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【本質を味わうには覚悟も必要】ポルシェ911カレラS 最終回 長期テスト

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【本質を味わうには覚悟も必要】ポルシェ911カレラS 最終回 長期テスト

積算1万5019km 見にくいスピードメーター

text:Andrew Frankel(アンドリュー・フランケル)

【画像】カレラS(991型)とターボS(992型) 全101枚

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)


ポルシェのオーナーの中に、メーターの並び順の良し悪しを考えた人はいるだろうか。スピードメーターは片側に寄せられ、やや判読しにくい。しかも大きなレブカウンターの中にはデジタルのスピードメーターが付いているから、ほとんど不必要といってもいい。

これまで1万km近く一緒に走ってきたが、有用だと感じたことはまだない。

積算1万6465km 変化するポルシェにとっての911

自動車業界の激動の時代に生きていることを実感したければ、ポルシェ911を見ればいい。何十年にも渡って、911はポルシェの主力選手だった。しかし2017年のデータでは、911はポルシェ総売上の13%を占めるに過ぎないモデルになってしまった。

911にはクーペだけでなく、コンバーチブルやタルガも存在し、MTかPDKも選べるし、後輪駆動か4輪駆動かも選べる。さらにモータースポーツ直系の仕様やGT3だって用意されている。一方で、ポルシェ・マカンのボディスタイルは1つしかないのに、911の3倍も売れている。

ポルシェは年間24万6000台ものクルマを顧客へと届けている。世界中、ほとんどすべての価格帯で、属するモデルの一番人気はSUVだ。

旧型となってしまったが、991型の911で確かめたかったことは、正常進化しているかどうかだけではない。スーパーカーに近いダイナミズムと、普段遣いできる利便性とを今も両立できているかどうかだった。

普段使いが得意過ぎるスポーツカー

55年前にフランクフルト・モーターショーで発表された901が灯した輝きは、今も色あせてないだろうか。新世代が登場した中で、これまでの長期テストを振り返ってみたい。

991型のポルシェ911も、想像通りの911だった。得られるものは優れていたが、驚きの要素は少なくなっていた。以前長期テストで乗っていたBMW i8並みの発見はなかった。

グラファイト・ブルーのカレラSクーペは、乗る前からどんなクルマか想像がついた。乗ってみてしばらくの間、価格並みの特別さが得られるのか、疑問も抱いてしまった。このポルシェには非常に多くのオプションが選択され、価格は10万ポンド(1430万円)を超えていた。

高い馬力を備えていても、慣らし走行中は真価を発揮できなかったこともあり、最初に掴めたのは運転が簡単だということくらい。BMW i8より本質的に品質が高いとは思ったが、それ以上のことは感じなかった。

もっとも、馬力が控えめなポルシェ911は、だいたいこんな印象だと思う。911という数字の並びからは、純粋な運転する喜びを想起させる力がある。だが、日常使いを余りに自然にこなせるから、本来の素晴らしい能力を忘れてしまう側面がある。

シザーズ・ドアやカーボン製のタブシャシー、プラグイン・ハイブリッドを備えるi8は、時には音も立てずに走った。わかりやすい特徴だ。

一方でポルシェ911を観察すれば、クラス随一のステアリングに機能的なインテリア、力強くスムーズなエンジンなど、完成度が見えてくる。i8ほど明白ではなくても、劣らない説得力がある。

911ほど充足感のあるクルマもない

そしてエンジン。991型が積むのは2015年に登場したユニットだが、筆者はかなり満足している。ターボ過給で得たものは失ったものより遥かに多く、しかも、4気筒のボクスターやケイマンとも大きく異る。

フラット6は滑らかで反応も鋭く、911らしさに完全にフィットしている。高いパフォーマンスを引き出すことも容易になり、路上での難しさも少なくなった。

時々ポルシェ911に乗っているのを忘れる雰囲気も、重要だと思う。10万ポンド(1430万円)もする、レスポンスの良い、夢中になるようなスポーツカーだと意識したくない時があったりする。特に高速道路を延々と移動する時や、市街地を流しているときなど。

ヒリヒリと攻め立てて走る楽しさを、思い出したくない場面は多い。静かに安楽に、進むべき道に向き合えるクルマが欲しいこともある。

もちろん、時と場所が正しければ、目的地への移動手段として、911ほど充足感のあるクルマは他にはない。カーボンセラミック・ブレーキにスポーツクロノ・パッケージなど、走行性能を高めるオプションが数多く装備されていたから、ひとしお。

後輪操舵システムとアクティブ・アンチロールバーはなくても良かった。実際、標準のカレラSを借りて比較してみたが、ドライビング体験の差は小さかった。

ドライビング体験は素晴らしい。このカレラSが、911の中でも入口側のグレードだということに驚かざるを得ない。長期テストを終える今、さらに50psくらい上乗せしても良いと感じていることに気づいた。

911らしさを味わうには覚悟も必要

991型の911で気に入らなかった部分。2012年に初試乗をした時に感じた不満が、まだ残っている。911のドライビングは素晴らしいが、このクラスでしか到達できないような限界領域を味わうには、かなり限定的な条件が必要となることだ。

911は常に、短いホイールベースとリアエンジンという、異端児的なレイアウトに沿って、道と向き合う。つま先の操作で生き生きと走る。わずかな一挙手一投足に、常に反応できるように身構えている。それを確かめるには、限界に近づかなければならない。

これほどのパフォーマンスとグリップを備えている場合、最高の満足感を得るには、目一杯攻め立てる覚悟が求められる。あるいは、クルマの許容値がはるか上にあるという事実に気づき、畏敬の念に浸るか。

筆者は991を、911らしさを望まない人のための911、と呼ぶことがある。扱いやすいスポーツカーという姿をまとった、超高性能なポルシェ。

エンスージァストにとって、クラス・ベストだということは重要。数多くのオプションを選ぶ理由にもなる。ポルシェがSUVを大量生産する中で、まだ圧倒的な性能を誇るスポーツカーが存在しているという事実は重要であるはず。得られるものが、かつての911とは異なる喜びでも。

ポルシェというブランドにとって、その方が今は都合が良いのだ。しばらくこの関係性は続くと思う。

テストデータ

気に入っているトコロ

素晴らしいルックス:フェイスリフト後の991は、911の中でも最も見た目がカッコいい。クリーンでスムーズ。スタイリッシュだ。
求めたがるエンジン:失ったサウンドとレスポンス、レブリミット以上に、扱いやすいパンチ力を生み出してくれるターボエンジン。
卓越したハンドリング:実際に限界領域に迫れる機会に恵まれれば、モダン911に期待する通りのハンドリングを楽しめる。

気に入らないトコロ

狭いリアシート:一部の人はリアシートに子供を乗せられると話すが、190cmも身長があると無理。
使えないカップホルダー:場所も悪く、ちゃんとフタの締まらない飲み物は家に置いてくるか、前身に浴びるか、どちらかだ。

走行距離

テスト開始時積算距離:365km
テスト終了時積算距離:1万6465km

価格

モデル名:ポルシェ911カレラS
新車価格:8万5857ポンド(1227万円)
現行価格:-
テスト車の価格:10万8028ポンド(1544万円)

オプション装備

PDK:2388ポンド(37万円)
グラファイト・ブルー・メタリック・ペイント:801ポンド(12万円)
グラファイト・ブルー・レザー・インテリア:405ポンド(6万円)
911バッジ:無償オプション
LEDダイナミック・ライト・システム・プラス:1764ポンド(27万円)
パークアシスト(前後):639ポンド(10万円)
ポルシェ・ダイナミック・シャシー・コントロール:2744ポンド(42万円)
後輪操舵システム:1530ポンド(24万円)
カーボンセラミック・ブレーキ:5787ポンド(89万円)
モード選択付きスポーツクロノ:1416ポンド(22万円)
スポーツエグゾースト:1773ポンド(27万円)
20インチ・カレラSホイール:無償オプション
速度制限表示:284ポンド(4万円)
ライト・デザイン・パッケージ:300ポンド(5万円)
スポーツ・ステアリング:186ポンド(3万円)
ステアリングヒーター:315ポンド(5万円)
シートヒーター:320ポンド(5万円)
スポーツ・シート:312ポンド(5万円)
フロア・マット:122ポンド(2万円)
ISOフィックス・シートマウント:122ポンド(2万円)
ボーズ・サラウンドシステム:963ポンド(15万円)

燃費&航続距離

カタログ燃費:11.5km/L
タンク容量:64L
平均燃費:11.2km/L
最高燃費:11.9km/L
最低燃費:9.8km/L
航続可能距離:611km

主要諸元

0-100km/h加速:4.1秒
最高速度:307km/h
エンジン:水平方向6気筒2981ccターボチャージャー
最高出力:420ps/6500rpm
最大トルク:50.7kg-m/1700rpm
トランスミッション:7速デュアルクラッチ・オートマティック
トランク容量:145L
ホイールサイズ:8.5J 20インチ(フロント)/11.5J 20インチ(リア)
タイヤ:245/35 ZR20(フロント)/305/30 ZR20(リア)
乾燥重量:1490kg

メンテナンス&ランニングコスト

リース価格:1300ポンド(18万6000円/1カ月)
CO2 排出量:199g/km
メンテナンスコスト:なし
その他コスト:なし
燃料コスト:1686ポンド(24万1000円)
燃料含めたランニングコスト:1686ポンド(24万1000円)
1マイル当りコスト:16.9ペンス(24円)
減価償却費:3万5176ポンド(503万円)
減価償却含めた1マイル当りコスト:3.68ポンド(520円)
不具合:後輪操舵システムからの突発的な異音

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