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フォード・パフォーマンス 比較試乗 GT×フィエスタST 瑠璃色の血統

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フォード・パフォーマンス 比較試乗 GT×フィエスタST 瑠璃色の血統

もくじ

ー ひとつ屋根の下の2台
ー モータースポーツのために生まれたGT
ー ワイドなボディに狭い車内
ー 乗るほどに実感する、同じ血統
ー 番外編:中古で買えるハイパフォーマンスモデル
ー 2台のスペック

BMW M850i 初試乗 英国価格10万ポンド フラッグシップ・クーペ復活

ひとつ屋根の下の2台

フォード・パフォーマンス社の動きには、目を見張るものがある。1年の間にブルー・オーバルの高性能車部門からは、ここ数年の中でも高い注目を集めた、高価格なスーパーカーが発表されただけでなく、ハイパフォーマンスなハッチバックもリリースされている。こちらは、われわれにとって現実的な価格で。

フィエスタSTはトヨタやオペル、フォルクスワーゲン、スズキなどのライバルがいる。一方でGTは、マクラーレンやフェラーリが価格帯ではライバルとなる。もし、GTを購入する資金でフィエスタSTを買ったとしたら、22台も手に入ることになる。同じクルマを2台所有することですら珍しいけれど。そもそもGTは、フィエスタよりも遥かに高いだけでなく、多くのスーパーカーと比較しても、だいぶ高価な部類に属する。

地図で見る以上に、実際の地形は複雑なのと同じように、同じ青いクルマ、フォードGTとフィエスタSTも、近くで観察すればするほど、比較にならないほどの違いがある。ひとつの部門から、ここまで価格やカテゴリーが異なるモデルを同時に販売していることも珍しい。スタイリングでも、走行性能の面でもその差は相当なもの。しかし面白いことに、フォードGTもフィエスタSTも、フォードパフォーマンス社という、同じ血統を持っている。

3万ポンド(444万円)未満で買える、2018年のベスト・パフォーマンスモデルにフィエスタSTが輝いたのは、つい先日。ロードテストでは、フィエスタSTは星4.5を獲得したのに対し、約1年前にテストしたフォードGTの評価は星4つと、後塵を拝していたりする。GTとフィエスタSTを直接比較したら、その星の差はどう見えるのだろうか。

実際に横に並べてみると、GTのスタイリングはアウトローで、まるで異次元からやってきた乗り物のよう。フィエスタSTのか細い小動物のような雰囲気は、単独で立ち向かえるようには思えない。写真撮影で駐車していても、フォードGTを周囲の人は避けてくれているようだった。

青いスーパーカーは北米で設計開発されたの対し、青いホットハッチは、ベルギーのロンメルにあるフォード社のR&Dセンターで企画・開発されている。そのため、この両車の開発に関わったひとは、かなり数が限られるか、ほとんどいないだろう。しかし不思議なことに、フォード・パフォーマンス社製の最新の兄弟からは、時間を経るごとに類似点も感じ取られた。

モータースポーツのために生まれたGT

といっても、大部分で見えてくるのは差異の方。フィエスタSTの着座姿勢はアップライトで、視界はすべての方向で優れている。反面GTの着座姿勢は寝そべるかたちで、視界も高さの薄いフロントガラスから、進行方向が見える程度。フィエスタSTでは何でもない路面の凹凸が、GTで走ると巨大なものに感じられる。

GTのすべてが、モータースポーツを主張してくる。そもそも、幾らか一般道でも乗れるように民主化されてはいるものの、ル・マン24時間レースで戦うために設計されたモンスターマシンだから、当然かもしれない。むしろ、このクルマはモータースポーツがなければ存在しなかっただろう。

今から約50年前、4度に渡って世界で最も過酷な耐久レース、ル・マン24時間レースで勝つことがなければ、民主的なブルーオーバルのロゴの自動車メーカーが、ここまで高価なスーパーカーの生産計画書にハンコを押すことはなかったはず。また、そんな勝利の歴史が存在しなければ、よほどの物好きでもない限り、50万ポンドもの大枚をはたいて、使い勝手の悪いクルマを買うことはないだろう。

あくまでも、GTはモータースポーツから生まれたというより、モータースポーツのために生まれたクルマ。フェラーリやマクラーレンが、スーパーカーを日常的に利用しやすいクルマにするべく腐心する最中、フォードはまったく別の方向を向いていた。妥協のない生粋のサーキット・モデル。毎日乗るには、マゾっ気がないと厳しいとさえ思う。スーパーカーといえども定期的にドライブしたいし、日常的に乗るクルマとの違いを体感するためにも、スペシャルなものを備えている必要がある。そのサジ加減が難しい。

うっかりキャッツアイを踏んでしまった時の激しい衝撃や、蹴り上げた小石がホイールアーチを叩く音、V6エンジンに組み合わされるツインターボが生み出す激しい吸気音と、ブローオフの悲鳴。GTから目まぐるしく耳に届くサウンドスケープに、思わず笑みがこぼれてしまう。没入せずにはいられない、シリアスなドライビング体験は、今の時代非常に珍しい。

ワイドなボディに狭い車内

空気を掴むべく高く伸びていた巨大なリアスポイラーは、市街地で受け入れられる速度になると、直ちに畳まれる。しかもバタンと、大きな音がするから、スポイラーがボディと一体になったことがすぐわかる。車内の2脚のシートは車体中央寄りにレイアウトされ、ドライバーの肩が常にパッセンジャーの肩に触れてしまう。キャビンの外側に広がる、2mに及ぶワイドなボディにも常に気を使わなければならない。

シートは固定式で、脚が届く位置にペダルボックスをスライドして調整する。ステアリングホイールを、手前に引いて調整するのと同じ要領だ。運転席の目前に広がるダッシュボードの上部は浮いたようなデザインで、このクルマの最大の特徴ともいえる、エクステリアのエアロ・トンネルと呼応している。GTの場合、前面からの空気はボディ上下に振り分けられるのではなく、車両後部のエアロトンネル伝いに、通り抜けていく。それを視覚的に実感させられる。

メカニカルなサウンドをエンジンは響かせるが、その多くはターボチャージャーが発する生々しいもの。タービンの回転音と、空気が脈動するホイッスルのような音響が常に耳に届く。決して音楽的なものではないが、狙って生まれるような音でもないし、レーシングパドックから出てきたクルマとしては、的を得ているだろう。

アクセルを蹴れば、656psを発生するエンジンに、1500kgを切る軽量なボディだから、GTの加速は凄まじい。ただ、より強力なマクラーレン720Sの絶え間ない、恐怖を抱くほどのものでもない。GTのステアリングは非常に繊細でダイレクト。言葉がはばかれるような荒れた路面であっても、充分なボディコントロールが得られる。砂地を平然と歩くラクダのように、舗装路でのボディコントロールは秀逸だ。

サスペンションは極めて固く、ホイールトラベルの量も必要最低限ながら、突出したグリップ力と俊敏性も兼ね備えている。ストロークの短さとダンピングの効きを考えると、脚さばきはかなり煮詰められ、洗煉されているといえるだろう。

一方でフィエスタSTは、今回のテスト場所として選んだ英国東部、ケンブリッジシャーの道ではかなり落ち着かない乗り心地で、いかにもホットハッチ的に身体が上下に揺さぶられてしまう。GTの方が、幾分落ち着いていたように感じられるほど。

乗るほどに実感する、同じ血統

フィエスタSTに搭載されるエンジンは、1.5ℓの3気筒ターボ。GTが搭載する3.5ℓのV型6気筒ツインターボエンジンの半分にも及ばない。さらに最高出力は199psで、わずか1/3。盛大なメカニカルノイズという点を除いて、共通点は殆どない。フィエスタSTの3気筒は、5500rpmあたりでピークを感じられるのだが、GTの6気筒は、より高回転域を目指そうとする。

しかし、両車ともに、ステアリングフィールは極めて敏感。クルマの挙動が神経質で気まぐれに感じられるひともいるだろう。そして、両車ともに高速道路程度のスピードになると、運転に楽しさがにじみ出てくる。さすが同じ血筋だ。

アクセルを踏み込み、プッシュしていくと、組み合わされたコンポーネンツの集合体としてのクルマではなく、すべてが一体となった塊のように伝わってくる。どちらも一般道に迎合させるべく、フィエスタSTは若干、GTは相当に、エンジニアが妥協点を見出してはいるが、限界領域は危険を感じるほど高い。乗るほどに実感する、同じ血統を持つクルマの共通点だと思う。

2台を直接比較したとき、フィエスタSTはGTよりも星半分、高い評価を得られるのか。これは漠然とした問いだし、クラス内での相対的なもの、というのが率直なところ。フィエスタSTはこのクラスの中では秀でた優秀さを備えている一方で、GTは同クラスのライバルと比べても遥かに高価で、これ以上必要のないほど刺激的なドライブを味わわせてくれる。しかし、日常利用ができるほど煮詰められてはいない。

フォード・パフォーマンス社は歓迎すべきものだし、その存在感は当面揺るがないだろう。だが、メルセデス-AMGのハイパーカー、プロジェクト・ワンがラインオフすれば、バリエーションに富んだハイパフォーマンス部門としての孤高の地位は、ミシガン州ディアボーンを拠点とする企業から、バーデン・ヴュルテンベルク州アファルターバッハを拠点とする企業へ、移るはず。何しろ、F1のパワーユニットを搭載する200万ポンド(2億9600万円)のハイパーカーから、最近発表された3万5000ポンド(518万円)のハッチバック、A35までをラインナップするのだから。

今回の撮影を終え自問してみたが、フォードGTをもう一度ドライブしたいとは思わなかった。仮に資金があったとしても、購入することはないだろう。

フィエスタST。フォード・パフォーマンス社が生み出した、ファン・トゥ・ドライブで、より身近なクルマの素晴らしさを再確認したのだった。

番外編:中古で買えるハイパフォーマンスモデル

エスコートRSコスワース

1992年~1996年/4万ポンド(592万円)

RSコスワースのあまりにも高い人気のおかげで、英国では自動車盗難の被害が相次ぎ、自動車保険の加入ができない状況にまでなっている。四輪駆動に227psを発生する直列4気筒エンジンを搭載し、当時のハッチバックでは、前例のない高いパフォーマンスを誇った1台。

初代フォーカスRS

2002年~2003年/1万2000ポンド(177万円)

紛うことなくスーパーハッチの元祖。俊足を叶える優れたハードウェアを持ちつつも、激しいトルクステアが玉に瑕。アグレッシブな見た目に違わぬ走りを見せてくれる。

初代GT

2004年~2006年/25万ポンド(3700万円)

最新のGTと比較してしまうと、パフォーマンスの面で劣っていることは明らかながら、今のモデルへと続く、過去の記録に通じる特徴を築き上げた。素晴らしいV8エンジンにマニュアル・トランスミッションが組み合わされ、運転の楽しさは折り紙つき。

2代目フォーカスST

2005年~2008年/4000ポンド(59万円)

あまり高い評価は得られていないものの、濃いキャラクターを持つ228psの5気筒ターボエンジンを搭載する2代目フォーカスSTも、明確な強みを持っていたと思う。われわれにとっては幸運なことに、3代目モデルの登場に合わせて、中古車価格が大きく下落している。

6代目フィエスタST

2013年~2017年/9000ポンド(133万円)

これまでと同様に、6代目となったフィエスタSTも、価格帯を問わず、クルマとの一体感の密なドライビングを楽しめる選択肢のひとつ。技術的にはやや旧式のスポーツカー仕立てという雰囲気ではあったものの、秀でた運転の楽しさは高く評価できる。

2台のスペック

フォードGTのスペック

■価格 42万ポンド(6216万円)
■全長×全幅×全高 4762×2004×1110mm
■最高速度 347km/h
■0-100km/h加速 3秒以下
■燃費 -
■CO2排出量 -
■乾燥重量 1385kg
■パワートレイン V型6気筒3497ccツインターボ
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 656ps/6250rpm
■最大トルク 76.3kg-m/5900rpm
■ギアボックス 7速ツインクラッチ・オートマティック


フォード・フィエスタSTのスペック

■価格 1万8995ポンド(281万円)
■全長×全幅×全高 4068×1735×1469mm
■最高速度 231km/h
■0-100km/h加速 6.5秒
■燃費 16.6km/ℓ
■CO2排出量 136g/km
■乾燥重量 1262kg
■パワートレイン 直列3気筒1497ccターボ
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 199ps/6000rpm
■最大トルク 29.5kg-m/1600rpm
■ギアボックス 6速マニュアル

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