昭和は遠くなりにけり・・・か。以前に連載した「昭和の名車」では、紹介しきれなかったクルマはまだ数多くある。そこで、1960年代以降の隠れた名車を順次紹介していこう。今回は「トヨタ スターレット(EP71型)」だ。
トヨタ スターレット(3代目/EP71型):昭和59年(1984年)10月発売
EP71型スターレットと聞くと、韋駄天ターボで知られるスターレットターボを思い浮かべる人が多いだろう。その原点となるモデルが、1984年に登場した「かっとび」スターレットだ。それまでのKP61型は、シャシとパワーのバランスに優れ、FRならではの素直なハンドリングでモータースポーツ入門車としても高い人気を保っていたが、すでに小型2BOXの潮流はFF化に向かっており、トヨタがこの市場でリーダーシップを取るためにはFFへの転換が急務となっていた。そうした中「新時代をリードするハイコンパクト&スポーティ」を基本テーマに、エンジン、シャシ、ボディのすべてを白紙から開発したのが、スターレットとしては3代目になるEP71型だった。
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とくに力を入れたのがエンジンで、KP61の4K-U型をはるかに凌駕するレーザー2E-12バルブが新開発されている。特徴は気筒あたり吸気2/排気1という3バルブ方式のクロスフローSOHC機構を採用したことだ。高温・高圧で流速の速い排気ガスに対して、それに合った吸気能力を得るために、2個の吸気バルブを設置。しかもそれらをバルブ径の異なる主・副の吸気バルブとして使い分け、バルブタイミングも異なるデュアルインテーク方式とすることで吸気効率を高め、高出力と低燃費を両立している。さらに高回転型カムシャフトの採用で低速から7000rpmまで一気に吹け上がるスーパーレスポンスも実現した。
燃料供給は可変ベンチュリのV型キャブレター仕様もあるが、Siにはボッシュのパテントを基にデンソーが開発した最新のEFI-D(Dは圧力:ドルック=Druck)が搭載されている。これは、マニホールド内の圧力を測定してシリンダー内に充填される空気量を測定し、これに見合った燃料を噴射するというものだ。従来のエアフローメーターが不要になり、吸気抵抗の低減と正確なメータリングによる低燃費を実現。クラストップレベルの最高出力93psと10モード燃費17.0km/Lの両立を達成した。
FF化に伴いサスペンションもフロント:L型ロアアームのストラット/リア:トレーリング・ツイストビームに一新された。さらにEFI-D装着車(Siリミテッド/Si/Ri)は前後に低圧ガス封入式ダンパーとスタビライザーを採用。トレッドが従来型より前:95mm/後:70mmも拡大したこともあって優れた乗り心地と安定した操縦性を手に入れた。ブレーキはフロントにベンチレーテッドディスクが標準装備される。
スタイルも大きく変わった。エクステリアは先代の直線的な形から、滑らかな曲面で構成された卵形の「オーバル・フラッシュ・フォルム」となり、ボディ面と一体化した異型ヘッドランプ、バックドアに面一化したリアコンビランプで空力特性の向上も果たしている。さらにEFI-D装着車にはフロント&ルーフスポイラーを標準装備。サイドマッドガード、60シリーズタイヤ&アルミホイールでスポーティさを強調している。
キャビンも先代より室内長で30mm、室内幅で40mm拡大。プロペラシャフトがないため60mmの低床化も実現したほか、フュエルタンクをリアシート下に設置できたことでラゲッジフロアを70mm低くしてスペースを拡大するなど、FF化の効果を存分に発揮していた。
かっとびスターレットは7.74kg/ps(Ri)~7.96kg/ps(Siリミテッド)のパワーウエイトレシオを武器に軽快な走りで注目された。とくにRiは96万7000円の低価格が受け、1.3L以下クラスでモータースポーツに参戦する人たちにとって、トヨタの新しいモータースポーツ入門車となっていく。
トヨタ スターレット 3ドアSiリミテッド 主要諸元
●全長×全幅×全高:3700×1590×1380mm
●ホイールベース:2300mm
●重量:740kg
●エンジン型式・種類:2E-ELU型・直4 SOHC
●排気量:1295cc
●最高出力:93ps/6200rpm(ネット)
●最大トルク:11.3kgm/5000rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:185/60R14
●価格:117万円
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トヨタのエントリー車ながら、一切手を抜いていないと感じられ、最終的にはターボモデル、キャンバストップ、ディーゼルなどラインナップも豊富でした。