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2桁ナンバー物語 Vol.1 春日部33のブガッティ EB110(後編)

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2桁ナンバー物語 Vol.1 春日部33のブガッティ EB110(後編)

植竹安維さんは、1996年(平成8年)に購入したブガッティ「EB110」を、当初は今よりも簡素な屋根付きガレージに保管していたという。

「納車時、セールスマンが『ここに置かれるんですか!?』と、びっくりしていました。セキュリティのしっかりしたガレージに保管すると思っていたようです」

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オーナーの植竹安維さんとブガッティ「EB110」。当時のガレージも今とおなじく、多くの人の目に触れる場所にあったが、ブガッティと認識されたのは皆無だったという。

「当時はブガッティが今以上にマイナーで、近所の人は誰もブガッティと気付きませんでした。街中でもランボルギーニとよく間違えられましたね。もっとも、今でもランボルギーニと間違えられますが(笑)」

植竹さんが所有するEB110はフルノーマル。純正アルミホイールはBBS社製。とはいえ、街中で声をかけられる機会は滅多にないという。購入当初こそ、毎日走っていた東京外環自動車道のパーキング・エリアで、ときどき話しかけられたそうだ。

「購入当初は、妻を職場に送ったあと、東京外環自動車道をあてもなく毎日走っていました。嬉しくてしょうがなかったんです」

取材時の総走行距離は4万7524km。当時は毎月、数百km走行していたという。EB110オーナーのほとんどは、購入後もあまり乗らないなか、植竹さんのEB110は、相当距離を伸ばしている珍しい個体だ。現在の走行距離は約4万7500kmである。

「聞くところによると、日本国内にあるワンオーナーのEB110は、私のクルマだけのようです」

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フルレザーのシートは電動調整式。調整用スウィッチはシートサイドにある。レザーはポルトローナ・フラウ社製。スバル360を所有し続ける意外な理由植竹さんの家には、EB110以外にもワンオーナーのクルマがある。1台は前編で紹介したメルセデス・ベンツ「600SL」、もう1台はホンダ2代目「インテグラ」。そして3台目が19年ぶりに、2014年に購入した新車「S600ロング」(現行)だ。

「どこに行っても通用するようなセダンが1台欲しくて、S600ロングにしました。BMW『7シリーズ』も考えましたが、担当セールスに、『いつかは(新車を)購入するよ!』と話していたのでメルセデス・ベンツにしました。“600”にした理由は、V型12気筒エンジンが欲しかったからです。EB110も600SLも“V12”ですしね」

実はもう1台、植竹さんの家にはクルマがある。スバル「360」だ。こちらはワンオーナーではない。

「360は、私が普段の買い物で使うためです」と、奥様の久實子さん。てっきり、奥様は大のクルマ好きかと思いきや、「クルマやモータースポーツは好きですが、それほど詳しくありません。360を所有しているのは、私が360しか運転できないからです」

【前編はこちら!】

奥様の久實子さんが、普段の買い物に使うスバル「360」。室内から手動で開閉するベンチレーションシステム。そう話すと久實子さんは運転免許証を見せてくれた。それには“普通車は軽車(360)に限る”と、記されている。かつて存在した軽自動車運転免許証だ!

「限定解除試験は受けませんでした。当時、360で不都合はなかったので。今の360は約24年前に購入した3台目です。ほかの軽自動車(360cc)に乗った経験がないので、ずっと360を乗り継いでいます。主に普段の買い物で使っています」

「普通車は軽車(360)に限る」と記された軽自動車運転免許証。360は久實子さんの“普段の足”として活躍しているのだ。すごい。久實子さんは目前でスムーズに360を動かす。

「ほら、エンブレムを見てください。一部欠けているでしょう? 欠けていないものを探しているのですが、ディーラーや専門店に聞いても在庫がなく、インターネットで調べても(商品は)出てこないんです」と、悩みを話す。

EB110を乗りこなしている植竹さんもすごいが、360を普段の足に使っている久實子さんもすごい。こんど、あらためて取材しようと思う。

「360は普段の買い物に乗りますよ」と、話す久實子さん。一部が欠けたフロントのエンブレム。クラッチ交換に380万円!話をEB110戻そう。早速、目前でエンジンをかけてもらう。3.5リッター V型12気筒クアッドターボ・エンジンは一発で目覚めた。

「EB110は、アイドリング時から素晴らしいエンジン・サウンドを聞けるのが気にいっています。フェラーリよりイイかもしれません。ただ、ステアリングが重いので運転は大変です」

リアに搭載する3.5リッター V型12気筒クアッドターボ・エンジン。マフラーは、イタリアのANSA社製。ステアリング・ホイールはイタリア・ナルディ社製。エクステリアはよく見ると、すべてのパーツがオリジナルのままである。電動開閉式のリアスポイラーもスムーズに開閉する。

インテリアもエクステリアとおなじくオリジナルのまま。1DINのオーディオ・デッキは、新車装着時のまま(ナカミチ製)だし、ポルトローナ・フラウのレザーを使った電動調整式シートは問題なく動く。ウッドパネルのヒビもないし、取扱説明書は整備記録簿も完備する。ただし、エアコンの調子だけはイマイチなのだそうだ。

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内外装はフルノーマル。リアスポイラーは電動開閉式。「故障はほとんどありませんが、エアコンだけは何回か壊れました。今も調子はよくありません。そのため、車内にはつねにウチワを入れています」

エアコン以外の故障について訊くと、「運転席ドアのロック機構が故障し、修理に約3カ月要しました。あと、事故にも遭いました」と、植竹さん。

事故は、植竹さん自身が運転していたのではなく、ディーラーのセールスマンが運転しているときだった。点検のため、クルマを引き取りに来た直後、高速道路で追突されたという。

「たしかEB110の過失割合はゼロだったと思います。したがって、修理に1000万円ほど要しましたが自己負担はゼロです。ただし事故を機に、ディーラー入庫時は、(クルマを)積車で運ぶことになりました」

インテリアのウッドはひび割れなどない。オーディオは純正のナカミチ社製。助手席側ダッシュボードには、小物入れ用のグローブボックスもある。速度計は400km/hまで目盛りが刻まれている。ペダルはブガッティのロゴ入り。エアコンだけは、長年、調子がすぐれないという。点検や整備はディーラー(ニコル・カーズ)にすべて任せているそうで、とくに気をつけていることはないという。整備も1年ごとのみ。それでも、前述のエアコンとドアロック以外、大きな故障はないそうだ。

「維持費ですか? ついこの前も車検整備に出しましたが、諸費用や税金込みで100万円以下でした。100万円以上支払うケースはまずありません。ただ、クラッチ交換は費用が嵩みます。1回目は200万円、今年7月の2回目の費用は380万円でした」

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EB110はマニュアル・トランスミッションのみの設定。筆者が所有するフェラーリ「360モデナ」は、先日の車検整備費用に(諸費用・税金込み)100万円以上要したゆえ、植竹さんの話を聞いておもわず「え、100万円以下で済むのですか!?」と、驚いた。

「クルマのコンディションより、走る道の方が気を遣います。最低地上高が約80mmしかないので、ちょっとした傾斜でもフロント・バンパー下部などを擦ってしまいます。とくに都心部のガソリン・スタンドや駐車場は気を遣いますね。コインパーキングはまず停められません」

「わずかな段差や傾斜にも気を遣います」と、植竹さんは述べる。手放すつもりはナシ植竹さんは今でも週2回ほどEB110に乗るという。

「今、携わっている仕事の関係で、EB110に乗って出かけます」

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純正のオウナーズ・マニュアルも完備。“ブガッティオートモビルは固く反対します”の、マニュアル冒頭には「車を派手に誇示するような使い方をすること。高速道路の制限速度はいかなる時も守られねばならないことを強調いたします。」と、記されている。ボディサイズや最小回転半径。フロントのアプローチ角なども記されている。マニュアルに記されたスペックは、最高速度342km/h、静止状態から100km/hまでに要する時間は3.46秒!23年もEB110に乗り続けた大きな理由は、EB110にかわるモデルがしばらく登場しなかったためという。結果、長期間、所有することになった。

「周囲から『珍しいクルマだからずっと乗っておいたほうがいい』と、よく言われます。おなじブガッティでも『シロン』に買い換えるつもりはないです。あまりにも高価すぎますので……」

植竹さんもずっと乗るつもりでいて、「今後も手放すつもりは一切ありません。いずれは子どもに受け継いでもらい、ずっと所有し続けて欲しいですね」と、述べる。

「EB110は一生乗り続けたいですね」と、話す植竹さん。「もしかすると、クルマの維持より自身の体力維持のほうが大変かもしれません。EB110を運転するには、それなりの体力が必要ですから、毎日、エアロバイクを1時間漕いでいますし、ウォーキングもしています」

植竹さんは現在、83歳! それでいて、EB110を乗りこなしているというからすごい。ちなみに、高齢運転者標識を装着している理由は?

「高齢運転者標識が必要になる年齢までは乗ろう! と、以前より決めていました。装着義務はないですが、愛車の個性を高めるべく、また、70歳以上のドライバーであることを一応周囲に知らせたくて装着しています」

植竹さんは「世界で唯一の、高齢運転者標識付きのEB110です(笑)」と、ほほえむ。

日本では、まずないと言われるワンオーナーのEB110。植竹さんも、その希少性を理解しているゆえ、今後も所有し続ける予定という。グローバルでみても、超希少なワンオーナーのEB110。植竹さんが思いを貫き、EB110を末長く愛し続けられるよう、陰ながら応援したい。

文・稲垣邦康(GQ) 写真・安井宏充(Weekend.)

【前編はこちら!】

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