もくじ
ー 温故知新 顧客は様々
ー コーチビルド 進め方は顧客次第
ー 主張が魅力 次回作はロールス
ー 番外編:英国のライバル
テスラ・モデルS シューティング・ブレーク製作の背景は クエスト社訪問
温故知新 顧客は様々
コーチビルディングはクルマそのものと同じくらいの歴史をもつが、クルマ作りが新たな時代を迎える中、この芸術の新たな才能の持ち主が、テスラ・モデルSをシューティングブレークへと変貌させた33歳だというのも当然かも知れない。
コーチビルディングの基本ともいうべきものは、ロールス・ロイス、デューゼンバーグやブガッティといった過去の名車たちのなかに見出すことができるが、自動車黎明期に登場した少なくない数のモデルが、電気を動力源にしていたという事実も見逃すわけにはいかないだろう。
もし、そのデザインに開拓精神や冒険心とともに、ある種の調和を見出すことができれば、ニールス・ファン・ロイ率いるチームの作品を気に入るに違いない。このオランダ人は、クルマを愛する自らの情熱に従い、ロンドンのロイヤルカレッジ・オブ・アートへと進み、コンサルタントとして成功を収めた後、グリーンウィッチに自身のスタジオをオープンした。
自分のスタジオを持っているとは信じられないほど若いファン・ロイだが、何とかその責任を果たしているようだ。そして、大企業で働くかわりに自身でスタジオを立ち上げたのは、支払いをするためだったという。
「2014年に新型ロンドンタクシーのプロジェクトに参加したのが、飛躍のきっかけとなりました」と彼は話す。「市長室に対して、実動可能なプロトタイプのプレゼンを行ったのですが、お褒めの言葉をたくさん頂きました。もちろん十分検討した案でしたが、その反響が多くの仕事につながったのです」
当然ながら、ファン・ロイが手掛ける案件は厳重に情報管理されており、彼がその詳細を明かすことはないが、それでも、彼はボルボ、フォード向けに進行中のリサーチがあることを認めている。ファン・ロイはヒントすら与えてくれないので、推察するしかないが、驚いたことに携帯大手のファーウェイも、自動車業界への進出を狙って彼に仕事を依頼しているようだ。
「顧客ニーズをつかむための初期デザイン調査のような、裏方の仕事にも興味はあります」と彼は笑う。「しかし、わたし達のことを皆さんに知って頂きたかったので、名前を表に出して、コーチビルドという仕事を始めることにしたのです」
コーチビルド 進め方は顧客次第
コーチビルドを始めるにあたり、ファン・ロイには、彼のビジョンを理解し、プロジェクトに資金を提供してくれる顧客が必要だった。それが、医療会社で成功したオランダ人ビジネスマンのフロリス・デ・ラードであり、彼は生粋のシューティングブレーク好きだったのだ。
これまでに、シューティングブレークを購入しては、そのレストアを行ってきたが、新たな1台を創り出すために、彼は資金を惜しまなかった。「デ・ラードの興味が最新技術にあったので、テスラを選んだのです」とファン・ロイは話す。「彼が望んだのは、新たな時代の幕開けを告げるようなモデルでした」
プロジェクトのスタート時点で、このクルマはワンオフモデルである必要はないが、生産台数は20台以下の極く少数に留めることが決まった。そのため、ファン・ロイと彼のチームは、単にデ・ラードの要求に忠実であるよりも、むしろ様々なアイデアを出しながら顧客との作業を進めることができたのだ。
初期のスケッチだけで、500時間から600時間費やしたことを認めつつ、「3案を準備しました」とファン・ロイはいう。「プロジェクトのなかには、オーナーの好みを完ぺきなまでに反映する場合もあります。自宅へ出向き、そのカーコレクションに感嘆し、どんな音楽が好きか、何を求めているのかといったことを把握したうえで、特にボディカラーとトリムをはじめ、そのすべてをクルマに注ぎ込みます。顧客が増えれば、違ったやり方が必要になるかも知れませんが、それも素晴らしいことだといえます」
デザインが完了すると、ファン・ロイは、オランダ国王向けの車両生産でよく知られた、オランダのコーチビルダー、RemetzCarと協業することにした。「デ・ラードが彼らのことを知っていて、推薦してくれたのです。彼らにはすべてをハンドメイドできる技術がありました。アルミニウムを手で成形したり、巨大なルーフの形を創り出すためのガラス加工技術といったものです。彫刻は彼らの専門外だったので、われわれが担当しました」
主張が魅力 次回作はロールス
ファン・ロイは、過剰ともいえる装飾が、時として批判の的となることを知りつつも、「コーチビルド・モデルには強い主張があるべきです。さもなければ、時間と労力をかけることなく、大量生産モデルから欲しいクルマを買えばいいのですから」と笑顔で話す。
「ボルボV90、メルセデスEクラスやアウディA6アバントといったクルマのデザインは、完ぺきといえるほど素晴らしいものです。こういったモデルで満足できるのであれば、それを購入すれば良いのです。でも、個性的なクルマが欲しければ、少し大胆な方が良いとは思いませんか?」
このクルマの販売価格はまだ決定していないが、新車のモデルSからはわずかな値上がりで済みそうだ。もちろん、仕様によっては、そのプライスタグは直ぐに跳ね上がることになる。「当初から、販売価格などは想定していました」とファン・ロイはいう。「プロジェクトで目指すべきところを決めておかなければ、たいてい、その仕事は机上の空論で終わってしまうものなのです」
このプロジェクトを完成までこぎつければ、それだけでファン・ロイには十分な成果だといえるが、彼は自身のスタジオをこの程度で満足させるつもりはない。「これまでは、プロジェクトごとにフリーランスのスタッフを活用したりして、スタジオの規模を調整してきました」と彼はいう。
「一度に対応した最大のプロジェクト数は30でした。われわれには顧客がいて、自分たちのアイデアもあります。いまの目標は、われわれが考え出したロールス・ロイス・レイスのコーチビルド・モデルを現実に作り出すことですが、この先どんなチャンスが訪れるか楽しみです」
番外編:英国のライバル
テスラ・モデルSのシューティングブレークを創り出そうというのは、もちろんファン・ロイひとりではない。ノーフォークにある英国企業のクエストが、世界で初めてこのモデルを創り出した(「テスラ・モデルS シューティング・ブレーク製作の背景は クエスト社訪問」参照)。
ファン・ロイもこの英国のライバル企業に対して敬意を払っている「われわれのプロジェクトをスタートさせる時点で、クエストのことは知っていました。それぞれのコンセプトが全く異なるものであることが分かったので、非常に安心しました」と彼はいう。
「つまり、顧客には選択肢ができた訳です。彼らのボディワークのやり方は魅力的であり、同じようにわれわれのハンドクラフトによる方法も魅力的なものであって欲しいと願っています」
「彼らにも成功してい欲しいと思っていますよ」
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