその姿を現し始めた、ダウンサイジングのガソリンターボエンジン。欧州のメジャーブランドを中心に、アッという間に普及し、10年代も初めの頃になると、各社こぞって搭載モデルやグレードを増やすようになった。

排気量を下げつつ(ダウンサイジング)も、過給機と直噴を組み合わせることで、パフォーマンスの向上と炭酸ガス排出の抑制を同時に図ろうというコンセプトだ。

当初は実用車が中心であったダウンサイジング・ターボエンジンも、次第に高級車の分野へとその潮流が伝播していき、14年にはついに、かのフェラーリまでもが、その採用に踏み切った。最高出力560ps&最大トルク755Nmを発する90度V8ツインターボエンジンF154型をフロントミッドに積んだ、カリフォルニアTの登場である。

「GTC4 ルッソにF154ユニットを積んだFRグレードを追加するという驚きの戦略」

その後、ミッドシップ458シリーズの後継となった488シリーズにも670ps&760NmのF154が搭載されるに至って、F40以来となるV8ターボの跳ね馬ロードカーは、完全に、最新フェラーリラインナップの“主力クラス”となった。

15年登場の488シリーズに続き、同系統のターボエンジンを積んだのは、意外にも、GTC4 ルッソであった。そもそもFF(フェラーリ・フォー)の後継であり、伝統の12気筒と革新の4WDシステム、そして個性的なシューティングブレークスタイルを特徴とするこのフロントエンジン・4シーターの跳ね馬に、610ps&760NmのF154ユニットを積んで、FRの追加グレードとして売り出すという戦略には、多くのフェラーリファンが驚いたものだった。

「カリフォルニアTに始まった、F154 V8ツインターボモデルを試す」

ちなみにGTC4 ルッソTに搭載されているF154は、カリフォルニアTと同じ82mmのストロークを持つ3855cc仕様であり、83mm&3902ccのミッドシップ488用とは若干、仕様が異なっている。ボアは86.5mmで共通だ。

既に発表されているカリフォルニアTの後継モデル・ポルトフィーノに搭載されるエンジンも、もちろんF154。最新バージョンで、ルッソTよりわずかに最高出力は低い、600ps&760Nm仕様である。

カリフォルニアTに始まった、マラネッロ製F154 V8ツインターボエンジンの最新の流れをかいつまんで説明してみたが、今回連れ出したのは、そのうち、ミッドシップの488 スパイダーと、FR4シーターのGTC4 ルッソTの2台だ。

「常に背中とオシリがエンジンと直結しているような感覚」

まずは、ソリッドの紺色(ブル・スコツィア)でまとめられた488 スパイダーに乗り込む。オープンにして、背後に収まったF154をより“身近”に感じたいという欲求を抑え、まずはクローズドのまま走り出す。ルッソTとできるだけ同じ条件で乗り比べたい、というのは方便で、取材日のハコネは吐く息も凍るんじゃないかと思うほどに寒かったのだ。

エンジンを背負った格好になるミッドシップカーだけあって、広いハコネのワインディングロードでは、クルマがとても小さく感じられる。常に背中とオシリがエンジンと直結しているような感覚があり、そのぶん、ステアリングホイールから先のフロントセクションの存在感は希薄だ。つまり、軽い。それゆえ、動きは鋭い。ミッドシップカーならでは、だ。

希薄でかつ動きがシャープ、とはいうものの、手応えそのものはしっかりとあるから、不安なく駆け上がっていける。このあたりは、458以降の世代に共通する美点で、430以前からの進化を実感する場面でもあった。

「素晴らしい制御が効きながらスリリングな恐怖感を抱かせる」

3000rpmあたりで早くもピークトルクに達するが、そこに至るまでのパワーフィールは、ターボカーとしては異例に線形だ。458のそれをはるかに凌駕する立ち上がりで、一瞬ののけぞりこそあるものの、そこからはまるで大排気量自然吸気エンジンのように力を発揮する。意図的に低回転域のトルクを抑えることで、ターボ風味を打ち消した。

サウンドが変わり始める3000rpm以降の力の出方はまったく自然吸気エンジンと変わらず、一気に6500rpmまでまわっていく。そこから8000rpmまで最高出力を保つため、伸びやかさに欠けると感じる向きもあるだろうが、6500rpmの時点ですでに670psのピークパワーに達しており、もはやエンジン単体のフィールを楽しんでいるような余裕など、物理的にない。

「回してしまえば搭載位置は関係ない。コンパクトなV8ターボならではだ」

ルーフを開ける気にはなかなかなれないので、リヤガラスだけを下げて、エンジンをもっと近くに感じてみることに。スパイダーの特権だ。

確かにターボ特有の雑音が低回転域の一瞬に聞こえてくる。けれども、それは本当に些細な躓きにすぎない。さざ波を打際もろとも大波がさらうがごとく、ターボカーとは思えない精緻で力強いエンジンフィールに、背中から吸い込まれてしまうような感覚に襲われるからだ。回してしまえば、それはもう、“イッツ・ア・フェラーリ・ワールド”なのである。

「ルッソTのハンドリングもまた、極めてアジャイルなもの」

ひとしきりミッドシップカーらしい打てば響くフェラーリの世界を楽しんだのち、グリジオ・イングリッドのGTC4 ルッソTに乗り換えた。

V8エンジンの目覚める音からして、抑制が効いている。随分と温厚に思えたけれど、それはあくまでも488 スパイダーと比較しての話であって、世間の水準からすれば、しっかり猛々しく、運転気分をそそってくる。とはいえ、488 スパイダーほどにはニンブルな動きをみせないだろうよ、などと高をくくって走り出すと痛い目に遭いそうだ。なぜなら、ルッソTのハンドリングもまた、極めてアジャイルなものだからである。

秘密は、やはり長いノーズの前輪軸より後方、つまりフロントミッドの低い位置にF154エンジンを押し込めているという事実に尽きる。V12を積み、特殊な4WDシステムを採用したルッソに比べ、女性ひとりぶんほど前が軽くなっている。前後重量配分には1ポイントの影響しか与えていない、とはいうものの、手応えははっきりと違っている。

「前にあるはずのF154の存在を身体で感じるのは、FRゆえに後ろからだ」

ドライブフィールは、どちらかというとカリフォルニアTに近い。長いノーズが、まるで伸ばしたドライバーのウデのように自在に動き、一方で腰は力強い後輪の蹴りを常に意識し続ける。右足の加減次第では、ときにスリリングな走りになり、乗り手を慌てさせる。12気筒のルッソでは見事に抑えられていた感情が、8気筒版でついに解放された、という感じだ。目をつぶって運転できたとして、ルッソTとルッソ、カリフォルニアTを乗り比べれば、きっと、多くの人が「T」同士の血の近さに気づくことだろう。

サウンドボリュームが抑えられているとはいえ、前にあるはずのF154の存在を身体で感じるのは、FRゆえに後ろからだ。力のマスを、はっきりと乗り手の背中より後ろに感じる。

精緻に、そしてよどみなく回るエンジンフィールは488のそれと変わらない。重量があるぶん、ドライバーにもエンジン回転を楽しむ余裕が生まれる。単体の性能はもちろんルッソT用にアレンジされているが、アクセルを踏み込んだ状態でそれを感じさせない方向にマラネッロはチューニングしているのだろう。12気筒版に比べても、大きさや重量の違いから生まれるマイナス点を感じさせないのだから、完成度は高い。

「走りのテイストはGTカーというよりも、ピュアスポーツだ」

もっとも、その分また別の面で12気筒ルッソとは異なるキャラクターを有しているのも事実だ。例えば、グランドツーリングカーとしての“安楽さ”である。ルッソは、当代一級のGTだ。スポーツカーとしてももちろん使えるが、どちらかというと、ゆったりクルージングで使うのが似合っている。ルッソTは違う。F12やカリフォルニアTに近い。後方に十分な席もあるけれど、走りのテイストはGTカーというよりも、ピュアスポーツだ。つまり、フェラーリ史上初となるFR V8の4シーター、ルッソTは、同時に史上最もオールマイティな跳ね馬らしいスポーツカー、なのだった。

ハコネを攻め込んでいるうちに、ルッソTには徐々に自分のものになっていく感覚があった。次第にボディの大きさを忘れ、ドライビングを心から楽しめるようになっていく。ああフェラーリに乗っているんだ、という昂る気持ちを味わう余裕を持ちながら。

カリフォルニアTやF12に近いドライブフィール、とは言うものの、そこまでエキセントリックな反応を示すFRでないこともまた、じっくりと楽しめる大きな要因だろう。ある意味、ルッソTは、誰もが安心して踏んでいける、けれども最もフェラーリらしいスポーツカー、なのかも知れない。

「コンパクトなV8ターボエンジンを採用したからこそ、成り立つ芸当」

その点、センターミッドシップの488シリーズは、素晴らしい制御が効いてなお、踏み込んだ瞬間からスリリングな味わいで、乗り手の能力をあっという間に超えてしまうのではないかという恐怖感を常に抱かせる。それがまた、ミッドシップの高性能スポーツカーの魅力ではあるのだけれど。

背負っているか、両手で抱え込んでいるか、の違いこそあれ、ドライバーとの距離が近く、触れるモノ(エンジン)は十分に熱い。それは、回せば回すほどに小さくなっていく。小さくなってしまえば、しまいに背中にあろうが両手にあろうが、変わらなくなる。それがつまり、いずれもフェラーリになっていくということだ。

コンパクトなV8ターボエンジンを採用したからこそ、成り立つ芸当だったと言っていい。

REPORT/西川 淳(Jun NISHIKAWA)
PHOTO/篠原晃一(Koichi SHINOHARA)

【SPECIFICATIONS】

フェラーリ 488 スパイダー

ボディサイズ:全長4568 全幅1952 全高1211mm
ホイールベース:2650mm
車両重量:1525kg
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3920cc
最高出力:492kW(670ps)/8000rpm
最大トルク:760Nm(73.2kgm)/3000rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(リム幅):前245/35ZR20(9.0J) 後305/30ZR20(11.0J)
最高速度:325km/h
0-100km/h加速:3.0秒
燃料消費率:11.4L/100km(EU複合モード)
CO2排出量:260g/km(EU複合モード)
車両本体価格:3450万円

フェラーリ GTC4 ルッソT

ボディサイズ:全長4922 全幅1980 全高1383mm
ホイールベース:2990mm
車両重量:1865kg
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3855cc
最高出力:448kW(610ps)/7500rpm
最大トルク:760Nm(73.2kgm)/3000-5250rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(リム幅):前245/35ZR20(8.5J) 後295/35ZR20(10.5J)
最高速度:320km/h
0-100km/h加速:3.5秒
燃料消費率:11.6L/100km(EU複合モード)
CO2排出量:265g/km(EU複合モード)
車両本体価格:2970万円

※GENROQ 2018年 4月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。

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  • フェラーリのこれまでのエンジンって炭酸ガス出してたんだ?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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