いつの時代も親しみと信頼を感じてきたクルマ
トヨタ自動車のカローラが新型となって国内販売を開始した。その試乗会で開発担当エンジニアやテストドライバーから興味深い話をいろいろ伺ってきたのでリポートしておきたい。
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「カローラ」は私「中谷家」にとっても縁があるモデルだ。中谷家にとって最初のクルマは観音開きドアが特徴だった「クラウン」だ。「いつかはクラウン」ではなく「最初っからクラウン」だったわけだ。
その次は「トヨペット・コロナ」、次に初代マツダ「ファミリア」を挟み、次にやってきたのは2代目カローラだった。1970年のことだ。家内が最初に買ったクルマも3代目カローラ。兄が初めて購入したのは3代目カローラ・レビン。そしてアメリカに留学した自分の娘に買い与えたのも北米・カローラだった。そんなわけでカローラにはいつの時代も親しみと信頼を感じてきていて、世界のどこでも信頼できるクルマとしてボクのなかでは確立されている信頼のブランドなのだ。
自動車雑誌の編集部の仕事に関わるようになったころの1983年に登場した5代目カローラは、イタルデザインのジウジアーロが手がけたと言われスタイリッシュでカッコもよく、6代目カローラはバブル期と重なり「ミニ・セルシオ」と呼ばれるほど豪華で素晴らしい仕上がりだった。ちょうどレースの遠征で日本各地を転戦していたころで、移動用に借りるレンタカーはカローラをつねに指名。扱いやすい取り回し性と実用性の高い室内装備、室内やトランクの広さなど文句なく走りも良かった。
1989年は日本カーオブザイヤーの選考委員を受任した年でもあり、次のカローラには満点を配点したいと考えていたほどカローラを支持していた。しかし、1989年のカーオブザイヤーには革命的な「セルシオ」が選出され、以後は存在感を確立したカローラは評価されて当然の立ち位置となり、なかなか満点を配点するに相応しいと思える輝きを放つモデルが登場しなくなって久しかった。
近年、日本国内では「カローラ・フィールダー」「カローラ・アクシオ」が10代目カローラとしての地位を守ってきていたが、じつは欧州、北米、中国、東南アジアに向けては11代目カローラが登場していて、このモデルのデザイン性が高く世界各地で極めて好評を博していた。娘に買い与えたのもこの北米・カローラ。2015年には世界でもっとも売れているクルマとしてカウントされていたはずだ。
だが本家の日本国内では販売されていなかった。オーリスをベースとした1780mmの3ナンバー車幅が不適格と判断されたのか、価格的なポジションが上がるのをためらったのか定かではないが、スタイリッシュなデザインは好評で国内からも導入を求める声が高まったのは間違いない。トヨタがお台場で運営しているメガウェブに長い期間北米カローラが展示され、人々の感心を集めていたのを知っている。
現行モデルの後席ユーティリティは仕向け地によって差別化
そして今回、12代目となった新型カローラは世界と足並みを揃え国内にも登場したのだ。まさに満を持しての国内再導入ということだろう。国内仕様もついに3ナンバー枠の車幅1745mmとされたが、欧米仕様の1780mmより狭めて国内での利便性に配慮している。
基本的には現行プリウスから採用されているTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチュア)を採用し、昨年登場して若い人に人気のカローラ・スポーツと共通のパワートレインおよび装備・メカニズムを継承。今回セダンとワゴンボディを架装し「ツーリング」を新設定している。
またホイールベースは2640mmで従来型より40mm拡大されてはいるが、欧米・中国(グローバル)仕様は2700mmのロングホイールベースが採用されていて、後席のユーティリティを高めている。
実際に後席に乗り込んでみると、足もとの広さは必要十分ではあるが、あと60mm広ければ相当快適になるだろう。また国内仕様はエアコンの吹き出し口が前席シート下にしかないが、欧米・中国仕様にはコンソール後端に吹き出し口が設けられるなど、後席ユーティリティ関しては国内モデルと差別化している。
車幅が小さくなるのは国内道路事情にマッチしやすいが、ホイールベース、エアコン吹き出しなど後席ユーティリティに関してはグローバルに揃えて欲しかったと正直思う。4ドアを持つ以上後席の使用頻度が高いユーザーも多く、国内モデルとして後席を軽視する傾向がいまだに残っているのは残念でならない。加えて言うならロードノイズの遮音についてもグローバルモデルより省略されていて、とくに後席にロードノイズが大きく侵入する。
テストドライバーがこだわり、ショックアブソーバーのチューニングを丁寧に行い低速域での突き上げ、ハーシュネスの押さえ込みに成功した。このショックアブソーバーをカローラ・スポーツにも採用して乗り心地を進化させたという。
今回のカローラがグローバル規格のままだったら、今年の日本カー・オブ・ザ・イヤーで間違いなく満点を配点できるのだが。今後ロングドライブなどを通じ新たな魅力を探っていくつもりだ。
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