キューブ ある意味、最後のパイクカー
text:Kouichi Kobuna(小鮒康一)先週、久しぶりに自動車系ニュースサイトで名前を見た車名、それがキューブだった。
【画像】見たことある? キューブの源流「シャポー」 全214枚
今年いっぱいで生産を終了するというニュースであり、なんとなくその日が来ることはわかっていた。
一時期は日産を代表する人気車種だっただけに一抹の寂しさを感じられずにはいられなかった。
キューブは2代目マーチのプラットフォームを流用して1998年に誕生したハイトワゴンだ。源流は1989年の第28回東京モーターショーに登場した「シャポー」というコンセプトカーにさかのぼる。
パイクカーシリーズ第3弾となったフィガロと共に登場したシャポーは、87年の東京モーターショーに登場した商用車パイクカーのエスカルゴに続いて企画されたものとアナウンスされたが、結局市販化されることはなかった。
そこから10年の時を経て登場したキューブはある意味最後の日産パイクカーシリーズと言えるかもしれない。
「アソブ、ハコブ、キューブ」というポップなコマーシャルと市場のハイトワゴン人気も相まって、若いユーザーのエントリーモデル(114.8万円~)としても需要が高かった初代キューブは、1998年から2001年まで4年連続で日産の最量販車種だった。
日産キューブ 3世代をおさらいしよう
初代キューブ
前述したように1998年に初代モデルが登場したキューブ。
2代目マーチのプラットフォームを流用していたが、マーチに用意された1Lエンジンやマニュアル車、3ドアボディなどは用意されず、1.3Lエンジンに4速ATもしくはCVTの組み合わせで、5ドアハッチバックのみというシンプルなバリエーションとなっていた。
「立方体」を意味するキューブという車名の通り、マーチに比べて立てられたリアゲートは、ウインドウだけ開けることもできるように作られており、この手法は現行型セレナにも採用されている。
2000年のマイナーチェンジではリアシートに前後スライドや、折りたたんだシートをフラットに格納できるフォールダウン機構を追加したほか、4名だった乗車定員が5名に改められている。
2代目キューブ
2002年には2世代目へとフルモデルチェンジを果たした。四角いスタイルこそ踏襲したものの、デザインは大幅に変更され、2001年のジュネーブショーで発表されたコンセプトカー「シャッポ(シャポーではない)」のデザインテイストをほぼそのまま盛り込んでいた。
デザインの中でも特筆すべき点はやはり左右非対称のリアデザインだろう。
自動車のデザインは左右対称であるべき、という不文律を打ち破った。遠くから見てもキューブとわかる秀逸なものと言えるだろう。
またキューブ史上唯一3列シート7人乗り仕様の「キューブキュービック」が設定されていたのもこの2代目モデルだった。
3代目キューブ
そして2008年に登場した現行モデルとなる3代目は、キューブらしさを残しながらも局面を多用した「四角いけど丸い」デザインとなっていた。
先代で採用された左右非対称のデザインも継続されたが、右ハンドル圏専売車だからできたと思っていた左右非対称デザインにもかかわらず、2009年からは北米をはじめとした左ハンドル圏にも販売をスタート。
もちろんリア部分は右ハンドル車とは左右が反転しており、そのコストのかけっぷりに度肝を抜かれたことも懐かしい。
キューブ終焉の理由 復活の可能性
決して不人気車というわけではなかった。しかし3代目登場から10年が経過し、古さが隠し切れなかったのもまた事実。
小さな変更は行われていたものの、結局最後まで衝突被害軽減ブレーキなどの先進安全装備は設定されなかったのだ。
鳴り物入りで投入した海外仕様も思いのほか販売が伸びず、日産の業績不振も相まってコストをこれ以上かけることができなかったという側面もあるだろう。
また、日本国内ではすでにハイトワゴンは軽自動車が席捲したジャンルであり、先進安全装備に加えスライドドアも持たないにもかかわらず、価格帯が近いキューブが苦戦するのもやむなしと言ったところ。
もう少し日産に体力があればキューブにもテコ入れができたかもしれないが、現状では人気のノートやセレナ、デイズなどに集中的に注力する方が得策と考えたのかもしれない。
キューブはこのまま消滅したままとなってしまうのだろうか。
現状ではノートや、間もなく登場すると言われるデイズベースのスーパーハイトワゴン軽が受け皿になるようだが、それでキューブユーザーを全てカバーするのは難しいだろう。
8月の新車販売台数でシエンタが首位に躍り出たように、スペースユーティリティに優れた5ナンバーサイズ車もまだまだ需要が高い。
この辺りにうまく滑り込めれば新型キューブが復活する可能性も残されているように思えるのだが、果たして?
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