スズキはずっと、「10インチ」に本気だ。世のスクーターの趨勢は大径化に進みつつあるものの、それがすべてではないことをスズキは強く主張する。そんなスズキの新旧10インチ2モデルを駆動系と足周りを中心に徹底比較してみた。PHOTO●星野耕作(HOSHINO Kosaku)REPORT●宮崎正行(MIYAZAKI Masayuki)取材協力●モトメディコ
まずは乗って実感!別次元の高剛性ボディ
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試乗前にまず目に留まったバーグラフ式回転計のデザインは、3000rpmを境にステップアップしている。これは、実際に3000rpm付近でクラッチミートすることへの視覚的アピールなのかもしれない。こういう演出って、ライダーはドキドキするよね(笑)。サスペンションは乗り心地の良さを重視してか少し柔らを広く取ることで、安全マージンを増やす万人向けのセッティングだね。
また、アドレスをカスタムして乗る人たちの間では、「ブレーキをもうちょっと効かせたい」という意見が多くあったけれど、スウィッシュではそんな風評は立たないと思う。ひと回り以上太いタイヤを履いていることと、シャシー剛性の高さがその理由。アドレスのときは、タイヤのキャパ不足を補うかのようにブレーキを強化したり、サスをハードにセットしたりしたけれど、そんなイタチごっこをしないで済むハズだ。
ただしスポーティかと問われれば、そうでもない。多くの販売が見込まれるアジア圏の道路環境を想定した場合、サスはソフト方向になっていて当然だけど、「もうちょっと走りに振ったセットにしたい」とも思う。車体剛性ははるかに高いので、そのメリットをしっかり活かしつつチューニングを施したい。スラローム走行では誰もが感じられるほど、ボディは“ガッチリ”している。
表現が難しいけれど、大きく感じるヤマハ・シグナスXとコンパクトだったアドレスの、ちょうど真ん中くらいにスウィッシュはポジショニングしている。台湾で大人気のシグナスXと、日本で売れに売れたアドレス。その両方のいいところをスウィッシュはすくい上げた。新型スウィッシュには伸び代もバリューも、フル装備なのだ!
バラしてみて分かったのは文句なしに高い完成度
駆動系をバラしてみて分かったのは、プーリーやランププレートをはじめ、アドレスとスウィッシュに共通する部品はあまり多くない。もちろん同じパーツも存在するが、それとてセッティングが変われば意味合いも変わってくる。
そう、大事なのはセッティング。その上でもっとも強く感じたのは、「2車はセッティングが大きく異なる」ということ。
これはイメージだが、年を追うごとに厳しくなっている排気ガス規制によって、パワーダウンを余儀なくされてきたアドレスシリーズに科せられた足かせを、イノベーション(技術革新)という名のエクササイズ(筋力増強)で見事に跳ね返しているように見える。……スズキ万歳!
バイク本来の基礎体力は個人のカスタムではどうしようもなく、メーカーの高度なセッティングに頼るしかない。そんな基礎体力の上にのみ、われわれが行っているプラスαの「チューニング」が成立する。スウィッシュについて言えば、アドレスよりも確実に基礎体力が高い。そのポテンシャルを自分の手でさらに高めたい、武器となる社外製パーツがたくさん発売されてほしい、そう願ってやまない。
●駆動系の分解比較&解説は次回は後日掲載予定です
さて、具体的な数字で言うと、たとえばノーマルのウェイトローラーは19gだが、うちのショップでは15g、軽いと13gあたりをチョイスすることも。もちろん個人の好みが前提なので押し付けはしない。センタースプリングについても「ココをこうすると、アソコがこうなってしまい……」のように、なかなか各論だけで正解を出すことがむずかしいのが実際だ。そんな試行錯誤こそがチューニングの楽しさでもあるけれど(笑)。
スウィッシュの駆動系は、ノーマルのままで十分に優れている。規制の足かせに対して無理に抗おうとせず、直球勝負で戦っているのがカッコいいし、そこに未来のカスタムへの可能性も感じてしまう。スクーターファンをワクワクさせてくれる、作り込みのいい新型車が出てうれしいかぎり!
分解仲間のアドつ~さんの「クラッチは、重さもミートのタイミングもスリップ率も、どれも絶妙としか言いようがない」というコメントもまさに、スズキのセンスの良さと気合いを感じてしまう部分だろう。もしかして、開発メンバーの中に二種スク好きがいたのかも?
で、ここから先のさらなるパフォーマンス向上に向けて、アフターパーツメーカーさんやショップさんもトライ&エラーを繰り返さなければいけない。「できるものならやってみな!」級に潜在能力の高いスウィッシュとの戦いは、まだまだ始まったばかり。売られたケンカは買わねばオトコが廃る、の勢いでみなさん、頑張りましょう!
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