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2019年、もっとも気になった3台はコレだ! Vol.7 渡辺敏史編

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2019年、もっとも気になった3台はコレだ! Vol.7 渡辺敏史編

2019年、自動車業界について色々と考えさせられたのは、我々は一体幾つまで、これで通りクルマに乗って自由な移動を謳歌出来るのだろうか? ということだった。というのも、とある痛ましい事故をきっかけに巻き起こった高齢者の免許返納問題の議論が、あまりに大きく偏っていたからだ。

テレビのコメンテーターもウェブの方々も諸手を挙げて、「年寄りは自分で運転しなくてもいいから免許は○歳で返納でもいいんじゃない?」的な持論を繰り広げ、事故減少のためにそうしたくて仕方のない官憲側の片棒をまんまと担ぐ事態になっている。

2019年、もっとも気になった3台はコレだ! Vol.6 島下泰久編

個人の意志に基づいての移動は、民主主義において尊重されるべき基本的な人権だ。島国の日本ではその実感は薄いが、戦禍からの避難を幾度も余儀なくされた欧州では交通権や移動権がとにかく尊重されている。それを人民の側が自ら抑制する方向で話をすること自体、相当に危険なことではないだろうか。

ましてやその対象は、酔っぱらいでも薬物中毒者でもない。高齢化が爆速する今、もっとも真剣に移動権の保障を考えなければならない対象者である。起こした事故の大きさや悲惨さにまつわる怒りが、そのまま矛先として彼らに向いてしまってもいいのだろうか……。

と、実にもやもやした気分でいたところに登場したのが新しいダイハツ「タント」だ。これまでゴリゴリの育児アイテム的な押し出しで売ってきたそこから一歩脱却し、上から下まで人々の移動を“まるっと面倒みますよ”という、まさにゆりかごから墓場までのユニバーサル・カーとしてアピールしている。

Sho Tamura特徴である助手席側のBピラーレス構造による乗降動線の自在性は、子育て夫婦とおなじくらい、高齢者やハンディキャッパーにも優しいということを広く知らしめようということだ。

ダイハツ曰く、「新時代のライフパートナー」と、銘打つ新型タントは、外側に座面が回転し、乗降を助ける“ターンシート”に組み合わせるアシストグリップや、車椅子を収めるために使う後部荷室のミニクレーンなどの装着を前提に、フレームの設計時点で、それらの装着に必要な強度を織り込んでもあるという。要は補助具のためにクルマの骨格を合わせるという、その発想はダイハツのエンジニアの使命感と謙虚さをよくあらわしている。

Sho Tamuraその骨格話でいえば、タントはダイハツが今後長年にわたり軽自動車やコンパクトカーで使うはずの、新規設計アーキテクチャーを採用した最初のクルマだ。なにせこの特異なボディ形状を支えるがゆえ、足まわりは締め上げざるを得ず、走る云々に関してはどうにもがさつだったタントが、しっとりしなやかに走るようになったことも注目に値するだろう。

使用速度域や運動性能を理由に、タントのようなモデルが高齢化問題を抱える先進国に提案されることはなかった。が、今はスピード天国のドイツとて全開でぶっ飛ばすことがよしとされる時代ではない。さすがにサイズもそのままとはいかないだろうが、日本車の独自性としてもこういうコンセプトはもっと積極的に発信してもいいのではないだろうか。

Sho Tamuraベスト・オブ・輸入車:ジャガー I-PACEメルセデス「EQC」やアウディ「e-tron」、そしてジャガー「I-PACE」と、2019年は欧州方面からさまざまな電気自動車(EV)がリリースされた。うち、e-tron以外の2モデルはすでに日本市場にも投入されている。

それらに乗って実感させられたのは、たとえパワートレーンが電気になったところで、各々のメーカーのキャラクターは薄れない、という点だ。

内燃機関と違って音・振動や出力特性が均一的なモーターとて、スロットル操作量とトルクの立ち上げ具合をいかにチューニングするか? で、上品にも下劣にも振ることができる。

それ以上に、シャシーセットアップ側では、「いかに自分たちのライドフィールを引き出すかが商品力を大きく左右する」という意識が、通常のモデルよりもむしろ強くあらわれているようにも思えるほどだ。

結果的に、EQCはいかにもメルセデスらしい包容力の大きな乗り心地を、e-tronはアウディらしい操作に対する応答が精緻な乗り味を実現していた。それらのなかで、もっとも驚かされたのがI-PACEだった。

今までとはガラリと異なるアーキテクチャーであっても、見事にジャガーらしくヒタヒタと走る、そんな有機的なフットワークを実現していた。いかにもEVらしいプロポーションと、現行ジャガーのキューを融合させたデザインも、個性と革新を巧く表現している。

EVが環境性能のベストソリューションとして皆が普通に買って使えるようになるのは遠い先の話であると思うが、そうなったとしても旧き佳き時代のクルマ好きとて、失望ばかりではないことを教えてくれるモデルだった。

あらためて評価したい既存モデル:アルファロメオ 4C燃費や騒音などさまざまな規制が強化されるなか、向こう数年は生産終了になるスポーツモデルも増えそうな気配。2019年でいえば、長年親しまれてきたEJ20型水平対向4気筒エンジンを搭載するスバル「WRX STI」が受注を終了した。

そして今、欧州方面で囁かれているのがアルファロメオ「4C」の生産終了だ。アルファロメオの公式ウェブサイトを確認すると、確かにイタリアでもアメリカでも4Cはラインナップから姿を消している。一方、日本の公式ウェブサイトでは今もその姿は健在。特別なコスメティックの限定車なども販売されている。

先日、久しぶりに下ろしたての4Cに乗る機会があった。スパイダーであることも幸いしてか、登場当初より乗り心地は若干改善したように思えた。が、このクルマのコアである一切の曖昧さを削り落としたカーボンモノコックのソリッドな応答感は相変わらずで、シャープなハンドリングも健在だ。

搭載するエンジンは1750ccの直列4気筒ターボ。最高出力240psと、その数字自体にインパクトはないが、1.1tの車重との組み合わせはヘタなスーパーカーよりも過激で、その強烈な刺激は時に恐怖すら感じるほど。

4Cのカーボンモノコックを開発したダラーラは最近、同種のストリートモデルを発表したが、4Cはそういうイタリアのスポーツカー血統的な薀蓄にも事欠かない。ここまで濃ゆい本物体験が出来るアルファロメオが、今後も継続的に手に入るのか? と、いえば、たしかに疑問符がつく。もし、「手に入るのは今のうち」と、言われたならば、相当悩ましい選択肢であることは間違いない。

文・渡辺敏史 写真・安井宏充(Weekend.)/田村翔

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みんなのコメント

1件
  • 国産車から選んでほしいです。
    外車なんて買えないし、乗らないので。
    あと、記事はもう少し読み易くお願い。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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