老犬に新しい芸は教えられないという言葉もあるが、40歳を迎えたばかりのフェルナンド・アロンソの”芸”は今でも最高レベルだということを、彼は第11戦ハンガリーGPで全世界のF1ファンにまざまざと見せつけた。
アロンソは大きくパフォーマンスが上回るルイス・ハミルトン(メルセデス)を10周に渡って抑え込み、チームメイトのエステバン・オコンの優勝に貢献したのだ。
■F1初優勝のオコン、王者ハミルトンに立ちはだかったアロンソに感謝「この勝利は彼のおかげでもある!」
アロンソは自身が衰えていないばかりか、F1やインディカー、WEC(世界耐久選手権)で培った経験のおかげで、F1時代初期よりもはるかに優れたドライバーになっていると考えている。
ハンガリーGPの前に行なわれたmotorsport.comを含む一部のメディアとのインタビューの中で、アロンソは2018年以来のF1復帰にあたって、スピードに慣れるまでに予想以上の時間がかかったことを認めつつ、F1では年齢は”単なる数字”でしかないと説明している。
「僕は、(F1のスピードに慣れるまで)3~4レースくらいだと想定していた」と、アロンソは語った。
「イモラが第2戦にあることは知っていた。みんなは昨年の9月か10月に走っていたけど、僕にとっては(2006年サンマリノGP以来)初めての経験だった」
「第3戦のポルティマオ(ポルトガルGP)、第4戦のバルセロナ(スペインGP)までに、おそらく100%の状態になると考えていた。そして、バルセロナよりも2レース多くかかってしまったんだ」
彼は自分がF1に参戦していない間、テレビでグランプリを見ていて自分の方がもっと良い仕事ができるのではないかと考えたこともあったと明かした。しかし、実際にF1のコックピットに戻ってみると、謙虚な気持ちになったという。
「F1から離れているときやテレビでレースを見ているときは、オーバーテイクの仕方やパフォーマンス、スタートの仕方などを変えられるのではないかと思うものだ」
「クルマに戻ってきたら、あることを改善し、他の人から学ぼうとすることで、自信を持つことができる。それが最初の2、3戦で僕がやったことだ。僕はまだ、クルマの中で100%ではないと思っている。シルバーストン(第10戦イギリスGP)では、タイヤマネジメントや戦略を学ぶことができた」
どれだけ、最高のレベルで走り続けることができるかと訊かれると、アロンソは今なら自分が初めてF1王者に輝いた2005年、23歳の自分を”片手で負かす”ことができると話し、まだまだチャレンジを続けると語った。
「僕の実感はおそらく、外部の人にとっては真逆に思えるかもしれない。ソーシャルメディアでも、年齢とスポーツマンが発揮できるパフォーマンスについて混乱していると思う」
「これはツール・ド・フランスやオリンピックではない。サッカーでもない。23歳でパフォーマンスのピークに達するようなスポーツじゃないんだ」
「今、23歳の自分とレースをしたら、片手で彼を負かしてしまうだろう。そう、当時と同じではないのだ。若ければ速いというものではない。ストップウォッチはそういう仕組みじゃないんだ」
「新しいドライバーを見たい、新しい希望を見たい、毎週末に目にする名前から解放されたいと思っている人たちもいる」
「でも僕は自分が(レースを)非常に長く続けると考えている。それがF1であれば素晴らしいことだけど、F1以外でもチャレンジを追求し、できればモータースポーツ界で最も完成度の高いドライバーになりたいと思っている」
アロンソの挑戦が、彼とチームメイトであるオコンのさらなる成功につながるかは、アルピーヌが新しいレギュレーションに対応し、有能なパッケージを製作できるかどうかにもかかっている。
アロンソはエンストンにあるアルピーヌのファクトリーで来季に向けた開発プロジェクトの進捗状況を熱心に観察してきたが、チームの能力を示唆するには時期尚早だと言う。
「来年のプロジェクトに取り組んでいるが、まだ非常に初期の段階で比較するものがないため、誰もその評価を知ることができない」とアロンソは説明した。
「僕たちは皆、少しばかり現実的でありながらも、2月を待ち望んでいる。なぜならマシンが公開されたとき、多くのサプライズがあるだろうからだ」
アロンソは、アルピーヌと2年契約を結んでいるが、チームに特別な要求を行なうことなく、契約を結んだと明かした。
「僕はあまり交渉しなかった。チームが提示してくれたものに満足していたんだ」
「給料も含めて、何もディスカッションはしなかった。僕はパフォーマンスを発揮するため、チームを助けるためにここにいる。何かを求めるためではないんだ」
「自分はキャリアの中で、そういう段階ではないんだ」
ルノーからアルピーヌへとブランドを変更し、なんとしても結果を残したいチームにとって、アロンソは非常に重要な存在だ。彼の持つ経験と速さは、新時代を迎える2022年以降も極めて貴重なモノになることは間違いないだろう。
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