昭和は遠くなりにけり・・・か。以前に連載した「昭和の名車」では、紹介しきれなかったクルマはまだ数多くある。そこで、1960年代以降の隠れた名車を順次紹介していこう。今回は「トヨタ カローラFX(2代目)」だ。
トヨタ カローラFX(2代目/AE92型):昭和62年(1987年)5月発売
1987年(昭和62年)5月、カローラ&スプリンターシリーズが6代目にフルモデルチェンジする。スポーツファンにとって最大の関心事は、国産唯一の1.6Lスポーツとして愛されてきたレビン/トレノがFFになったことだった。当然、カローラの派生車種であるFXも、シリーズ全体の開発テーマである「新しい車格の創造~クラスを超えた世界のハイクオリティ車」に基づきフルモデルチェンジされている。
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FXのキャッチフレーズは「ふたりのファーストクラス」で、トヨタは「滑らかな球体イメージのフォルム、ツインカムエンジン、心地よさに満ちたキャビンなど、ファーストクラスに相応しいセンス&クオリティを身に付けて、誰よりも満ち足りた気分になれるクルマに生まれ変わった」と表現した。
外観は、バックドアアングルを立てたロングルーフと太いクオーターピラーで力強さを印象付け、エアダムスカート一体大型バンパーからラウンドしたリアエンドまで連続する曲面で構成したスピンドルシルエットと徹底したフラッシュサーフェス処理で、風にクサビを打ち込むような空力特性を演出している。キャビンも、室内全体をフルトリム化し、大型7連メーターを配したクラスター全体をセーフティパッドで覆い、さらにステアリングやスイッチの素材を吟味してインターフェースの触感にまでこだわるなど、従来のカローラのイメージを打ち破る高品質感を訴求していた。
プラットフォームは、前後のサブフレームでサスペンション取り付け剛性(局部剛性)を上げ、ボディ全体剛性は骨格の結合や溶接位置までFEM(有限要素法)を活用することで高剛性を達成した。最大のメリットは、ボディを単に硬くするのでなく、入力のいなしも考慮した上で高い捻り・曲げ剛性を実現したことだ。サブフレームの追加などで車重増は避けられなかったが、高張力鋼板の使用を25%増やすなど軽量化を図り、新型FX-GTは重量を先代FX-GTの90kg増に収めていた。
前後ストラット式サスペンションは形式こそ先代と同じだが、フロントはL型ロアアームの取り付け位置を40mm前方にして横剛性を高め、アライメントもハイキャスター・ショートトレイルの採用で高い直進性を実現。さらにGTにはパフォーマンスロッドを標準装備して操舵応答性を向上させている。リアはパラレルリンクとテンションロッドを組み合わせたデュアルリンク式だが、パラレルリンクの材質を鋼板プレスから中空パイプに替えて捻り剛性を向上させると同時に、リンク長さを150mm延長してトレッド/キャンバー変化を抑えていた。
エンジンはレビンに用意されたスーパーチャージャー仕様の4A-GZE型/145psは設定されず、FXではGT用の4A-GE型がトップに位置する。レビンのFF化で縦置き4A-GE型が消滅したため、従来の4A-GELの呼称から横置きを意味するLが外され、単に4A-GE型となった。基本的に先代のキャリーオーバーだが、プレミアムガソリン仕様になり、バルブタイミングの変更やエキゾーストマニホールド径拡大などの改良で、ネットで120ps(グロスに換算すると約138ps)にチューンされ、高性能NAエンジンならではの吹け上がりの良さにさらに磨きがかけられた。
ただ、ボディとサスペンションの進化が大きい分、モアパワーの声が多く出たのも事実。その声に応えるように4A-G型は1989年のマイナーチェンジで圧縮比を10.3に上げ、ノックコントロールシステムの採用やコンピュータ制御の見直しなどで一気に20ps/0.5kgmアップの140ps/15.0kgmまでチューンされ、ホットハッチの名にふさわしい走りを手に入れた。
トヨタ カローラ 3ドア1600FX-GT 主要諸元
●全長×全幅×全高:3995×1655×1360mm
●ホイールベース:2430mm
●重量:1020kg
●エンジン型式・種類:4A-GE型・直4 DOHC
●排気量:1587cc
●最高出力:120ps/6600rpm(ネット)
●最大トルク:14.5kgm/5200rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:185/60R14
●価格:149万1000円
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