6代目となるフォルクスワーゲン(VW)の定番コンパクト、新型ポロがまもなくフルモデルチェンジして上陸!! 歴代初の3ナンバーとなったその新型に、WCOTY(ワールドカー・オブ・ザ・イヤー)の選考委員として、ドイツ本国で自動車ジャーナリストの松田秀士氏が先行試乗。3ナンバーの新生ポロは、5ナンバーを守る国産の実力派コンパクトと比べて、「日本でも買い!」と思わせるモデルに仕上がっているのか?
文:松田秀士
スポーツカー乗り心地テスト!! 「速さ」と「乗り心地」を両立しているのはどのクルマ!?
“3ナンバー”ポロと国産勢で差が出るのは「広さと燃費」
新型VWポロ。欧州1Lターボ仕様は最高出力は95ps/5000rpm、最大トルクは17.8kgm/2000rpm
第一印象は、ゴルフの出で立ちに似たデザインだね、というのがホンネ。もう、完全にゴルフの弟分。だから、これまでよりも精悍な印象。特に顔立ちはキリッと締まって見える。
ただし、予想通り横幅は広い。現行モデルプラス69mmの1751mm。そう、これまで日本で重宝されてきた5ナンバー枠ではない。3ナンバー確定だ。しかし、そのおかげで一気に大きくなり、室内スペースにかなりゆとりができた。
特にホイールベースが92mm延びたことで後席にも明らかにゆとりが感じられる。ラゲッジスペース容量は、25%増加して351L(+71L)に拡大。このサイズ感、国産ライバルとなるデミオ、スイフトと比較すると圧倒的に大きい。
国産2車は共に横幅1700mmを切るサイズ、つまり5ナンバー。また、日本特有の細い道や対向車とのすれ違いで冷や汗をかくこともないだろう。ただし、後席の居住性やラゲッジスペースでは圧倒的にポロに軍配が上がる。この点をどう捉えるかは用途を考えるべきだろう。ほとんどが一人乗りの通勤・通学などなら国産2車の価値が上がる。
また、スイフトにはハイブリッドモデルもあり、デミオならディーゼルターボが選べるので燃費が良く、レギュラー及び軽油なので経費は抑えられる。ポロの燃費も良いが、日本の場合ハイオクとなるので経費は若干かかるものと思われるからだ。
ハンドリングと乗り心地の総合力は国産勢の一歩上
写真は欧州仕様のポロ R-Line。よりゴルフに近い意匠で質感を向上させてきた
新型ポロのプラットフォームは上位モデルのアルテオン、パサート、ティグアン、ゴルフと同じVWの最新プラットフォームを基に進化した新しいコンパクトモデル用のMQB AO。
ボディ剛性はこれまでの1400Nm/°から1800Nm/°を超えるまでに強固になり、ユーロNCAP(欧州の衝突安全テスト)のフロントクラッシュ、サイドクラッシュ、ピラーといった過酷な衝突テストで高い成績を出しているという。
また、大きくなっても車重がほとんど増えていないなかで、この衝突テストの結果はかなり評価できるもの。
インテリアも現行ゴルフの流れをくむ視認性が良く安全なディスプレイなど、これまでよりもドライバーを重視した設計となった。
ポロの乗り味は、上位車種からのプラットフォームを使用しているため、まず静粛性が高く乗り心地が良い。これは、国産2車がスポーティなハンドリングを求めていることによってある程度犠牲にしていることと対照的。しかもポロはハンドリングもかなり良好。やはり、この辺りに上位車種とベースを供用しているメリットが出ているものと感じます。
動力性能ではデミオ ディーゼルが優勢
マツダ デミオ。1.5Lディーゼル車は、最高出力105ps/4000rpm、最大トルク22.4kgm/1400-3200rpm
では、動力性能はどうか。試乗車は3気筒1.0L直噴ターボのTSI。日本で最もポピュラーになりそうなモデルだ。トランスミッションは7速DSG。アイドリング時など3気筒独特の振動感がやや伝わってくるが、信号待ちなどで停車するとほとんどアイドリングストップするので気にならない。
発進加速もとてもスムーズで、エンジン回転が1000rpmを超えてしまえば4気筒エンジンと変わらないくらいのスムーズさで加速する。
では、動力性能を国産2車と比べてどうだろう。デミオのディーゼルターボならボクはこちらの極低速域のトルク感を選ぶ。なんといっても力強い。ただし、高速域でデミオは少し頭打ち。その点ポロは高速域になるほど伸びが良く、7速DSGの適切なギヤレシオで気持ちよく加速する。スイフトはハイブリッドらしい賢い加速感だ。スイフトとならポロは互角だろう。
3ナンバー化の新型ポロは“買う価値あり”か
雨降るドイツの道をゆくVWポロ。高速での抜群の安定性は国産勢にはない美点
今回のポロの試乗で驚かされたのは、アウトバーン速度無制限の区間を雨の中160km/h巡行したこと。風切り音を含めた室内静粛性が高く、直進性が素晴らしいことが印象的だった。
やはり、ホイールベースの延長と新しいプラットフォームの剛性を強く感じた瞬間だった。
安全装備類では、いわゆる半自動運転に準ずる上位モデルのものをほとんど継承していて、ないのは車線内中央維持のレーンキーピングアシストぐらい。ただし、車線からはみ出しそうになった時は警告を与える。
また、駐車支援システムの「パークアシスト」が装備されているので、高齢者や苦手の主婦層にもアピールできそう。
ドイツは一般道でも100km/h制限があり、速度域が高い国柄です。そこで生まれた新型ポロは、このクラスのハードルを一気に上げそう。
では、大きくなったサイズ感を含めて、新型ポロを買う価値があるのか? まだ、日本での価格は未発表ながら、ボクは価値ありと判断する。車としての価値観が大きく進歩していて、安全性を含めた総合評価で兄貴分のゴルフに迫る勢い。日本導入、夏頃になるとのことで、興味のある方はもう少しお待ちを。
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