■キューブが2019年12月で生産終了!
いまは軽自動車と併せて、コンパクトカーの人気が高いです。エンジンの排気量は1リッターから1.5リッターで、価格は機能を充実させた軽自動車と大差ありません。
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とくに人気を得ているのは、全高が1600mmを超える天井の高いタイプです。クルマの造りは2列シートのミニバンという感じで、車内は広々とし、後席を畳めば自転車を積める車種もあります。
そんな人気ジャンルの先駆け的存在が日産「キューブ」ですが、2019年12月末で生産終了となることが明らかになりました。なぜ、人気ジャンルのモデルが廃止されるのでしょうか。
キューブの初代モデルは、1998年に登場して注目されました。2002年に発売された2代目は、ヒット作になり、2008年に現行型の3代目が登場しています。
初代モデルの登場から約21年、キューブの生産終了について、日産の販売店は、次のように説明しています。
「キューブの生産終了は、2019年8月下旬に、日産から知らされました。12月になると生産を終えるとのことです。理由は聞いておりません。また次期型にフルモデルチェンジしたり、後継車種が新たに登場する話もありません」
つまりキューブは、単純に生産を終えるようです。現行型は前述の通り2008年に発売され、特別仕様車の設定や、アイドリングストップが加わった程度で、目立った改良は受けていません。
近年で、不満が多かったのが安全装備についてです。同社コンパクトカー「ノート」は、2013年に単眼カメラを使った歩行者検知も可能な緊急自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)を設定しましたが、キューブは現時点でも用意していません。
いまでは、緊急自動ブレーキが非装着のクルマは、カテゴリーを問わず売りにくくなっています。いつになったらキューブに対応するのかと思っていましたが、結局、装着されず生産を終えることになりました。
日産の販売店では、生産終了に伴う顧客の反応を次のように話します。
「キューブについては、緊急自動ブレーキの装着を待っていたお客様が相応におられます。生産終了の話をしたところ、『緊急自動ブレーキが付いてなくても買う』という人もおりました。これから生産終了のニュースが広がると、注文が入るかも知れません」
このコメントからは、現行キューブが発売から10年以上を経過しながら、いまでも根強い人気を得ていることがうかがわれます。
■直近の販売台数は、他社新型モデルと同等でも…
2019年1年から7月のキューブの登録台数は、1か月平均で400台でした。この販売実績はトヨタ「ポルテ」やホンダ「インサイト」と同程度で不人気車の部類に入りますが、発売から10年以上を経過して緊急自動ブレーキも装着されないことを考慮すれば、むしろ売れ行きは堅調です。
キューブは全長が3890mmに収まる5ナンバー車ですが、全高は1650mmと高めに設定されて室内空間に余裕を持たせました。
内装は和風をモチーフにデザインされ、インパネは緩やかな曲線を描いています。オプションではガラスルーフが用意され、SHOJI(障子)シェード&ロールブラインドも採用。SHOJIシェードを閉めると、車内は文字通り障子を通過するような柔らかい光で満たされます。
シートは前後ともにベンチタイプで、座面には十分な厚みを持たせました。座ると体が深めに沈み、リラックスできる印象です。
クルマは高速で移動するツールですから、内外装のデザインも速そうに見せることが多いです。分かりやすいのはフロントマスクで、最近の新車市場では怒り顔が増えました。目を吊り上げて、突っ走るイメージです。
ところがキューブは、外観から内装まで、速いクルマに見せようとする意図がまったく感じられません。むしろ「心地好いクルマだから、ゆっくりと走り、なるべく長く乗っていたい」と思わせる魅力を大切にしています。いまの怒り顔が多い日本車のなかで、キューブは貴重な存在といえるでしょう。
それだけに生産終了は残念です。緊急自動ブレーキの装着を含んだ少し規模の大きなマイナーチェンジを実施するだけでも、売れ行きは伸びたと思います。
キューブには、トヨタ「ルーミー/タンク」、「ポルテ/スペイド」、スズキ「ソリオ」などでは得られない独特の魅力が備わるからです。
それにしても、日産は大丈夫なのかと心配になります。以前に比べると売れ筋車種が大幅に減り、その矢先に、改良やフルモデルチェンジをおこなえば売れる見込みのあるキューブまで廃止したからです。
コンパクトSUVの「ジューク」は、欧州などの海外市場ではフルモデルチェンジされた新型が登場しますが、日本国内は従来型を継続販売するようです。
ちなみに日産は、2021年3月までに世界で20車種の新型車を発売すると公表しており、日本国内でも8車種から9車種は登場しそうです。
そのなかにキューブのようなコンセプトを備えたコンパクトカーが含まれていると、ユーザーのメリットも拡大するでしょう。
また2019年には、歴史のあるクルマが次々と生産を終えます。SUV市場の基礎を築いた三菱「パジェロ」、未来的な卵型のボディスタイルでミニバンの定番となったトヨタ「エスティマ」、トヨタ「マークII」で始まった上級セダンの伝統を受け継ぐ「マークX」という具合です。
新型車の開発と生産も、転換点に差し掛かっているのかも知れません。過去の人気車を廃止して、新しい日産を目指しているように思えます。
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