昭和は遠くなりにけり…だが、昭和生まれの国産スポーティカーは、日本だけでなく世界的にもブームとなっている。そんな昭和の名車たちを時系列で紹介していこう。今回は昭和56年発売のトヨタ ソアラ2800GTだ。
予想に反し若い世代から爆発的人気を得た元祖ハイソカー
トヨタ ソアラ2800GT:昭和56年(1981年)2月発売
昭和55年(1980年)の大阪モーターショーに、トヨタは1台のコンセプトカーを展示した。人目をひく派手なルックスのコンセプトカーが多い中、「EX-8」と名付けられたそのクルマは、比較的地味な2ドア ノッチバックのボディが与えられ、どちらかと言えば見過ごされがちな存在だった。
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しかし、その内容にまで目を向けて見た人は、当時のトヨタの技術力が見事なまでに現実的に集約されていることに驚きを覚えたはずである。2.8Lの直6DOHCエンジン、前:ストラット、後:セミトレーリングアームの4輪独立サスペンション、4輪ベンチレーテッドディスクブレーキなど、EX-8は新世代のGTカーのあるべき姿を、実に明解に具体化したコンセプトカーだったのだ。
そして翌1981年の2月。EX-8はほとんどそのスタイル、内容を変えることなく、ソアラという車名で発売された。ちなみにソアラというのは上級グライダーのこと。静かにそして凜々しく青空を駆ける姿を、新たなフラッグシップのイメージにオーバーラップさせたわけである。
また市販されたソアラには、2.8Lモデルの他に廉価版の2Lモデルも用意されたが、そのグレード名にはV I(ブイワン)、V II(ブイツー)、VR(ブイアール)など航空用語が用いられた。
2800GT系に搭載されたエンジンは、2.8L 水冷直6の5M-EUをベースにツインカム化を図った5M-GEU。最高出力は170ps/5600rpm、最大トルクは24.0kgm/4400rpmを発生した。気筒あたりのバルブ数は2本だったが、生産車では初の油圧ラッシュアジャスターを採用。高性能と同時に、高級車用エンジンに求められる高い静粛性を実現していた。
動力性能の目安となる性能データは、2800GTエクストラの5速MT仕様で、最高速度は198.07km/h、0→400m加速は16.0秒という記録がモーターマガジン誌の実測テストでマークされている。当時はストックの状態で200km/hを超える国産車はまだなく(半年後に登場するセリカXX2800GTが国産初の実測200km/hオーバーカーとなる)、0→400m加速にしても16秒台後半がスポーティカーのアベレージだったことを考えれば、いかにソアラが速かったか想像がつくだろう。
ソリッド&リンバーサスと呼ばれる4輪独立サスペンションは、2800GT系と2000VRにハードセッティングを採用。しかしソアラの性格そのものが、ワインディングを豪快に攻め込むより、長時間にわたる高速クルージングを快適にこなせることを主眼としているため、基本的にはソフトで乗り心地を重視したものとなっていた。
装備類にしても、ソアラ2800GTには目を見張るものがあった。メーターには最新式のデジタルメーターが採用され、空調もタッチパネルで操作するマイコン制御式オートエアコンを標準装備。他にもクルーズコンピュータや番組予約付AM/FMラジオ、また最上級グレードの2800GTエクストラでは、ブロンズガラス、ダブルラッセル織り高級シート地、エア式ランバーサポートまで備えていた。
機能的にも装備的にも贅を尽くしただけあって、ソアラの価格は2800GTエクストラのATモデルでは299万8000円という超高価な設定となった。いくらなんでも高すぎるのでは…という意見も聞かれたが、実際に発売されると、諸経費を入れれば軽く300万円を超えるクルマが飛ぶように売れたのだから驚きである。ソアラは、自動車に対する価値観を大きく変えたクルマと言えるだろう。
1981年6月には、2Lシリーズのラインアップ強化のため、VRにターボモデルを追加。エンジンは2L SOHCに1基のターボチャージャーを組み合わせたM-TEU型を搭載した。この頃のトヨタは日産や三菱とは対照的に、非常に慎重な姿勢でターボ採用にはなかなか踏み切らなかったのだが、ソアラではトランスミッションをATのみに絞ることで、低速トルクの不足感を回避することにしたわけである。
トヨタ ソアラ 2800GT エクストラ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4655×1695×1360mm
●ホイールベース:2660mm
●重量:1300kg
●エンジン型式・種類:5M-GEU型・直6 DOHC
●排気量:2759cc
●最高出力:170ps/5600rpm
●最大トルク:24.0kgm/4400rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:195/70R14
●価格:285万5000円
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