先日、福井県で自動運転レベル4(特定の走行環境条件下(限定領域)において、運転操作のすべてを自動運行装置が行う状態)で走行するクルマによる移動サービスが始まった。交通手段が限られる地域でこのような移動サービスが充実することは、人口の高齢化が進むなかにおいてはもちろん、地方の活性化や環境負荷の低減という面でも、有意義なものだ。
この自動運転レベル4の件とは、ちょっとアプローチが違うが、40年以上まえの1981年に登場した、ホンダ「初代シティ」と「モトコンポ」のような組み合わせも、環境負荷低減であったり、地方の活性化に貢献できるのではないだろうか…??
「モトコンポ」ご存じですか? 今こそ復活を願いたいシティ+バイクの先進性
文:吉川賢一
写真:HONDA
「背高コンパクト」の先駆けだった、初代「シティ」
初代シティは1981年11月に登場した、3ドアハッチバックのコンパクトFFだ。当時のホンダの主力コンパクトであったシビックよりも小さいサイズであったが、全高を高くしたハイトコンパクトのパッケージングを採用したことで、十分な室内空間を確保していた。パワートレインは、1.2Lの直4エンジンに5速MTもしくは3速ATを組み合わせ、サスは前後共に独立懸架ストラット式を採用。最小回転半径は4.5mと小回りにも優れ、車両重量も700kg弱と軽量だった。
いまでこそ、背高コンパクトは広く普及しているが、当時はこの手のデザインを採用したコンパクトは皆無。この広くて使いやすい室内がうけ、幅広いユーザーに支持されていた。
1981年11月に登場した、3ドアハッチバックの初代シティ。当時のホンダの主力コンパクトであったシビックよりも小さいが、そのぶん上側にのばしたハイトコンパクトのパッケージングを採用した
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初代シティのラゲッジスペースに収めたバイク「モトコンポ」
その初代シティのトランクスペースに収めることを前提に開発されたのが、全長1185mm程度のコンパクトスクーター「モトコンポ」だ。装備重量で45kgほどと(バイクとしては)軽量で、大人の男性であれば積み込める重量。外観も、折り畳んで格納できるハンドルやシート形状となっていたほか、ガソリンが溢れないよう完全密閉タンクや逆止弁を使うなど、工夫されていた。
49ccの空冷2ストロークエンジンは、ぶっちゃけ公道を走るのは辛かったが、ホンダによると、リゾート地の周辺探索に使ったり、テニスコートでドリンクの買い出し、シティでサーキットに乗り付けてピットウォークに使う、といったシーンを想定していたという。何より、四角くて可愛らしいボディが初代シティのラゲッジスペースに収まるのだから、当時は驚きで迎えられていた。
2019年4月のオートモビルカウンシルにて公開された、初代シティとモトコンポ。中央の赤い箱は、1979年11月に発売された携帯型発電機のデンタ
いまこそ、クルマとマイクロモビリティの組み合わせを提案するべき!!
クルマで出かけた先で、モトコンポのようなマイクロモビリティを使うという方法は、環境負荷低減が求められるいまの時代にこそ欲しい組み合わせだ。電力を多く必要とする、大きくて重いクルマをいちいち動かすよりも、ちょっとの距離であれば、こうしたマイクロモビリティで移動したほうが省エネだし、機動力もあって非常に便利。乗員分の台数を載せて旅に出れば、旅先で、それぞれが自分の好きな場所へ行くことだってできる。
モトコンポサイズだと乗員分の台数を載せるのは厳しいかもしれないが、昨今流行りの電動キックボードもよいだろう。BEVであれば、クルマを充電している間に電動キックボードで買い出しにいったり周囲を散策したりもできるし、帰ってきたあとは、電動キックボードをクルマへ格納ついでに、充電することだってできる。荷室の床下に収納して隠すのは、ホンダが得意とする技術だ。
すでに40年以上まえに、クルマとマイクロモビリティを組み合わせるという発想を実現していたホンダだが、この初代シティとモトコンポ、そして1970年代に活躍した携帯型発電機のデンタを、ホンダは、2019年に4分の1スケールの模型で復活させている。目的は、当時の2Dの手書きの図面を、現代の3Dの設計データとしてつくり直して、ライブラリー化するためだそう。実物を隅々まで精密に測定し、残っていた手書きの設計図と照らし合わせながら、3Dモデリングをしていったそうだ。
もしや、なんらかのプロジェクトで使うために(3Dデータが)必要だったのでは…と勘ぐってしまうが、ありえなくもない話。若者から高齢者まで、誰でも安心かつ安全に利用することができる電動マイクロモビリティとの組み合わせで登場してくれたら、可能性はさらに広がる。続報に期待したい!!
初代シティ、モトコンポ、デンタを3Dの設計データとしてつくり直し、4分の1のスケールモデルを製作したホンダの有志
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右側にはちゃんと滑り止めのストッパーが付いていました。