■カスタムカーの祭典に、英国ブランドが進出した訳とは
東京オートサロン2020の3日間の累計来場者数は33万6060人(前年比101.6%)を記録し、過去最多の動員を記録しました。当イベントは1983年にカスタムカー文化の確立を目指して、「東京エキサイティングカーショー」としてスタートし、1987年に「東京オートサロン」と改称しています。
出展されていた車両は、チューニングカーやドレスアップが施された車両ばかりで、当時は違法改造車の集まりといった雰囲気でした。しかし、1990年代後半から国産自動車メーカーがコンセプトカーやカスタムカーを出展するようになります。そして2010年代になると欧州メーカーの出展が目立つようになりました。
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東京オートサロン2020には、英国の3メーカーが出展しました。ロータスとアストンマーティン、そしてマクラーレンの3社です。ロータスは以前から出展していましたが、アストンマーティンは2度目、マクラーレンは今回が初出展です。
ロータスはライトウェイトのピュアスポーツカーメーカーとして有名です。アストンマーティンは創業100年以上の伝統を持つ、英国を代表するプレミアムブランドです。また、マクラーレンはF1コンストラクターとして名を馳せた、プレミアムスポーツカーメーカーです。
カスタムカー業界とは無縁とも思えるこれらの英国メーカーが、東京モーターショー2019には出展せず、どうして東京オートサロン2020に出展したのでしょうか。各メーカーの関係者に、東京オートサロン会場でその理由を尋ねてきました。
※ ※ ※
英国3メーカーの関係者から聞いた話を総合すると、東京モーターショーではなく、東京オートサロンに出展する理由は次のように要約されます。
・本当のクルマ好きが集まるイベントである
・東京モーターショーでは、エコカーやモビリティとしてのクルマがフューチャーされる傾向にある
・実質的なカスタマーが数多く来場している
・会期が短い
■勝機は東京モーターショーではなく、東京オートサロンにあり
英国3メーカーが、東京モーターショーではなく、東京オートサロンに出展した理由について解説しましょう。
●本当のクルマ好きが集まるイベントである
東京オートサロンは、クルマをチューニングしたりカスタムしたりすることに関心のある、本当にクルマが好きな人たちが来場するイベントです。また、ロータス、アストンマーティン、マクラーレンといったメーカーを購入する人たちも、クルマが好きなこだわりの強い人たちです。
クルマ好きの人たちにとって、ロータス、アストンマーティン、マクラーレンといったメーカーはいわば憧れの対象であり、各メーカーのモータースポーツでの活躍もよく知っている人たちばかりです。
つまり、自社ブランドに対して関心を持ってくれ、購入も検討してくれる人たちが大勢集まるイベントに出展した方が、ブランドの訴求効果が高いというわけです。
また、現在は3メーカーのことを知らないクルマ好きの若者たちへ訴求するという効果も期待できます。
●東京モーターショーでは、エコカーやモビリティとしてのクルマがフューチャーされる傾向にある
ロータス、アストンマーティン、マクラーレンといったメーカーは、それぞれにブランドの思想を明確に持っていますが、「走らせる歓び」をもたらしてくれるクルマであるという点では一致しています。
東京モーターショーでは、自動運転や環境性能にフューチャーしたクルマが数多く出展されています。
一方の英国の3ブランドのクルマは、自らが運転することで得られるエクスペリエンスや、所有するだけでオーナーに歓びをもたらしてくれます。
エンジンをチューンナップしたデモカーが数多く出展される東京オートサロンでは、自動運転やエコといったことより、エンジンの最高出力や最高速度、サーキットラップの速さなどが注目されるポイントです。また、官能的なエキゾーストサウンドも好まれる傾向にあります。
こうした点は、ロータス、アストンマーティン、マクラーレンがもっとも得意とする分野です。
東京モーターショーよりも東京オートサロンの方が、自社ブランドの思想との親和性があるということです。
●実質的なカスタマーが数多く来場している
2000年以降、東京オートサロンに出展されるカスタムカーのデモカーに、BMWやVWなどの輸入車が増え、フェラーリやランボルギーニといったスーパーカーをカスタムしたデモカーの出展も増えました。
そうしたスーパーカーのデモカーは、チューニング&カスタムショップが自社で購入した車両ではなく、オーナー車両であることがほとんどです。
そうした自分の車両を開発車両としてショップに協力するスーパーカーオーナーたちは、1台だけはなく複数台の車両を所有していることがほとんどです。
自分のクルマが展示されるため、そうしたオーナーたちがオートサロン会場に訪れることはもちろん、その友人であるスーパーカーオーナーも多数訪れます。つまり、既存のカスタマーだけでなく、新規カスタマーへアプローチできる機会が多いのです。
実際、取材中のマクラーレンの展示ブースには、マクラーレンのオーナーが幾人も訪れ、最新モデルに大変興味を示していました。また、友人と同伴のオーナーも多く、東京オートサロンの展示ブースは、出張ショールームのような状態でした。
東京オートサロンに出展2年目となるアストンマーティンは、昨年の経験をもとに、出展ブースにラウンジを開設。来場したアストンマーティンのカスタマーたちの休憩スペースとしても使ってほしいということでした。
カスタムカーをたっぷりと見学したあと、こうしたラウンジで休憩しながら、最新のアストンマーティンをゆっくりと見ることができるのは、カスタマーにとってはショールームまで足を運ぶ手間が省けるというものなのです。
●会期が短い
東京オートサロンの会期は毎年3日間です。一方の東京モーターショー2019の会期は12日間でした。
英国3ブランドは、スタッフの数も限られており、12日間の会期をまかなうには人手が足りないという問題もあります。かかる経費も何倍にもなります。
こうした面からも規模の小さいインポーターが東京モーターショーを敬遠するということは、十分にありうることです。
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2009年に当時のフィアット・グループ・オートモービルズ・ジャパン(現FCA)は、東京オートサロンにアバルトの車両を展示したことがあります。その後、2013年まで東京オートサロンにアバルトが正式にブースを構え、最新モデルを出展した経緯があります。
2009年のアバルトの日本での販売台数は518台、その後毎年販売台数を伸ばし続け、2013年には1388台に達します。
これは、東京オートサロンで、それまで認知度の低かったアバルト・ブランドを日本のクルマ好きにアピールできたことも大きな要因のひとつと考えられます。
アバルトは東京オートサロンに出展しんくなった後でも、順調に販売台数を伸ばし続け、2019年には2955台という販売台数を記録しました。
欧州ブランドが東京オートサロンに出展する効果は、アバルトの前例を見ても明らかといっていいでしょう。
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