ホンダ N-VAN e: 「乗用車仕様があってもいい」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

乗用車仕様があってもいい

2024.12.25

年式

2024年10月〜モデル

総評

Nバンをベースとした軽商用BEV。NｰBOXに対してシンプルかつ実用性にすぐれた仕上がりを特徴とし、なかでも空間効率を最大限に生かしたラゲッジルームはN-VANガソリン車と同様の積載量を確保する。さらに航続距離もこのクラスとしては長く、ちょっとしたドライブにも便利。EVなので走行時の静粛性にもすぐれ、軽ターボを上まわる力強い走りも確かめられる。自宅で充電ができるのであれば、買い物や通勤にもよさそうだ。

満足している点

ガソリン車と同じく、運転席以外のシートをフロアに収納可能で、ほぼフラットなフロアが得られること。とくに助手席側は2m以上の奥行きが得られ、大きく開くピラーレスの助手席側ドアからは、かさばる荷物が入れやすい。水平基調のインパネはデザインこそ無骨でも、使い勝手はなかなかいい。上質な乗用車に慣れたユーザーには新鮮に映るかも？

不満な点

助手席はスライド＆リクライニング不可。チョイ乗りには悪くないが、長時間ドライブには向いていない。後席もスペースは最小限でシートも小ぶり。商用バンなので割り切りが必要だ。

デザイン

4

スタンダードモデルのe:L4と上級グレードのe:FUNではフロントマスクが異なり、後者のほうが目力のある精かんなまとまり。内装パネルは形状や質感を使い勝手優先で仕上げている。メーターは7インチフル液晶、さらにスイッチ式ギヤセレクターを採用するなど、ガソリン車とは異なる新しさも垣間見える。内装色もe:L4がグレーなのに対してe:FUNはカジュアルなアイボリーとなる。

走行性能

5

試乗したe:FUNは、軽ターボ並みの64馬力と1.5Lガソリン車を上まわる162Nmの最大トルクを発生するモーターを搭載。車両重量は1140kgと重くなったが、モーターはスムーズかつ力強く、ECONモードで走っても力不足を感じることはなかった。バッテリーをフロアに搭載する低重心のボディは高速道路や山岳路でも安定した走りをもたらし、追い越し車線の流れに乗っても不安な印象を与えない。

乗り心地

4

装着されていたタイヤは専用のヨコハマBlue Earth Van RY55（145/80R13）。指定空気圧は前300kPa、後350kPaと高めだが、乗り心地は意外なほど悪くなかった。静粛性はガソリン車をリードするが、高速走行ではロードノイズや風切り音がやや目立っていた。

積載性

5

積載能力の高さはN-VANガソリン車と遜色のないレベルにある。2名乗車時の荷室フロア長は1585mmを確保し、さらに助手席を収納すると2645mmに延びる。荷室床面地上高もライバルをリードする540mmの低さだ。運転席側に2人が座れるタンデム2人乗車仕様のほか、運転席以外を取り払った1人乗りのe:G仕様もラインアップ。用途に応じてシート数を選べるのはN-VANガソリン車と同じだ。

燃費

4

WLTCモード燃費は245km。試乗時の電費は青山〜木更津間の往路で7.3kWh、往復で6.8kWhと良好。走り方にもよるが、実際に200km近い走行も可能なようだ。普通充電と急速充電に対応しており、出力50kWの急速充電ならば約30分で80％の充電が可能。

価格

4

e:L4はおよそ267万円、e:FUNは約292万円。前者の急速充電機能は11万円のオプションなので、両グレードの実質的な価格差は14万円といったところ。国や地方自治体からの補助金が受けられるのであれば、N-VANガソリン車にプラスαの価格で購入することが可能だ。ガソリンスタンドの少ない地域では非常に便利なツールとなるのではないか。この完成度ならばN-BOXの1グレードとして設定されても人気が出そうだ。