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広がる喜び BMW M8コンペティション・コンバーチブルに試乗 624psは過剰気味

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広がる喜び BMW M8コンペティション・コンバーチブルに試乗 624psは過剰気味

最も高価なモデルの最も高価な仕様

text:Richard Bremner(リチャード・ブレンナー)

【画像】新BMW 8シリーズ 全87枚

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)


現在のBMWのラインナップで最も高価なモデルの、最も高価な仕様となるのがM8コンペティション・コンバーチブル。4シーターのボディに624psのV8ターボエンジンを搭載し、0-100km/h加速は3.4秒という素早さだ。

Mドライバーズ・パッケージを選択すれば、リミッターが解除され最高速度は305km/hに到達する。しっかり断熱材も仕込まれたファブリック・ルーフをリアデッキに収納させれば、最高速度は少し遅くなるが、それでも劇的な体験であることは変わりない。

ドライビングモードに応じて、M5のように巨大なトルクを後輪のみへ届けることもできる。スリル満点の後輪駆動のドライビングマシンに変えることも可能だ。

ゴージャスなキルティング加工されたレザー張りのシートに腰掛けた充足感は素晴らしい。だが運転し始めの複雑さが、ドライバーを悩ませるかもしれない。

ステアリングホイールにはM1とM2と書かれた、赤く染められたレバーが見える。複雑にレイアウトされたセンターコンソールには、Mモードとセットアップと書かれたものと、マフラーのアイコンが書かれたボタンが並ぶ。

説明書を読み込まなければ、その役割の理解は難しい。ガラスが美しいシフトレバーの操作パターンは、一般的ではないから慣れが必要となる。

興奮を抑えきれない高速コーナーの加速感

スタートボタンを押せば、M8の中核をなすものが何かを思い返させてくれる。強烈なパワーを連想させる、V8の勇ましい響きが轟く。長く伸びる直線でアクセルを踏み込めば、圧倒的な勢いで即座にスピードを乗せていく。

ブレーキはバイワイヤで機能し、2010kgもある車重を不足なく効果的に減速させる。この車重にも関わらず、M8は強力なグリップ力を伴って機敏に走る。だがサーキットでもなければ、ボディサイズは常に意識させられるだろう。

滑らかな路面のサーキットでは、この巨大なM8の良さに気付かされる。若干軽量でボディ剛性も高いクーペならなおさらだけれど。長く伸びる高速コーナーを、威圧的に加速させながら抜けていく体験には興奮を抑えきれないはず。

最大トルクは76.3kg-mもあるのに、タイヤサイズも大きいから、タイトコーナーでも手を焼くことはない。ボディの向きをクルリと変えさせれば、あとは猛烈に脱出していくだけ。フロントタイヤが加速を手助けしてくれ、次のコーナーまでに確実に速度を上げていく。

これが後輪駆動状態になったら、どんな走りになるのだろうか。Mダイナミックモードを選択すると、フロントタイヤへの駆動力の伝達はなくなり、コンピューターによる姿勢制御の手助けもなくなる。

サーキットでの楽しさが際立つようになるが、グリップ力を超えるパワーだから、間違いなくドライバーの運転技術も問われてくる。リアタイヤのスライドは、安心感を感じるほどに予測可能な挙動を示してくれる。

良さを一般道では味わいきれない

安定性に加えて、抑制の効いたボディロールと正確なステアリングのすべてによって、重量級のボディとは裏腹にずっと身近に手懐けられる。しばらく走らせて、エンジンやサスペンションの設定に自分好みの組み合わせが見つかったら、M1やM2に登録すればいい。必要な時にすぐに呼び出せる。

しかし、サーキットで味わえたM8コンペティション・コンバーチブルの喜びを、一般道でも同じように体験することは、実はさほど簡単ではない。クルマの能力をしっかり引き出すには、不適切な速度域までペースを速めなければならないのだ。

加えて路面の起伏やうねり、舗装の剥がれた場所を通過すると突然衝撃が伝わることがある。時折、ダンパーの動きが悪くタイヤの振動がそのまま伝わっているのでは、と感じるほど。

この乗り心地と、コンバーチブルだということを考えると、リラックスして走ろうと思い直すことになる。勇ましい排気音の唸り声と陽光を浴びながら。ソフトトップを収納する時間は15秒。折り畳む際の複雑な動きで生じる身震いも一切ない。

M8コンバーチブルの素晴らしく上質な環境には快適なシートが配され、デジタルデバイス満載のダッシュボードには不足なものが見つからない。リアシートの足元の空間にも、わずかだが余裕もある。

ドライビングの体験を一層豊かに

コンバーチブルなら624psのパワーがなくても、同等の幸福感を味わうことは可能だと思う。ハイパフォーマンス・モデルの中身はそのままに、ボディ構造を弱めて車重を増やすことの意味、という昔からの疑問にぶつかるのだった。

乗り心地にも改善の余地は残る。もし足の速いコンバーチブルを楽しみたいのなら、柔軟なサスペンションの方がより満足感は高いに違いない。

一方で、わずかに走行性能は低くなっていても、屋根を開くことでクルマから得られる喜びは大きく広がっている。クーペと比較して、コンバーチブルがM8から失った能力は殆どないといっていい。

この大きなボディとともに暮らせる環境にいるなら、腕利きのドライバーであっても、ドライビング体験を一層素晴らしいものにしてくれるはずだ。

BMW M8コンペティション・コンバーチブルのスペック

価格:13万435ポンド(1813万円)
全長:4851mm
全幅:1902mm
全高:1346mm
最高速度:305km/h
0-100km/h加速:3.4秒
燃費:8.9km/L
CO2排出量:246g/km
乾燥重量:2010kg
パワートレイン:V型8気筒4395ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:624ps/6000rpm
最大トルク:76.3kg-m/1800-5800rpm
ギアボックス:8速オートマティック

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